ふぁごっと | ナノ
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場所が変わっていく。怪しい雰囲気がより一層濃くなってきてる。かなりマズイ方向で。これラブホテル…だよね。キツい香水の臭いのせいで気持ち悪くなってきた。外人さん多い。男の人同士が路上で大胆にディープキス…ってことはげゲイ……。痛いと思ったけど手首を引っ張られる力が強くなってるんじゃなくて私が後退り始めてるんだ。


『しっ…伸二さんっ…私っ…』

「ン〜〜♪」

鼻歌歌うくらい上機嫌ってことは相当いいことあったんだな…。
ぴたり。突然歩みが止まった。目の前にそびえ立つラブホテル。まさか…まさかまさかそのまさか。半ば引きずられるように私はエントランスへと入っていった。泊めるとはそう言う泊まり方だったか。


『あ…れ……?あのっ…』

部屋の券売機のボタンは押さずにフロントに直行。


「407号室は空いてるかい?」

『?』

お金は払ってないのに窓口からは鍵を渡された。
よくわからないままエレベーターに乗って彼は三階と五階のボタンを同時押す。そして三階でも五階でもない、存在しない縁起の悪い四階に止まった。

隠し部屋。扉は開かれ中へ連れられて入る。


「シャワー浴びたきゃ入んな。バスローブくらいならフロントに頼めば貸してくれるだろーし」

『…伸二さんここに住んでるんですか?』

「まさか。寝泊まり程度だよ。たまァ〜に仕事してっけど」


ベッドに腰掛けさせてもらうとドッと疲れが出てきた。伸二さんにお構い無しに横に倒れる。彼もベッドに腰掛けてきて視界が上下に揺れた。


「朝になったら送ってやる。明るいから安全じゃないってのは名前が一番知ってるだろ?こんな場所オマエみたいのがましてや一人でほっつき歩き回るってのは犯して欲しいって発狂してるようなモンさ」

『……暫くここにいさせてもらえませんか?』

「外出時に俺なしで襲われない自信があるならどーぞ」

『………』

「ボディーガードじゃないんでね」


目が開かなくなって自分が何を話してるのかわからなくなってきた。そうだ。私が寝たら伸二さんはどこで寝るの?


『伸二、さ…ん……』

「ン〜?」

『寝ないんですか……?』

「………そーだなァ〜…」

『………?』

温かい物に体が包まれてキスされた後は何も覚えてない。



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