下忍【第七班】(2)


「よーし、4人とも個性豊かで面白い!…明日から任務やるぞ」

「どんな任務でありますか!?」


敬礼ポーズをとりながら、ナルトは待ち望んでいたのであろう任務について聞く。


「まずはこの5人だけで出来ることをやる」

「なになになになに!なーに!?」

「…サバイバル演習だ」


サバイバル…演習…?
演習ならともかく、サバイバルってなんだろう。

なんだか危険な匂いがする。


「任務なのに、なんで演習なんかやんのよ…演習なら、アカデミーで散々やったわよ?」


サクラの言う通り、演習なんて言わば練習のようなもの。

任務とは程遠い。


「ただの演習じゃない」

「じゃあさ、じゃあさ、どんな演習なのー?」

「サバイバルな演習ってことでしょ?」

「…アホか、そのままじゃねーか」


なんだか今日はやけにサスケくんに突っ込まれる。
まぁ、アホなのは私なんだけど。

そんな事を一人思っていると、先生は静かに笑い出した。
非常に不気味だ。


「ちょっと…何がおかしいのよ、先生!」

「いやぁ…俺がこれを言ったら、お前ら絶対引くから」


みんな不思議そうにカカシを見つめる。


「卒業生28名中、下忍として認められる者はたったの10名……残り18名は、再びアカデミーに戻される。つまりこの演習は、脱落率67%以上の超難関テスト…」


…………


サスケくんを残して自分を含めた他の3名は、表情に出るほど仰天する。
いや、実は彼も心の中では驚いているかもしれない。

サスケくん、相変わらずクール。


「ほらほらー引いたー!」

「んな馬鹿な!!あれだけ苦労して…じゃあ、なんのための卒業試験なんだってばよ!!」


ナルトの問いにカカシは答える。
卒業試験は、下忍になる可能性のある者をただ選抜するだけだったらしい。

待って、ということは私達はまだ…


「私達、まだ下忍じゃないの?」

「そういうこと」


語尾にハートマークでも付くんじゃないかと思うくらい、憎たらしい笑顔を向ける先生。

そんな、やっと忍になれたと思ったのに…
お父さんとお母さん達、何も教えてくれなかった。


「ま、そういうわけで。明日は演習場でお前らの合格不合格を判定する。忍道具一式持って、朝5時集合!」


カカシは元気よく明日の事を話すが、4人共かなりショックを受けているのだろう。
言葉を失ってしまっている。

それもそうだ。
私だって、まだ下忍でないと聞いてかなりショックだった。

でも、明日の演習で合格すれば本当に忍になれる。
私の実力を見せつけなければ。
こんな所で、終わらせたりはしない。


「じゃ、解散。あ、朝飯は抜いてこい?…吐くぞ」

「…!?」


吐くほどサバイバル…ってことね。

他のみんなの反応とは違い、ヒナはやる気に満ち溢れていた。

それは、強くなれるチャンスだったからだ。

父以外の人と真剣にぶつかり合うのは初めてだが、一族の名を背負っている以上ここで食い下がる訳にはいかなかった。


***


その場で解散となり、それぞれが帰路に着く。

サクラは母に頼まれた買い物があると言って、先に行ってしまった。


ナルトは明日に備えて修行する!と言って猛ダッシュで消えていった。


サスケくんは…
そんなに喋ったこともないし、そもそも一緒に帰るほど仲良くはない。
ましてやそんな事をしたら、サクラが黙ってはいないだろう。

まぁ、当の本人はスタスタ帰ってしまったのだけれど。


ということで、一人で帰りの道を歩く。


「あーあ、サクラとせっかく友達に戻れたのに…結局一人で帰るのかぁ」

「俺が一緒に帰ろうか?」

「えっいいの?じゃあ…………って、カカシ先生か…」


独り言に返事をしてきたのは先に帰ったはずのカカシ先生。
いつから着いてきていたのだろう。突然目の前に現れたのだ。


「なーんだ、もっとビックリするかと思ったんだけど」

「はい、とても驚きました。先生って、ストーカーだったんだなぁって」

