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03.泡沫


結局、闇の男爵にどっぷりハマってしまったあたしは、毎日続きを買っては例の喫茶店で日が暮れるまで読むという生活を続けていた。

マスターは要らないところで、有言実行の精神を貫くらしく、あれから一度もお金を受け取ってくれない。

こっそりお金を置いて行こうとしても、何故かバレてしまうのだ。

そして先生も、あたしがいるとよく喫茶店に顔を出すので、仕事はどうした!?と聞きたくなる。
ついでにメールや電話は毎日来る。どこのカレカノだ。


そんなわけで、学校では楽しくイケメン'sを観察、放課後はダンディパパとデート、夜は面白い小説を読破!なんていう楽しい毎日を送っていたから、あたしはすっかり忘れていた。

あたしがこの世界の住民じゃないということを。


――
―――…
――――…


「なまえ!なまえったら!!」

『ふぁ?』

「もう!起きなってば!次、あんたも移動教室だよ?」

『あれ?次なんだっけ?』

「あたしは物理、であんたは生物」

『やっば!早く行かなきゃ遅れちゃう!』

「ホントにあんたって数学の時間はよく寝てるよね。だから分かんないって泣きつくハメになるんだよ?」

『いいじゃん!あたしには瑠架っていう最高の先生がいるんだからさ』


くだらないことで笑って、つまらないことで喧嘩してはすぐに仲直りしてた。

クラスが違う友だちとも昼休みに会ったり、部活でバカやったりして楽しい毎日だった。

公立とはいえ、県内有数の進学校だったから勉強は大変だったけど、それすら楽しく思えた高校時代。

あの時は本当に何もかもが楽しくて、今から思えば何もかもがキラキラ輝いていた気がする。


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