由衣ナレ01「今日は卒業式です。ですが感極まって泣くなどという柄ではないし、校長先生たちの眠い話をダラダラと聞く集会…程度の気持ちでした。もっとも、話など聞いてはいないのですが。そして、卒業式終了後。」

仁02「今日で卒業って気があんまりしないなぁ…」

葵衣03「…っく…卒業したくないよぉ……」

悠人04「泣かなくても…今生の別れじゃあるまいし…。」

葵衣05「でも…っ、卒業したあとって…あんまり会わない…って言うし……っ。」

由衣06「べつにみんなの家は遠いわけじゃないんだから、連絡くれれば会いに行くわよ。」

葵衣07「ありがとう由衣ちゃん…」

仁08「優しいねー。その優しさを俺に向けてくれないのは何でだろうな?」

由衣09「何でかしらね、不思議だわ。…まああんたも、困ったことがあったら連絡しなさい。気分によっては聞いてあげるわ。」

仁10「マジで!?毎日連絡する!」

由衣11「あんた着信拒否決定よ。」

羽芽12「ゆっいさーん!!」

由衣13「出た……」

羽芽14「そんなこと言わずにっ!今日でもうお別れなんですから優しくしてくださいよ!!」

由衣15「あーもう…上条並みにウザい…」

仁16「俺ってそんなにウザい?」

亮17「相変わらず騒がしいなー。」

由衣18「来たんだ。…津田さんはいいの?」

亮19「他の友達と泣いてる。あと、『本当は中野のことそこまで嫌いじゃなかった』だってさ。」

由衣20「……あっそ。…そうそう、今みんなで卒業式らしい話をしてたん……っていない!?」

亮21「何か蜘蛛の子を散らすように去っていったけど……」

由衣22「あいつらめ……」

亮23「………あのさ、俺に何か言いたいことあるんじゃないの?」

由衣24「…ないわよ。」

亮25「お前嘘つく時いっつも髪の毛弄るよなー。で?何だよ。みんなが一斉にどっか行ったことからしてバレバレだっつの。」

由衣26「ふー……分かったわ。言えばいいんでしょ言えば…」

亮27「よろしい。」

由衣28「…はぁ…。あのね……実は私……好きな人がいるのよね。」

亮29「へぇ、意外だな。」

由衣30「…………。まぁいいわ…」

亮31「で?俺に応援してほしいとか?」

由衣32「…まぁ、そんなところかしら…」

亮33「で?好きな奴って誰?」

由衣34「――……。貴方の方がよく知っているはずよ。私はほとんど何も知らないわ。」

亮35「だから誰だよ。」

由衣36「教えない。とにかく!心のどこかで私の恋がうまくいくように祈っておいてよね。」

由衣ナレ37「これが正解だと思いました。私は見ず知らずの人を好きになりました。私はその人のことを何も知りません。そう、これがあなたのためならば。」

由衣38「せめて夢の中では…この恋がいつか叶いますように……」

亮39「何か言ったか?」

由衣40「何もないわよ。」

由衣ナレ41「私は私に、嘘をつき続ける。」

fine.





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