35 「名前」不気味な静寂さに包まれた部屋の雰囲気は入室してすぐに感じ取れた。床に散らばった紙はくしゃりと踏みつけられ、よれてしまっている。残っているのは見慣れない名前より大きな靴跡。「……名前?」僅かに開いた寝室へのドアを誘われるように開ける。―――――カチャッ…そこに彼女の姿はなかった。窓が開かれ日差しに透けたカーテンが風に揺れる。クリスの通信機が鳴った。ジルからのコールだった。「…もしもし?」「やっと繋がった…!クリスっ!聞いて、名前はもうっ…―――――!!!!」