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「あぁ、ジュリエット。この庭園を銀色に染めている、あの清らかなる月にかけて私は誓う…」

『いいえ、それはいけません。空の旅路を巡りつつ、夜毎姿をかえるあの月に、あの移り気な月にかけて誓わないで下さい。貴方の愛が月のように変わってしまうのはイヤですもの』


ただ今舞台の練習のまっ最中。
無事に出来上がりつつある台本を元に、読み稽古をしているのだけれど。


「ちょっと!新一くん!いい加減棒読みで読むの辞めてよね!一体何回目だと思ってんのよ!」

「んなこと言ったって、こんなこっ恥ずかしいセリフ言えるかよっ!」


また始まった。
ロミオがジュリエットの元へ行くシーンになると園子からバンバンダメ出しを食らってる工藤くん。

工藤くんの言い分も分からないじゃないけど、これはただの劇なんだから割り切ればいいのに。


「園子ちゃん、そろそろ時間だよ?」

「えっ?もうこんな時間!?新一くん、ちゃんと家でも練習してきてよねっ!」

「へいへい」


どうやら今日の稽古はここまでらしい。

あたしも帰ろうとカバンに手をかけたところで工藤くんに肩を叩かれた。


「今日このまま俺ん家な」

『何で?』

「衣装が出来たんだってよ」

『…』


ついにきたか!
魔の衣装がっ!!
あー、あのお披露目とかいうヤツいつやるんだろう?
明日とか言わないよね?


「とりあえず家行くぞ」

『はーい…』


園子からやっと解放されて、ちょっとだけ不機嫌度の下がった工藤くんの後ろに着いて工藤邸に向かった。
今日ばかりはこの玄関をくぐる気になれない。


「ただいまー。ちゃんとみょうじ連れて帰って来たぜ?」

『お邪魔しまーす』

「二人ともお帰りなさい!さぁ、早く部屋に行って着替えて来て!」


あれ?有希子さんが抱きついてこない?
何で?別にテンションが低いって訳でもなさそうだけど。
寧ろエンジン全開な有希子さんだし。

不思議に思いながらも自分の部屋へと入ったら、ビックリして息が止まるかと思った!


「お帰り。なまえちゃん」

『望月さん!?何で望月さんがあたしの部屋に居るんですか!?』

「有希ちゃんになまえちゃんのヘアメイクを頼まれたんだよ。ほら、座って」


促されるままに化粧台の前へと座ったけど、有希子さん、一体どんだけこの文化祭に力入れてるんですか…。


「文化祭でジュリエットするんだって?衣装もキレイだし楽しみだな」

『まだ台本出来てないんですけどね』


他愛のない話をしながらも着実にメイクを仕上げていく望月さん。
当日は自分でやらなきゃいけないんだからとあたしもしっかりと望月さんの手を見て勉強していた。


「そんなにしっかり見なくても大丈夫だよ」

『え?』

「本番のなまえちゃんのヘアメイクも俺がするからね」

『えぇっ!?』


何で文化祭にプロが出張してくるんですか!?
そこは断って下さって結構です!



あたしの言葉にならない叫びとは裏腹に望月さんは楽しそうに笑いながら髪をキレイに仕上げていった。



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