131鎮守の森で鳴く鴉


緑が深い森の最奥はかつては『鎮守の森』と呼ばれておりました

全ての命を災いから守ってくださる神の祭り場を囲うようにして

それはありました

しかし、人とは罪深い生き物

守ってくださった神を邪神だと罵しり

見捨てて

焼き払ったのです

『鎮守の森』の神様は泣きました



___守ってきたのに____




そして人を憎みました

御神体を人の手に壊される前に

暗く濁った心の欠片は空に飛び上がりました

そしてそこから真っ黒な大鴉が生まれました

大鴉は鳴いて人々に死を告げ

死した人々の御霊を喰らいました

喰らわれた御霊は大鴉の中の濃く暗い闇を彷徨うた

今でも鴉が鳴いている




132カラードの虐待


「っ、何をする!!!」

「あんたが我々にやってきたことですよ」

「我々を故郷から連れ出し、強制的に労働をさせた」

「そして、我々を人と認めず、暴力を振るった」

「人としてあたりまえのことを認められなかった」











「今度はお前達の番だ」











「知らない!僕じゃない!!!」

「無知は罪ですよ」

「っあああぁぁぁぁああああぁあああぁあぁぁぁぁぁぁぁああああ」





133さよならのあり方を


道は分かれるものです

貴方は優しいから、私が泣いたら困った顔で笑うでしょう

貴方は軍人だから

民間人を守らないといけないから

貴方は戦争に行くのでしょう

貴方を困らせないために

私は笑っていましょう

貴方に「さよなら」を言いたくないから





「いってらっしゃい」





134割かれた水に


この夏は日照りが酷くておまけに雨も降らなかった

川の水ももうすぐ底をつくことが見て取れた

その兆しが見えたのは随分前・・・そう、三ヶ月ほど前だ






儀式を行わなくてはならない






血を流し、鬼に御霊を渡し、水を流すのだ

血が溶け込んだ水は、私には酷く苦かった

苦しくても飲まねば死んでしまう

割かれた水に私はいつも悩まされる





135剥かれた顔の皮


にこりと笑う顔を貼り付けて

心をぎゅうっと押し込めて

私という存在を殺した

顔が剥がれたら

心が少しづつ解けていった

動かなかった日常は 酷くつまらなかった





136辿るほど泡沫


さぁ、目を閉じて下さい

心を落ち着けて

身体をリラクッスさせて下さい

大丈夫ですよ

何にも怖くはありませんよ

記憶を辿りましょう

ふふふ、昔のことなんて忘れてしまいましたか?

大丈夫ですよ

普段は思い出されないだけなんですよ

さぁ、ゆっくりと降りてきましょう

何 が  み   え    ま     す       か

137来訪者の声


「すみませーん」

「失礼します」

「誰かいませんか〜?」

「××なんですけど」

「こんにちは」





138オーパーツの奇跡


「____っというわけでオーパーツは様々奇跡を起こしてきたと言われています」

「部長ーーーーーー!」

「で、今度は我々が奇跡を起こしたいと思います________」

「「「「「「ウォーーーーーーーーーー」」」」」」







「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・起こらなそうだね」

(こくこく)





139襖の奥の躾


「其処で反省しなさい」

襖の奥にいつものように閉じ込められる

なんで母様は アイ してくれないんだろう

ボクが悪い子だから?

ボクがお利巧じゃないから?

どうしたら褒めてくれるんだろう





140奇譚集


不思議ヲ 集メタ ソノ本 ニ

手ヲ   重メテ 旅ニ出ル

ユメ ト キボウ ノ バショ ヘ










配布元:中途半端な言葉


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