Straight To Video | ナノ

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シャワーを浴びたあともウェスカーは長い前髪を時折かき上げながら、バスローブのままパソコンとのにらみ合いを続けていた。


『ウェスカー…』

恐れる足をデスクに向かう男の隣まで名前は運ぶ。


『…首と胸が痛い』

まるで彼女がいない存在のようにウェスカーは相づちも見向きもしなかったが、負けじと名前は下がらなかった。

名前が自分のつま先を見つめて数分。


「……待ってろ」

そうしてやっと彼は一言返事を返した。待ってろと言われた名前はベッドに戻って待つ。それからまたさらに時間は経ち、ウェスカーは名前のもとへやってきた。


「どこが痛むんだ?」

名前は言った通り、首と胸に手を当てた。


「どう痛む?」

『……チクチク、ズキズキ、と言うか…』

名前の顎の付け根にウェスカーは手を置き、掌丘を軽く押し付けるようにして首を降下する。


「……」

男の手の動きが止まる。不自然に長く留まっていたので名前が顔を上げるとウェスカーとばっちり視線が合った。彼女は咄嗟に逸らしたが顎を掬われて強制的に向き合わされる。


「目は嘘を吐けない」

『……!』


僅かに瞳孔を開かせた名前は無意識に緩く口を結んだ。


「エクセラに会ったな?」

ウェスカーは名前の髪をすく。それもちょうどエクセラが髪を持ち上げた場所と同じくらいのあたりを。思わぬ質問に彼女は視線を沈ませ黙る。しかし髪を掴まれ、軽く引っ張られると口は勝手に『はい』と答えてしまった。



「何を言われた?」

『……あなたに、時間が空いたら会いに来てほしいと伝えるように言われました』

「…それから?」

男は静かに尋問に適した声色で追い詰める。


『………何も』

「本当か?」

『……それだけです』

男が距離を詰めれば名前は顎を引こうと力む。


『本当にそれだけですっ…』

彼女は思い切って顔を振り切り、男の手から逃れた。


「そうか…」

それ以上追及はしないと、ウェスカーは彼女から離れる。


『…体が痛いのは嘘じゃありませんっ』

完全に彼がベッドから離れてしまう前に名前は言った。逸らしたい衝動を抑えて、男の目をしっかり見据えて。


「…わかった」

ウェスカーはデスクに戻っていった。パチパチ単調なタイピングが再開される。


『………』

仮病だった。期間にして残された蝉一生分の寿命をなんとしてでも延ばしたくて、考えた子供のような思いつき。
男に触れられることに恐怖していた名前は、エクセラの話を聞いてからは触れられないことに怯えていた。
結局嘘はあっさりと見抜かれ、その見え透いた嘘を最後まで突き通そうとした自分に彼は失望したかもしれない。


焦燥する頭の中で時計の秒針の音が鳴る。

====Thanks God====


名前が思い詰めていると、少し前に会った白衣の二人が部屋に入ってきた。


「そいつらに診てもらえ」

珍しく人の出入りが多いと思っていたらそういうことか。痛くもない体を彼らに診てもらう名前は上の空。



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