28.投票の後
あれからはホントに晒し者週間だった。
登下校中にサッカー部の先輩方とすれ違えば
「俺ら、絶対なまえちゃんに入れっから!」
とバンバン肩を叩かれ、教室移動する時も知らない人たちにこそこそと何かを言われ…あたし何も悪いことしてないのに。
それも今日の投票で終わったはずだ。
なんか、やっと肩の荷がおりた感じがする。
…文化祭の準備はこれからが本番なはずなんだけど。
「なまえちゃん、ドキドキしちゃうね!」
『何が?』
「あれ?なまえちゃん、知らないの?さっきの投票って、今開票しててね、結果が出たら全校放送で流れるんだよ!」
最近、明日香の爆弾発言率が高くなってきた気がする。
そんなこと、もちろん知らなかったあたしはガタンと机に崩れた。
何故に全校放送!?
1年だけに結果伝えたら、それで十分でしょ?!
ピンポンパンポーン
放送開始の合図が流れた途端に水を打ったように教室中が静まり返った。
何、このムダな緊張感。
「今年度、帝丹中学校文化祭一年の部、学年演劇においての主役投票の結果が出ましたのでお知らせします」
覚悟はしていたとはいえ(あたしは知らなかったからしてないけど。いや、知ってたとしてもしてないだろうけど)緊張はしてるのか、少し教室がざわめき出した。
「俺らのクラス、だよな?」
「1-B!1-B!」
お前ら、何必死に祈ってんだ。
外れたら外れたで良いじゃないか。
面倒なことだって減るんだし。
「まだ、開票の途中ですが、過半数を超えた為」
もったいぶったアナウンスに、ごくりと誰かが息を飲んだ音が聞こえた。
「1年B組、工藤新一くん、みょうじなまえさんペアに決まりました」
「「「やったー!!!」」」
途端に教室中はお祭り騒ぎで、跳び跳ねて喜んでる奴らまでいる。
だから、一体何がそんなに嬉しいんだ?
別にあたしと工藤くんが主役に決まったからってキミたちが喜ぶようなことじゃないと思うんだけど。
「なまえちゃんやったね!ヒロイン決定だよ!」
『ありがとう?』
明日香まであたしの両手をとってブンブンと振り回してる。
そんなに興奮するようなことなの?
「やっぱりなまえたちに決まったね!」
『ホントは蘭がヒロインやりたかったんじゃないの?』
「どうして?」
いや、貴女。そんな不思議そうにきょとんとされても困るんですけど。
あたし、工藤くんとペアなんだよ?
少しは何か思うところはないのかい?
「なまえ!台本はまっかせなさい!あんたが代表選に出るって決まってから、色々と考えてあるんだから!」
園子、キミ初めからあたしが通るのが分かってたみたいな言い方してるけど、その自信はどっから来るのよ?
その後もあたしの元には(もちろん工藤くんの元にも)いろんな人が押し寄せてきて、お祭り騒ぎはしばらく終わらなかった。
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