ふぁごっと | ナノ
01



出会った時は大抵の奴が

「?」

的な顔をする。中には妙に鋭い奴もいて、俺の何かを感じとったのか反射的に後退りされた事もあった。

今回の奴は前者だった。

「何…ですか?」

何ですか?こうですよ。

「っ、わっうわっ!!!?」

何度見てもこの顔は面白い。スッ、と小型の愛用拳銃を向けると真顔は一変する。

ここに来て俺の殺気を全開にしたんだ。馬鹿でも分かるくらいのをな。一般庶民には勿体ない。


「止めろ…っ来るなぁ!!」

ほらな、気づいた


「止めるわけねーだろバ〜カ」

ベタな台詞を吐きながら逃げる男の背中に標準を合わせる。追うのは好きでも運動系はパス。小林じゃあるまいし、オッサンだし。


引き金を引くと男はバタリと倒れた。……あれ?全一の野郎何を細工しやがったんだ?いつの間にやらパクられて返されたのはいいけど、なんかサイレンサー機能ついてない?


「さてと…盗ったブツ返してもらうぜ〜……」


目立とうとしたのが運の尽きだったな。改造を施された話はまた後にするとして、この暗闇で頭をブチ抜くとは流石は俺。我ながら惚れた。
背広を漁ると内ポケットから小瓶が見つかった。中身は空だけど知ったこっちゃない。学窓のことだ、何もないけど何かあるんですパターンの可能性大。


『えっ…』

「ん?」


突然した声の先には立ち尽くした女が居た。ピチャリ…。…チッ、最悪。きったねー血踏んじまったよ。女は転がっているモノが本物の死体であることを確信したようだ。俺とモノを何度も交互に見る。


「よォ」

『…何、して』

「ン〜?」


面白半分で接近。ガチガチ歯鳴らしながら震えてるって感じ?でもそれはぼんやりと像が見えてるだけではっきりと顔は見えない。

どんなマヌケ面して突っ立ってんだ?想像するだけで笑える。

天候も俺に味方して、女の目の前に立つとタイミング良く雲が退いた。月明かりが眩しいくらいに降り注ぎ顔を見る分には十分。


「……」


女の顔は意外にも真顔に近かった。つまらねぇ。


「ナニしてんだと思う…?」

『……ッ』


しかしこの女なかなか…。久しく感じる剥き出しな嫌悪感。コチラ側にはワリといたりするけど一般人で俺にこんな目線送る女なんてそういない。

挨拶がてら片手を頬に添えると女の身体が跳ねた。それもそのはず。たった今殺してやった男の血をわざと薄く塗り付けてやったからかなり気持ち悪いと思う。


だがしかし汐らしくなるどころか更に俺に対する敵意は強くなったようで。


「…お前イイ度胸してんじゃん」

『……ッ』

「コロシちゃうぞォ〜〜…?」

『…っ、…やめてッ!!』

結構結構。そんなに誘ってくるようなら調度満月だし狼男にでも変身してやろうじゃないのよ。
振り払われても懲りずに手を頬から顎へするりと移動させて強引気味に引き寄せる。


『……ッッ』


「…逃げんなら今のうちだぜ?」

器用な俺だから出来るほぼ零距離急接近に、女は震えて動かない。だが妙だ。俺にビビって動かないんじゃなさそう。これだけ睨み返せる余力があるなら普通は逃げるから。


この女の落ち着き様何か?スッゲェ場馴れしてる気がする。

こうなるパターンはお見通し?もう何しても反応してくれない系?

そうと思ったらなんだかすごい萎えてきた。可愛くない奴。半分コッチ側とか?前科一犯とか?まあなんだっていいけどさ。


一度に距離とって顔色を窺うもマジで反応なし。


ならいいや。それにまた別の奴が現れると面倒だし、構うのもこのくらいで勘弁してやるか。


「俺が消えるまで警察呼んじゃダァ〜メよ?」

ちゅっ

『わぁッッ!?』

「うぉっ!?なんだよ…」


幼稚園児みたいなノリで軽くキスしたら逆に俺が驚く羽目に。

あらやだ可愛い。ウブじゃん顔真っ赤。やっぱり一般人ですこの人。


ま、流石に場馴れしてても初対面でキスはないか。もうちょっと可愛く悲鳴を上げてくれると満点だったんだけどね。


そんなわけで俺は女に背を向け手をヒラヒラと振ってブツと共に退散してやった。


カンジやすい女は大好き。演技でなければさらに良し。


俺に気に入られるなんてほんと運のイイ奴。見られちゃったけど、今は殺さないでいてやんよ。


===愛に年齢制限無し===


「…また遊ぼうぜ〜」


……なんてね



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