彼女の秘密


「カーテン、開けないのか?」


外は晴天。
こんなにいい天気なのに
その家のカーテンは締め切られていて
部屋を照らすのは何本かのロウソクだけ。


「明るいの、苦手なので…」


陽に当たりすぎると弱ってしまう私の病。
何時間も浴びてしまえば死に至る。


それを彼に打ち明けるのは
少し怖くて、思わず嘘をつく。


「…そっか。せっかくいい天気なのに」


カーテンの少しの隙間から差し込む光を見て彼が答えると、彼女は少し悲しそうな顔をした。


「……ごめんなさい」


「謝ることなんかないよ。それに俺も、明るいよりこっちの方が落ち着く」


彼の優しさなのだろうか
それとも、本当の事なのだろうか

どちらにしても
何も聞かない彼の優しさにホッとした。



「あの、ラング………は、
兵士になって、長いんですか?」


「15の時からだから、もう5年になる。育ての親のコネで入ったんだけどな」


そんなに若い時から…
だから怪我にも慣れていて
今も平然としている。


そして彼は、私より4つ上の人。
通りで大人っぽい雰囲気があると思った。



「…育ててくれた親には感謝してる。身寄りのない俺を拾ってくれて、ここまで育ててくれた。いつか必ず恩返しがしたいんだ」


「…できるといいですね。きっと喜びますよ」


誰かに恩返しがしたいと思った事はないので
私にはよくわからなかったが
彼はとても真剣で、
希望をもって生きているのが羨ましかった。


「それより、敬語はやめよう」


「えっ…でも、私まだ16です…」


「これから世話になるんだ。堅苦しく敬語なんか使ってたら、エルも気遣うだろ」


自然と名前を呼んでくれるのが
くすぐったい。


「……う、うん…。ありがとう…」


まだ慣れないが、これから少しずつ
慣らしていこう。

彼との先の未来があると思うと
わくわくする。

でも、怪我が治ったら彼は街へ帰ってしまう。

会うことも、なくなってしまうのだろうか。



「怪我が治ったら、またすぐに戦争に行くの?」


「…そんなに反映に争いがあるわけじゃないが…また始まれば、参加する事にはなる。

また怪我したら、エルに世話してもらおうかな」


「…っ! 」


ニカッと笑った彼はまるで悪戯っ子の様で、私をからかっている。

これ以上怪我をしてほしくはないけど
もしそうなったら、また私を頼ってほしいと
思ってしまった。



「心配するから、怪我しちゃだめ…だよ」


「それもそうだな」



それから彼は
国の事、街の事、仲間の事など
色んな事を教えてくれた。

この世界は私の知らない事だらけで
とても、楽しそう。


しかし、彼の話を聞くばかりで
私には話すことはなくて

少なからず私の秘密を
彼はずっと、知ることはないだろう。


嫌われたくない。

だから、話すのが怖かった。


しばらく話し込んでいると
もうお昼を回っていて、私はうとうとしていた。

夜に行動する私にとって昼間はほとんど寝ていることが多いため、今になって眠気がきたのだろう。


「…どうした?眠いのか?」


「う、うん…。昨夜、あんまり寝てなくて」


「…ごめんな、俺のせいだ」


「ち、違うよ!ラングの、せいじゃない」


自分の、病気のせいだ。


「ベット、一つしかないもんな。ここで寝てろよ」


彼はベットから足を下ろし、
自分の隣をぽんぽんと叩いた。


「…だ、大丈夫だよ!椅子で、寝てくるから…」


「椅子なんかに座ってぐっすり寝れるわけないだろ。俺の事はいいから、寝てくれ」


意思の固い彼は断固としてここで寝ろと
言うので、諦めて彼の隣で横になる。

彼の身体と触れているところが熱い。

緊張はするが、眠気には勝てないようで
すぐに瞼が重くなる。



「おやすみ、エル」


「……おやすみなさい、ラング…」



初めて誰かと交わした
おやすみの言葉


嬉しくて、嬉しくて

その日は、素敵な夢を見た。




彼女の秘密



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