最初見たときは、ただ純粋に単純に綺麗だなって思った。
そして、とても悲しそうに微笑む人だなって。
街で迷ってしまった俺を、大通りまで連れて行ってくれて。
髪の綺麗な美しい人だった。
その人が、まさか能力者だったなんて、思いもしなかった。
数人の能力者が出たという情報のもと訪れた街。
そこで暴れていた能力者を統制していたのが、彼女だった。
「***さん・・・!?」
見覚えのある美しい髪の毛。
驚いて固まった俺をみて、***さんは一瞬目を見開き、そして悲しそうに微笑んだ。
「與儀さん。・・・お久しぶりです」
どうして、そう呟くと***さんはより悲しみを深めたように笑った。
優しげな、それでいて悲しい微笑み。
なんで、こんな笑顔を浮かべる人が・・。
「私、能力者なんです。・・・まだここで捕まるわけにはいきませんので。・・さようなら」
そう言って、あっという間に飛んで行ってしまった彼女。
本当は追って葬送もしくは捕縛すべきなのに、何故か俺の体は動かなかった。
彼女は敵。
敵なんだ。
殺さなければ、いけないひと・・――。
その時はじめて、彼女に恋していたことを理解した。
「あれ・・・なんで、こんなに悲しいの・・・!」
いつも葬送するたびに痛む胸。
だけど、この痛みは全身を剣で切り刻まれるより尚痛いんだ。
「いたい、いたいよ胸が・・」
ぼろぼろと溢れてくる涙がどうしようもなくて、一人部屋で膝を抱えた。
わかってたんだ。
この時が、いつか来るだろうってことくらい。
「・・・・!」
目の前に立ちはだかる彼女は、今回は明らかに俺を殺しに来ていて。
俺もそれに応戦するしかなくなった。
彼女はとても強くて、美しくて。
そして何故か泣きながら戦っていた。
その涙があまりに悲痛で、悲しくて、つらくて。
傷ついて蹲った俺に、***さんは叫びながら腕を振り下ろした。
「***さん・・・、ごめんね・・ッ!!」
それをすれすれで避け、剣を、突き出した。
ごめんなさい。
大好き、大好きだよ。
愛してるのに・・――。
深々と、切っ先が彼女の胸に突き刺さった。
その感触が、やけに手に伝わる。
(ああ、なんで)
(なんで気づいてしまったのかな)
(この人が、愛しいってことに・・―――。)
彼女が光の泡になって消えていくとき。
確かに俺は祈った
(次は、君として逢いたいよ・・――。)
敵同士でもなく、ただ一人の人として
(愛してる、***さん)
((次は必ず、人として))
((出会い))
((愛し合おうね))
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