『………』

翌朝、日の光を感じて名前は目を覚ます。
ふぁ…と大きな欠伸を1つ、名残惜しいがベッドから降りて顔を洗いに。それからキッチンへと向かった。


さぁ、朝食を作らないと。
可愛い彼がお腹をすかしていてはかわいそうだ。

『………』

こくん…。首が折れる。疲れも溜まっており自分でも何をしようとしていたのか、酷い眠さのあまり手元はぼやけ目線は斜視になりかける。


―――ぎゅっ…

「なに作ってるの?」


『』

突如後ろから腰に絡み付いてきた両腕と、肩に乗ってきた人の顎を振り払うように、名前は思いきり振り返った。
そして思わず目をそらす。

『(――っ!?!?)』

なぜ!?どうしてッ…!?名前は口を押さえおそるおそるもう一度視線を上げる。


『……!!!』

真後ろに立っていたのは、モデル顔のしかも一糸纏わずの男性。
ばっちり目が合い、状況処理をこなせなくなった名前の頭の中で脳は音を立ててはじけ飛んだ。


「…酷いな。自分で連れてきておきながらその顔はないだろ?」


―――トントン…。
茫然として言葉返せずの名前は、彼が自分の首を指差しはっとした。
さらに彼の右腕を見て青ざめる。

――――プレゼントしてあげた赤い首輪、痛々しいほどに肩から指先まで続く右腕の傷。


思い返せ。昨日連れてきた訪問者といえば…?

名前はたまらず彼の横を駆け抜けベッドへ向かった。

『』

残念ながらベッドの上に愛犬はいない。
部屋を見渡したっていない。

『(どこっ…!?出ておいで…!!)』

布団を投げ捨てたって、クローゼットを開けたってどこにもいない。

『(まさかどこかに監視カメラが…!?)』

悪質なドッキリ番組か?
部屋をひっくり返す勢いで探して荒らして、結局なにも出ず終いで立ち尽くす。

「まだ信じてくれない?」

『――ッ!?わっ…!』

呼び掛けられ、振り返るもやはりNO衣類の「彼」はいる。
とにかく目のやり場に困る。名前は思い返した。だがどんなに思い出しても連れてきたのは犬だったはずなのだ。

パニックの最中、隠してもらうべき場所を隠してもらわない限りまともな会話ができないと、名前は別れた彼氏の服をかき集め握り締める。

『こっ…これ着てくださいっ…!』

「え?」
『いいから今すぐ着てくださいっ!早くっ…!!』

なぜ恥じらわない。直視できずに押し渡す。

『……!?』

ふと気づく。去り際、彼の体から香ったのは同じシャンプーの匂いだった。


全28ページ

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