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海にも還さない


※監督生死ネタ。
※フロ視点。ネームレス監督生です。



「先輩にお願いがあります」
「なぁに、小エビちゃん」
「私が死んだら、遺灰を先輩が住む海に散骨して欲しいんです。
 そうしてもらえれば、死んだ後も、先輩の近くにいるって思えますし」
「何言ってんの。小エビちゃんは死なねぇよ?」

 小エビちゃんが死ぬ。そんなこと絶対考えたく無かったから、真剣に話してた小エビちゃんの話をいつもちゃんと聞いてなくて、ごめんね。

 ナイトレイブンカレッジでたくさんの事件を解決した後、もともと弱かった小エビちゃんはもっと弱くなっていって、あっけなく死んじゃったよね。オレが何度も死なないでってお願いしたのに、小エビちゃんは死んじゃった。全部の事件が終わった途端に病気になった小エビちゃんは、まるでこのためだけにこの世界に連れてこられたみたいだった。役目が終わったらはいおしまい、なんてそんなふざけたことある? どー考えても、小エビちゃんを連れてくるだけ連れて来て、こんな目に合わせたこの世界はサイアク。でも小エビちゃんはこの世界を恨んでないって言ってた。オレと会えたから、だって。でもオレは、小エビちゃんをオレから奪うこんな世界は大嫌い。

 オレ、こうしてる今も、この片手で持てる瓶の中に入ってるのが小エビちゃんだったなんて、未だに信じられねぇの。だけど、小エビちゃんはもうどこにもいないんだね。

「ナイトレイブンカレッジを卒業したら、オレと一緒に海に来てよ」

 小エビちゃんが元気だった時、よく小エビちゃんに言ったの、覚えてる? 小エビちゃんはいつも笑って誤魔化してたけど、あれがプロポーズだってちゃんとわかってた? 小エビちゃん。もしかして小エビちゃんは、オレが海に来てって言ってたから、散骨なんてして欲しいなんて言ったの? ねぇ、どうなの、小エビちゃん。ちゃんとオレに教えてよ。

 今ね、小エビちゃんのお願いを叶えるために、オレ、久しぶりに珊瑚の海に来たよ。でもね、こうして海を前にすると、どうしてもできないんだぁ。だって、オレは海が冷たくて寒いところだって知ってるし。オレにとっては普通でも、そんなところに小エビちゃんを撒くだなんて、そんなことできるわけねぇじゃん。それに、この瓶の中に入ってる灰が小エビちゃんの全部なのに。海になんて撒いたら、広い海に溶けて、小エビちゃんはオレから遠く離れたどこかへ行っちゃう。そんなのやだ。

 小エビちゃん、お願い、ちゃんと叶えられなくてごめんね。でも、どうしても小エビちゃんと離れられねぇの。離れたくねぇの。オレのわがまま、きっと小エビちゃんなら許してくれるよね?

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