141アンジッヒを知る 私は何なのだろう 薄暗い部屋に姿見の鏡が一つ その前に立って自分を見た そっと鏡面を指先で撫でた ____ この鏡は貴女の『真』をうつす鏡です 鏡の前に立ってみた 何もうつらない 私は カ ラ ッ ポ (己の『真』をうつす鏡があるのならばどうしますか?) (逃げますか?) (見ますか?) (見なかったことにしますか?) (答えは見つかりましたか?) 142なにかいるね 僕と○○は幼馴染みで従妹 両親たちだって仲が良くて、今日は僕らの両親三ヵ月の海外旅行に旅立った 僕らを大おばさまに預けて 大おばさまの家は古くて大きくて独特の…… なんて言うのか雰囲気があるんだよね きっとここでならアリスみたいに不思議の国にいけると思うよ 僕と○○は大おばさまの庭が大好きでよくここで一緒に遊ぶんだ! 大おばさまは薔薇が大好きなんだよ だから庭には深紅や桃色や檸檬色や様々な色の薔薇が 一年中咲いているよ そして月夜の晩とっても不思議な事が起るんだ えっ?それは?秘密にしてくれる? うん、いいよ ある時僕達は寝つけなくておき出したんだ 外の空気が入るように窓をあけると甘くて濃い薔薇の薫りがしたんだよね それでね、外を見ると_______ 女の人が空を見上げていたんだ でも風が強く吹くとその人はいなくなってしまった その人は妖精だったのかも知れない その人は幽霊だったのかも知れない でものたしかに言える事は「なにかいたんだ」 その時僕らは顔を見合わせて微笑みあった 143安寿姫の堪えた怒り 私たちは何のために産まれてきたのだろう 私たちは“あの女”のために生きているのではない 私たちは幸せになりたい 私たちは幸せになるんだ……! だから今は今は耐える 幸せを掴むために 144ハレルヤを唱える 今日はクリスマス ボクはひとり 薄暗い道に蹲った ボクは孤児 ボクを守ってくれる大人なんていない ボクには家がない だから着古した服をぎゅっとつかんで腕を抱えて縮こまる 熱を逃がさないように さむい、さむい、さむい 牧師様は今日はイエス様のためにハレルヤを唄いましょうと言っていた ボクは神様がキライ きっと神様もボクがキライ 平等にアイしてくれるはずなのにアイしてないんでしょう? ああ、雪が降ってきた ボクの息は白 さむいねむたいさむい ニャー 仔猫がボクに擦り寄った あったかい ねむいさむいねむいさむいねむいねむいねむい ありがとう …ね………む…‥い____ ___その瞳はもう開かない 145枯槁する草木 雨が降らなくなって幾年月 大地に根を張った草木はうすい黄緑色になりカサリと軽い音を立てた 露出した土は風に拐われていき彼方へと行ってしまった 水水しさの面影すらない大地は生命(いのち)を感じさせない 水をなくしたこの地は生命を削り取り、地に返していった まだ生きている者は水を渇望し空を見上げた 146研ぎ澄ました光 147未だに終わらぬ弔い a「この街の御当主の奥方は未だに真っ黒な喪服姿。 レクイエムをごご三時に鳴らすのさ」 c「へぇ、すごいねぇ」 b「辛気臭いがな」 a「この街の法にしちまったぐれぇだしなぁ」 c「げっ、すげぇな」 b「弔いは未だに終らないってか?」 a「ははは、違いない」 (弔いは生者の為のものなのにな) 148裏路地の猫 白く塗られた土壁の海辺の町 日は後半刻もしないうちに沈むことだろう 真昼の白壁は傾く陽光が淡いオレンジ色から橙色に染まって行った そしてゆっくりと町は青を強め紺色へ色彩を変貌させた あたしはそんな町の細い坂道をゆっくりとのぼった あたしは何やっんだか 今更ながら自分の行動がわらえてきた 真っ黒な猫がちょっと変わっていて、思わず追い掛けただなんて… そう、何と無く追い掛けなくちゃ行けない気がしたのだ そして私と猫は高台へとついた もう、歩けない 疲れた 壁によりかかり座り込んだ 日はすっかり沈み、裏路地に随分と闇が落ちた 家々の光の切端だけがぼんやりと道を照す 猫は私を置いて家路についたのだろう もうここにはいない ゆっくりと立ち上がり、暗くなった町を見下ろした 冷たい風がソッと吹き抜けていった そして私もその場を後にした 149一石日和に託けて 雨が降ればいい 人任せに思う今日この頃 明日は運動会という、文系のあたしには最低な日だ てるてる坊主でも逆に吊ってみようかな? それとも真っ黒なてるてる坊主? >>>次の日 雨は降ったりやんだり 運動会は無理矢理決行 いつも以上に最悪な運動会 150お話を聞かせて 「ねぇ、おはなして」 「あぁ、いいよ。何がいい?」 「しあわせな おはなし おひめさまがいて おうじさまがいて みんながわらっているはなしがいい」 「それじゃあ___にしよう」 配布元:中途半端な言葉 戻る |