私は敵。
あの人の敵なの。
そういくら言い聞かせても、私の心は納得してくれない。
私は火不火の人間で、あの人は輪の闘員。
上に命令されて後を付けた彼は、始終仲間と楽しそうに笑っていた。
金髪の癖毛がふわふわしていて、笑うとへにゃりと緩む顔。
「・・・・與儀、さん」
初めて見たとき。
陳腐な言い方だけれど、電流に打たれたような心地がした。
それから、ああこれが恋なんだなって。
一目ぼれをした。
あの、優しい笑顔に。
でも、絶対私にそれが向けられることはないんだ。
能力者である、私には。
「・・・・ッ!!」
こんな日がいつか来る、そう予想はしていた。
けれど。
これほど辛いとは思っていなかった。
好きな人に、剣を向けられる恐怖。
恋い焦がれる人に、醜く変化した自分を見せる恐怖。
求めていた人を、この手で傷つける、恐怖。
いやだ、いやだよ。
でも、私はこの人の敵。
敵なのだから・・――。
そもそもこんな私が彼と恋仲になれるべくもないのに。
「う、わぁあああああッ!!」
頬を伝う涙を自覚しながら、傷ついた彼に腕を振り下ろした。
(ああ、ああ)
(なんでなの、)
(何故、彼を愛してしまったのだろう・・)
私の攻撃を避けた彼。
彼が叫びながら突き出した剣の切っ先が、私の胸に深々と刺さった。
その感触を胸に感じながら。
消えてゆく自分の体と、悲しげに歪む彼の表情を見ながら、私は叫んだ
(あいしてる、與儀さん)
(にんげんとして、あいたかった)
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