041濁った瞳に溜まる涙


疲れきった大人達がくたりと道端に座り込んでいる

枯れた大地にくすんだ空はこの悲惨な世界を構成した

大地に子供が一人倒れた

純真に輝くはずの目がひどく濁っている

瞳にたまった涙が頬を伝い大地に落ちた

大地は貪欲にそれを吸い取った





042薄れゆく季節


薄れゆく季節を名残惜しげに父は空を見上げた

父はまるで仙人のような人だと思う

自然のままに生きる

それはとても自由なことだ

そして父は風のようにいなくなった





043誰かに必要とされたくて


私は今でも忘れられない

弟は末子

私以外の誰にも必要とされなかった

弟の小さく細い腕は必死に伸ばされていた

だから私はその手を取った

私も”私”を必要としてほしかった

弟のおかげで私は生きてこれた



私は生きていけた





044小さな波紋


日常生活

誰しも心に様々な波紋を広げる



いかり

       かなしみ

                     
よろこび

              にくしみ


今日はどんな波紋だろ?





045彷徨う蝶々


愛を売って彷徨いましょう

夜毎に街を歩き彷徨う私

私は彷徨う蝶々





046在るようで、無いもの


貴方は猫のような人だから

貴方の隣は

あるようでないもの





047埋まらない想い出


暗黒十年

抜け落ちた思い出

埋まらない

それでいい

(その痛みさえも ア イ シ テ イ ル )





048哀の唄


貴方の歌はとても悲しい

学生時代、私は聞いたことがあった

月が爛々と輝いていて

遠吠えが大気を振わした

その声は哀の唄



今、貴方は幸せですか?





049たった一つの言葉




ごめんなさい



いつもあんたはそう言った

まるでそれしか知らないように



ごめんなさい



下を向いたまま―――

(一度だって俺のことを見やしない)





050雪の終わり、桜の始まり


母様

後少しで雪の季節が終わります

庭の桜、もう咲かないけれど

桜の季節が後を追うようにくることでしょう

母様、今兄様と二人で一緒に一生懸命生きています

心配しないで見守ってて下さい







配布元:中途半端な言葉


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