「変な言い掛かりはよしてよ。たまたま見かけただけだってば」

「暇なんですね」

「…なんか俺に冷たくない?」


当たり前だ。ついさっき、先生のおかげで夢から現実に引き戻されたんだから。

先程のキツイ脅しが頭から離れない。

強くなれるチャンスだと思ったものの、やっぱりまだ下忍以下だし…それに、明日の演習で合格しないと忍にすらなれない。

やっと待ち望んで受けた卒業試験だった。

それなのに、先生の一言で全てが振り出しに戻ってしまった。


「…で、何の用ですか?カカシ先生」

「ん?いや、気になる事があってね、2つほど」

気になること…?
わざわざそれを聞きに?

「お答えできることならなんでも答えますよ」

「んじゃさっそく。さっき言ってた日に弱いって事なんだけど…一体どうなるの?今まで聞いたこともなかったんでね」


先生が知りたいのは、私の太陽が嫌い、と言ったことだった。
正確には、私の身体が太陽を拒んでいるだけなんだけれど。


「ただの日光アレルギーみたいなものです。生まれつきなので、慣れてはいるんですけど。素肌が長い時間太陽の光を浴びると、火傷の様な症状が出ます」

「ふーん。だから長袖にフード、あと日傘、ね…」

「なんでそんな事聞くんですか?」

「やっぱ気になる?」


今までアカデミーで過ごしていても、周りのみんなは特に気にする様子はなく、ただ日焼けするのが嫌なんだと思われていたけど…


「これから自分の生徒になるかもしれないのに、自分の生徒の事をよく知っておかないと、教師失格だからね。明日の演習で急に倒れられても、困るだろ?」


カカシは先程の冷たい表情とは違い、穏やかな顔でヒナを見つめる。


「…優しいんですね?」

「ま、それはいいとして…もう一つ。…夢日記って、なんだ?」


夢日記。

私が幼い頃から見る、不思議な夢を綴った日記の事だ。
まさかそんな所にまで興味を…


「ただ、自分が見た夢を日記として残してるだけです」

「夢を?なんで?」


「…今まで誰にも言った事ないんで、信じてもらえるとは思ってないですけど…同じ夢を見るんです。毎日毎日、その夢の中の主人公はいつも同じで、物語みたいに幸せな日常をただ見せ続ける」

「…その眼のせいか?」

「やっぱり、知ってるんですね」

先生は、私の血継限界のことを言っているのだろう。
柊一族もそれなりに有名ではあるから、上忍のカカシ先生が知っていてもおかしくはない。


「分からないんです。父と母から夢の話なんて、聞いたこともないし。でも、私にとって小さい頃から見続けるこの夢は…私の今までの人生と同じくらい、大切な物です」

「…だから日記に?」


静かに、遠くの景色を見つめる。

幼い頃から見続けるあの夢は、確かに私の記憶として残り続けている。

今は夢の中の主人公も、自分と同じように成長し、強くなっている。
いや、私以上に。

まだ名前も分からない。
いつもぼやけていて、顔もハッキリと分からない。

それでも、私の大切な思い出なのだ。



(柊一族……幻術を得意とし、創設者柊シキの力でかつて木ノ葉の里を作った一族か。

血継限界 夢幻眼

他の一族と比べ、秘密主義である柊一族のその能力は底知れないが、相手に夢を見せる幻術を使うと聞いた事がある。
やはりその影響か…?)


「…カカシ先生?」

「あ、すまんすまん。ありがとう、よーく分かったよ」

「じゃあ、私はこれで…明日はよろしくお願いします」

「遅れるなよ。あと、朝飯抜いてこいよー」


やっとカカシから解放され、再び歩き出す。

夢のことを話すのは、初めてだった。
きっとだいぶメルヘンな女としか思われていないのだろうけど…

…真剣に聞いてくれたのは、正直嬉しかった。

空はもう橙色に染まりかけ、陽が沈もうとしている。

差していたお気に入りの傘を閉じ、沈んでいく太陽を見つめながら前へ歩き出した。

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