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近頃すっかり工場にも訪れなくなった遊星を心配して、ラリーが様子を見に行ったら、彼はとても慌てて走り戻ってきた。遊星が倒れていたという。急いで皆で午後の仕事を放ったまま彼の住処へ向かった。
遊星は脱水症状をおこしていて、加えて栄養・睡眠不足だった。



塩と砂糖を溶かした水を少しずつ飲ませるなど応急処置をしてから、小さな会議が開かれた。こんな状態の遊星を一人にできない、という事になり、最も生活能力があると思われた私が遊星の傍にしばらくいることになった。一応言っておくと「こんな状態」とは脱水症状云々の話ではない。

自分の身の回りのものを一通り鞄に詰め込んで、再び彼の元に向かった。作業場と生活スペースを仕切るカーテンとは言い難い布をそっとあけると、彼は眠っていた、けれども。

「……う、あ…いやだ、……ぅう、」

遊星はひどくうなされていた。また辛い夢を見ているのだろうか。ベッドの脇に膝をついて額に浮かぶ汗を拭ってやると、彼はぴくりと反応して、うすく目を開いた。

「……!名前、来てくれてたのか…!」
「うん、ごめんね起こして。まだ水分も足りないと思うから水を、」

言ってるそばから遊星がむくりと起き上がったので、まだ安静にさせなければと手を伸ばしかけた時だった。彼は私をかき抱いて、そのまま床に倒れ込んだ。鈍い音と共に背中に衝撃がはしる。痛みで骨がみしみしと鳴った。

「っ……!い、たいよ遊星…」
「あぁ、名前、名前、眠れないんだ…そばにいてくれ、どうにかなってしまいそうだ……」

遊星は私を押し倒した状態のまま、哀願するように呟き続ける。私は自分の背骨が心配だったけれど、とりあえず遊星を落ち着かせようと思って、彼の頭を撫でながらもう大丈夫だと、そばにいると優しく言った。


遊星は幾度となく私を支えてくれたし、勇気を与えてくれた人だ。そんな彼が今抱いている哀しみを、私も同じように受け止めることができるだろうか。
言い知れない不安を片隅に残して、この日私は遊星に強く強く抱きしめられて眠りについた。





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