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早速ビーチバレーを始めてしまったみんな。

え?泳がないの?
海に来たのに?


『明日香、あたしちょっと泳いでくるから適当に言っといて』

「うん。分かった!なまえちゃん気をつけてね!」


海まで来て、何が悲しくて暑い中砂浜にいなけりゃいけないんだ、とあたしは一人海の中に避難した。

んー、ちょっぴり冷たい海水がキモチいい!


沖へ沖へと泳いでいって、周りに人が全くいなくなったところで、海の中へと潜った。

あたしは海に潜るのが昔から好きだったから。

“泳ぐ”っていうより“潜る”のが好き。


そして少し潜ったところで海面を見上げる為に仰向けになる。

日差しを受けてキラキラしてる水面を下から見るのが、たまらなく好き。

視界いっぱいに広がった水面が波で揺れる度、万華鏡みたいにコロコロと表情を変えるから。


人が多いところじゃ騒ぐ音が煩くても、これだけ沖へ来れば誰もいなくて静かなものだ。

背中には深く広がった海底が感じられないくらい、そして見上げれば腕を伸ばしても届かない水面。

この中途半端で閉ざされたあたしだけの空間が、昔から居心地が良かった。


昔からの癖でそっと腕を伸ばしてみると、ぐいっと誰かに力任せに引きずり上げられた。

え!?ちょ、何?!


『ぷはっ。ちょっといきなり何す』

「大丈夫か!?」

『へ?』


水面まで引きずり上げられたかと思ったら、何か知らないが焦った顔の工藤くんがあたしの腕を掴んでいた。

ってことは工藤くんがあたしを引きずり上げた犯人ってことになるんだろうけど……


『大丈夫って、何が?』

「何がってオメー、溺れてたんじゃ…ねぇ、の…か?」


どうやらやっと話がおかしいことに気付いてくれた様子の工藤少年。


『あたし、今普通に泳げてるでしょ?』

「あ、あぁ…」

『ってことで、誤解も解けたことだし。そろそろ腕離してもらえないかな?』

「!?…悪ぃ」


工藤くんに掴まれた腕が赤くなっていた。

何もここまで強く掴むことはないだろうと思うんだけど、それだけあたしを助けようと必死だったんだと思うと怒れなくて、結局苦笑いを溢すだけに留まった。



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