さくら、さくら | ナノ





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第一部 3 禍 

 暗闇と灯に目が慣れてきたさくらが見たのは、見知らぬ四人の男だった。それも、脇に刀や鎖鎌を差し、半裸の上半身に簡素な衣を羽織り、幅の狭い袴のようなズボンを腰布で縛っているだけという様相。辺りが暗いため人相は分からないが、目だけはギラギラと強い光を放っている。こんな人たちは見たことがないが、祭りの催しか奉納の人たちだろうか。
「あの…、」
 そう言いかけたさくらだが、いきなりひとりの男に腰を引かれ、腕の中に拘束された。
「な、何をするんですか!?」
「へえ…。こいつは驚いた。相当な上玉じゃねぇか!こんな森の奥に女がひとりでふらついてるなんて、最初は妖のたぐいじゃねーかと思ったが正真正銘の女だぜ」
 男はさくらの顔を乱暴に手で掴み、他の男たちに見せるようにクイッと高く持ち上げた。
「本当に女だ…。敵の待ち伏せにも飽きたところだったが、これほどの上玉に出逢えるとは運がいい」
 女だ、女だ、と他の男たちが次々とさくらの顔や体を確かめるようにして触る。
「さ、触らないでください!」
「そりゃ無理な相談だな。女」
「え…?」
 男たちから向けられる好奇の視線が、さくらの肌にぞわりとした感触を与える。
「この女、連れて帰るだろ?」
「もちろんだ。だが、いったん連れ帰ったらヤるのは順番待ちだ。この上玉を見つけたのは俺たちだ。ここで最初にヤっちまっても文句はねえだろ」
「はは!そりゃいい考えだ」

 敵の待ち伏せ?
 連れて帰る?
 順番待ち?
 最初にヤる?

 どういうこと――?

 男たちの話の意味は全然分からないが、何にしてもこの人たちは自分にとってよくない人だ。
 こんな男たちに捕まってはいけない。
 逃げなければ…!

 さくらは腰に絡みつく男の上腕に噛みつき、不意を突かれてひるんだ男が拘束を緩めた瞬間に駆けだした。
 だが、
「逃がすか!」
 ヒュッと風を切るような音がした一瞬でさくらは足の力を失い、その場に崩れた。
「どうして……?」
 直後に襲ってきたのは足首の激痛だ。おそるおそる自分の足首に触れると、ぬるっとした生温かなものが指にべっとりとついた。
「血…?」
 どうして血なんか出ているのだろう。
 斬られたとでもいうのだろうか。
 何故?
 そんな簡単に、人が人を斬るの…?
「逃げようなんて考えるから痛い目に遭うんだ」
「まあ、ここで逃げなくてもいずれ脚は斬ったけどな」

 ――この人たち…、なに?何を言ってるの…?

 痛みと恐怖で体がぶるぶる震える。出血のせいばかりではない、血の気が引いていく。力が入らず、立ち上がることができない。
 地面の上でぐったりと横たわってしまったさくらをひとりの男が仰向かせ両手を押さえつけた。
「おとなしくしてろ、女」
 男はさくらの着物を乱暴に開いた。他の男たちも次々とさくらに手を伸ばし、四肢を押さえつけながら着けている巫女の装束を剥いでいく。
「な、何するの……!?や…めてっ!」
 痛くて混乱して、自分の身に何が起こっているのか分からない。ただ、おぞましい恐怖だけがさくらを縛る。

 ――どうしてどうしてどうして…!?

 さくらは持てるだけの気力と意志で抵抗するが、足の痛みと男の力に抗えず、あっと言う間に無垢な裸体が月明かりの下に晒されてしまった。
「………は」
 暗闇の中で真っ白に浮かび上がる美しい裸体に男たちは息と生唾を呑みこんだ。
「…!」
 弾かれたようにひとりがさくらに触れると、他の男たちも一斉に裸体に群がった。
「いやー!やめてー!!いやぁーー!」
 八本の手がさくらの素肌を弄る。四人に四肢を押さえつけられ大の字にされているさくらの躰を、あますところなく男たちは撫でまわし舐めまわして貪った。
「いやぁぁぁ!!やめてやめてー!!いやぁぁぁ」
 今や、男たちの目的を完全に理解したさくらは狂ったように泣き叫ぶが男たちは止まらない。ひとりに片方の胸を揉まれてしゃぶりつかれ、別のひとりがもう片方の胸を弄ぶ。
「いやいやいやいやいやぁぁぁー!」
「うるさい口だ。黙れ!」
 三人目の男がさくらの頭を抱え、手で口を塞いだ。声をあげることも動くこともできなくなったさくらは、もう、男たちにされるがまま。ぴちゃぴちゃと行儀の悪い音がさくらの躰の上を這いまわり、ねっとりした唾液で綺麗な素肌が湿っていった。
(いやいやいやいや!)
 男たちが吐く荒い息と、押えられた口から漏れるくぐもったうめき声が響き渡る闇の中。
(助けて助けて助けて!颯矢、蒼空…!)
 ひとりが胸の頂で舌を転がす。
(いやぁ…!)
 二人目が両手で胸を激しく揉みあげ、口で強く吸い上げる。
(やめて……!!)
 全身を貫かれたような痛みにさくらの体が激しく震えたのは、三人目の男が秘められた裂け目の中に指を挿れたからだ。
「カラカラのキツキツだぜ。この女の体、まだ男を知らねーな」
「生娘か!?」
 口を押えていた四人目の男が叫んだ。
「このままじゃキツイな。少し濡らしてやるか」
 三人目の男は指を抜き、さくらの両膝を折って脚を開いた其処に顔を埋め、ぺろりと秘唇を舐めた。
「うぅうう…っ!」
 体の中心に走る生温かな感触にさくらはびくんと跳ね、秘唇を這う舌から逃れようと腰を引くが、両の胸を弄ぶふたりが躰をがっちりと地面に押さえつけている。
(いやいやいやいや!!)
 秘唇を這う舌はやがて中へと侵入し動き回った。さくらの躰は拒絶の意志に反してびくびくと震える。
(やめてやめてやめて…!)
「代われ!」
 胸を貪っていた男が脚の間に顔を埋めていた男の髪を掴んで強引にひき離した。ひき離された男は忌々しそうに舌打ちし場所替えをする。美味しいところを奪われた腹いせなのか、いきなり強い力で乳房を揉まれ頂を噛まれたさくらは、出せない声で悲鳴を上げた。だが、その痛みが去らないうちに、再び秘唇が乱暴な指と舌によって犯される。
「うぅぅーーーっ!」
 中のものを吸いだされる感覚に気が遠くなっていくが、意識を手放すことさえも許してもらえない、あまりもの刺激ある行為が延々と続く。見知らぬ男たち、それも四人にこんなにも辱められ、恐怖と羞恥に堪えられないさくらはとめどない涙を流すが、それさえも男たちの欲情に火を点ける材料にしかならない。
 胸を執拗に弄ぶ指、秘唇の中を犯しまくる舌、空いている素肌をまさぐる手、そして未だ出血し続けている斬られた傷の痛みがさくらを極限まで追い詰め抜く。もう、どこを触られているのか、触っているか分からない。

