Straight To Video | ナノ

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「もういい、名前は旧型のサンプルとして保管しろ」

薄暗いモニタールームに無情な一声。
嗚呼、無常…蝉は必ずしも一週間生きられるわけではないのだ。


――――――――

『……?』


少し前に採血された場所がチクチクと痛む。血を抜いていった男は特別下手ではなかったはず。そう思いながら名前はしきりに腕を撫でて宥めていた。


『!』

地味に続く痛みに嫌気がさしてきた頃、唐突に指先に湿り気を感じ、何かと思って見てみれば指の腹が薄く赤く染まっていた。

引っ掻いた記憶もなく、事実出血箇所は採血場所から僅かにずれた場所であり、皮膚から妙な突起が突き出していたのだ。
当然驚き戸惑ったが、名前はその先端を摘むと、戻すよりいいと思って「何か」を引きずり出してみた。

痛みと引き替えに皮膚を裂いて出てきたそれは、非常に小さなカプセルのようで、よく聞くとピッ、ピッと音を鳴らし、音に合わせて赤いランプを点滅させている。

これが何なのか、それにしてもいつ植えられたのか皆目見当つかない。そんな悩める名前の頭の中に、ふと朧げな数列が浮かぶ。
深く考える前にデスクの備え付けの受話器を取り、番号を入力した。


コールは続くがなかなか出てくれない。番号が合っていたのかも不安だが、焦らされ相手を待つことしばしば……


『あ、もしもし…!私名前です!』


全60ページ

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