ふぁごっと | ナノ
05
「あれっ…?なんだよ小林?お前今日休みとったんじゃなかったのかよ?」
「まぁ…。ちょっと思い出した事があって」
「へぇ〜真面目だな」
笹…なんとかに話しかけられて適当に相づちを打ちながら小林のデスクを漁り、パソコンを起動させる。一応言っとくけど俺はみんな大好き西園伸二だぜ。
「……あった」
彼女の名前を打ち込むとやはり出てきた。
「!」
「ああー…その子ね。やっぱりお前も心配か」
「……」
なんだこりゃ…
手始めにレイプ被害7回…痴漢に交通事故、通り魔、わんやわんやと犯罪に巻き込まれ過ぎじゃない?最近は銀行強盗の人質になったの?
「変だよな〜…デカかろうが小さかろうがその子高い割合でそこにいるんだもの。一回巻き込まれるだけでも珍しいのにさ。一時期疑ったりもしたんだぜ?自作自演で相手も共犯とか。でもま、ほんとに関係なかったんだけどね」
「……ほんとにね」
どうして俺が警視庁にいるのか。
その理由は遡ること恐らく早朝5時手前。
――――――――――
「でぇ〜…今度の仕事は何すりゃいいのよ全一君。早めに頼むよ。眠いんだから」
早朝にケータイのバイブ振動で目覚め呼び出された俺は廃屋と化したビルにいた。ふかふかのベッドで眠りたい。そうじゃなくても横になりたい。
腰痛い。ダルい。
低血圧だからイライラしちゃって仕方ない。
「女を一人連れてきてもらいたいんです」
「はっ、女ね」
そーいえばアイツ起きたかな?なんて頭の片隅で考える。眠気覚ましに一服と煙草に火をつけ煙で肺を満たせばああ美味しい。
全一は俺に対してその女らしい写真を渡すと説明しだした。
「苗字名前。身体的特徴「あ〜いいよ長いよ」
「……。住所は写真裏に記入してあります」
「どーも。自分で書いたのかこれ?」
「そうですよ」
「へぇ〜…」
てうの英才教育かしら?くせのない字はとっても綺麗。柄にもなくコイツは字が上手いと感心。
「それから今回の最重要点ですが……」
「何?」
「絶対に殺さないでください。必ず生きたままの状態で連れてきてください」
「…いいけど。なんで?」
「存在がレアでね。今のうちにちょっと調べておきたくて」
「あらそ……じゃぁもォ〜しコロしちゃったらァ〜…?」
「貴方が死にます」
「はァ〜い…――っ!?」
「…っ?なにか?」
「……、いや…」
「………」
「すっげー俺のタイプ」
「ハァ……見つけ次第連絡をください」
「はいよ」
危なかった。
寝ぼけ眼の俺は気づいていなかった。住所を見て、女の顔を確認するために写真を表に返した時、思わずはっとしてしまった。
「……名前」
顔は昨日拾った女だった。
**********
「よくよく考えれば俺アイツに名前訊いたじゃん…」
「あっ?なんか言ったか?」
「いや、何も」
そして時は現在に戻る。
全一の言った「存在がレア」と言うのはこういうことだったのか、と何となく思う。
言うならば「犯罪に巻き込まれやすい体質」と言ったところだろうか。
となると俺が惹かれるのはそこに何かあるのか…?
いいや…考えたってしょうがない。調べはついた。満足だ。アジトに戻ってアイツをあの場に留めておかないとな。
「小林〜「あ、じゃ、スンマセ〜ン、俺帰りマ〜ス」
絡まれる前に振り切るが一番。さっと席を立って退散した。笹なんとかは不満そうな顔をしているだろう。
それはいいとして…
帰ったら少し構ってみるかな?
「ま、いっか…」
俺はポツリと呟いて帰路を辿った。
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