飴と煙草と猛禽類
「……あたしの飴、全部食べたでしょ?」
「知らん」
「じゃあこのほっぺたは何?」
少し膨らんだほっぺたをつねってやる。
「知らん物は知らん」
ぷいと横を向く鷹の目。
「禁煙中なの知ってる癖に。それがないと生きて行けないの!」
ふいに顎を引き寄せられて、ぺろりと唇を舐められる。甘い甘い、林檎味。
「……やっぱり食べたんじゃない」
「吸いたくなったら、いつでもこうしてやる」
そう言って、鷹は優しく私のお腹を撫でた。
「煙草の代わりになってくれるって訳?」
「この子が産まれるまではな」
「……ばか」
柔らかい日差しの下に揺れるのは、甘い甘い林檎の香りと、穏やかに細む金色の目。
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