 森の中は。
 四人の男から発散される熱気で空気は湿り、その中で凌辱を続けられるさくらはもう虫の息だ。
(もう、やめて…、やめ…て…、やめ…)
 びくん、びくん、とさくらの体に電流が走る。心の底から嫌悪する想いとは別に、猶予なく与えられる刺激に体は正直に疼いて頭の中は痺れている。
 とろりとした温かいものがさくらの中から溢れて内腿を伝い流れ落ちてゆく。痛いのか苦しいのか分からない、体の芯から突き上げてくる疼きにさくらは身悶えた。
 初めての感覚。
 自分をどこまでも支配しようとするその感覚が、さくらは恐ろしくて仕方がなかった。

 男たちはまるで飢えた獣が獲物にしゃぶりつくように、さくらの躰をさんざんに弄んだ。男たちにとっては、暗闇の森の中に自分の方から女が迷い込んできたのだ。文字通り欲望を満たすための獲物でしかない。完全に敵のことなど忘れて夢中になっているがそれも仕方のないこと。男たちにしてみれば、こんなところをひとりで彷徨っている女の方が悪いのだから。

 そして――。

「そろそろヤれそうか」
「ああ、こっちはとろとろになったぜ」
「生娘のくせに感度がいい」
「もう、俺のがはちきれそうだ。これ以上はもたねぇ…!」
「待て待て!俺が先だ!」
 男たちが猛り狂った自分のモノを一斉にさくらにあてがった。その感触で、途切れそうになっていたさくらの意識が戻った。
(や…!いや!)
 男たちが押さえつけていた手を放して己の行為に走ったため、一瞬だけ自由になった手で口の布を取り、さくらはやっと声をあげることが出来た。
「いやぁぁぁ!!助けて!蒼空ぁ、颯矢ぁぁぁ!!」
 だがその叫びは、さくらの最後の力だった。あまりもの恐怖、意識を奪われるほどの傷の痛みと躰の疼きで精神が崩壊寸前にいたさくらに、もうそれ以上の力は残っていなかった。男たちが我が先だと諍っている声も、もうどこか遠くで聞こえている。固いモノが秘裂をこじ開けようとすることにも抵抗できず、ただぐったりとしていたさくらだったが…、

「ぐはっ!」

 胃の底から出たようなうめき声が聞こえた後、さくらの顔に生温かな液体が飛び散ってきた。
「……なに?」
 鼻を突く鉄の匂いに咽せた時、猛りの物をあてがっていた男が、挿入を果たさないままぐったりとのしかかってきたのだ。男はそのまま動こうともしない。
「ぐえっ!」
「ぐはっ!」
「ぎゃ!!」
 他の男たちも叫び声をひとつあげて次々とさくらの上に折り重なり、そのあまりの重さにさくらは息ができなくなり気が遠くなって行った。
「大丈夫か!?」
 四人とは別の声がさくらの上の男たちをひとりひとりはぎ取っていく。のしかかっていた重みが少しずつ消え最後のひとりがどかされた時、捨て去られていた衣を被せられて誰かに抱き起こされた。
「生きてるな?!」
 懐かしい、聴き覚えのあるような声だ。
 さくらは空ろな目を開けた。
「よかった…。もう大丈夫だ。賊どもは全て斬った…」
「ぞ…く?」
「そうだ。この界隈を荒らし民を苦しめている賊だ」
「た…み…?」
 何を言っているのだろう、とさくらは思う。
 だが、今、自分を抱いてくれている人の声は優しく、ひどく懐かしい響きがあって。
「しっかりしろ。これはいかん。ひどい傷だ」
 やっと、幼馴染たちが助けに来てくれたのだと。
「……そ…、」
 さくらは顔を確かめようと手を伸ばそうとしたが、その手はどこにも触れることなく力を失い、さくらの意識はそこで途切れてしまった。







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