疾風の手が組み敷いたさくらの帯をスルスルと解いてゆく。 「前の夜はただそなたを奪うことに終始したが、今宵はゆっくりと蕾を開いてやろう」 「や…、やめ…てっ、やめて!」 開かれた着物の間から侵入してくる疾風の手にさくらの躰は強張り粟立ち、前と同じ拒絶を示す。それを、翔流の手しか受け入れない反応かと思ったが、どうやらそれは間違いだと、生娘だったさくらを貫いた時に知った疾風は、さくらの身に深く刻まれている恐怖が賊の手によって植えつけられた心傷だということに気づいていた。 「恐怖を恐怖のままにしていればいつまでもそこから抜けられまい…」 帯を解かれたさくらの着物は淫らにはだけ、今再び素肌が疾風の眼前に晒された。 先の世から森の中に召喚されたばかりのさくらは、自分の身に起こっていることも理解できないまま賊に捕まり、手足の自由を奪われた上でこの躰をあますところなく貪られたのだろう。 「今、あえてその恐怖を再現してやろう」 金色の帯がぐるぐるとさくらの腕を縛り寝台の頭板に結ばれる。 「い…いや…っ、いやぁ!!」 両手の自由を奪われたさくらにあの時の恐怖が身に迫る。四肢を四人の男たちに押さえつけられ、身動き出来ない躰を複数の手にさんざん弄ばれたあのおぞましく汚らわしい感触。 「いやぁぁぁ!」 身をよじり拘束から逃れようとしても縛られた上に固定された両手はびくとも動かない。全身に無数の虫が這っているような悪寒と嫌悪に襲われたさくらは錯乱する。だが、疾風はそんなさくらをむしろ愉しむかのように、 「もうひとつ、奪うものがあったな」 解いた自分の腰布で見開かれているさくらの目を覆った。 「や…!やめて…っ」 「これでそなたの感覚は俺のみに拓かれる」 疾風は手のひらを擦り付けるようにして形の良い胸をこねながら指を使って桃色の頂をきゅっとつまんだ。 「――いやぁ…っ!!」 疾風の言葉通りさくらの感覚は胸だけに集まり、それが全身へと広がっていく。ぞわぞわと粟立つ全身が触れられることを拒絶しているが、愛撫の手は片方の胸から双方を同時に揉みしだいていき、熱い舌が吐息を絡ませながら頂をねっとりと舐めまわし、そして時々吸い上げる。 「いやいやいやいや!!」 快楽などとはほど遠い、さくらには嫌悪と苦痛でしかない行為。かつて賊の手と舌に同じことをされ絶望に堕ちた心傷(トラウマ)がさくらを追い詰めるのだ。 「やめて…!」 そんなさくらには構わず、疾風は愛撫の領域を広げていく。首筋から鎖骨、胸へ唇と舌がなぞり、手は腰から大腿、内腿を這ってやがて秘所へとたどり着いた。 疾風の指が秘所に触れるとさくらの躰はびくんと跳ねた。 「やめて…、いや…っ!」 指はさくらを確かめるように秘唇の周りを曖昧に撫でていく。いつ秘唇を割って侵入されるか分からない恐怖に震えるさくらだが、指はその先には進まず、愛撫の手が足に移って下へ下へとさがり、やがて傷痕に触れた。 「………?!」 暗闇に落とされ感覚を支配されているさくらには疾風が何をしているのか分からないが、疾風の指は横一文字についた両足の裂傷の痕をなぞるように触っている。 「賊が捕らえた女の腱を切るは逃がさぬためだ。捕らえられた女は毎夜、幾人もの慰めの相手をさせられる。賊は女を抱きつぶすまで弄ぶるのだ」 「!!」 捕らえた自分をどこかへ連れ帰ると確かに賊たちが言っていたことを思い出し、さくらはふるふると首を振った。 「そなたは翔流に助けられた。だがそなたにとってはどちらが良かったのであろうな…」 「…!?」 疾風はさくらの両足首を掴んで膝で折り曲げ左右に開いた。 「や…っ」 「杖も捨てられ逃げられぬのはここでも同じ。結局そなたはこうして俺に捕まり…」 秘所に熱い吐息がかかりさくらの躰が跳ね上がった。 「な、なにを……?!」 秘唇に触れたのは疾風の舌だった。 「あぁ…!!」 逃げようとする腰を強く押さえつける疾風は、さくらの秘所に顔を埋め蕾の周りをなぞるように舌を這わした。 「いやぁ…あ……っ」 賊の舌が秘唇の中を犯した荒々しさとは違う、前の夜、心の準備もないままに無理やりに引き裂いた猛物とも違う、優しいとも言えるやわやわとした感覚がその場所に集まりさくらはひどく混乱した。 疾風を押し返したくとも手の自由はなく、足は捕まえられ逃げ場もない。暗闇に落とされてされるがままに犯される、毎夜苛まれた悪夢が現実になってさくらを襲った。 「やめて…っ、や……あっ」 「……死ぬまで俺に蹂躙されるのだ…」 今、最も恐ろしい言葉を聞いたというのにさくらの躰の中心が熱く疼く。 「いやいやいや……ぁ―――」 夢ではさくらと呼ぶ声に救われる。 だが、これは夢じゃない。 助けてくれる声も優しく握ってくれる手もなく、抗えない疼きにさくらはただただ身悶えるしかない。 「もうやめて…!お願い、やめて……!」 蕾の周りを動き回っていた舌がとうとう蕾を捉えると。 「やめてもよいのか?そなたの蜜が蕾を濡らし始めたぞ…」 光る蜜がさくらの中からとろりと零れ内腿を伝った。 「いやぁ…、もういやぁ…っ」 これが快楽というものならば、疾風によって昂ぶらされていることが悔しくてならない。 疾風が憎い。 憎くてたまらない。 なのに、どうして躰は疾風の舌でこんなにも昂ぶるのだろう。 「やめ……て……っ、……!!」 そんなさくらの気持ちを弄ぶかのように、舌先を使い蕾を刺激する疾風の愛撫が激しくなり。 「やめ……、あ……っ!ぁっ……あぁぁ!!」 蜜が溢れだす。 「そなたの躰は正直だな。蜜で俺を溺れさせるつもりのようだ」 「ちが……っ、違う…!!」 「ならばこれはなんなのだろうな」 疾風の指が秘唇の中にするりと侵入しとろとろになった中をかき回した。指に蜜を絡ませるようにぐるりぐるりと指先が動く。 「あぁぁ…、あぁぁ…っはぁ…っあぁぁ」 蕾の愛撫によって昂ぶらされていたさくらの躰はそれだけで高みに押し上げられ、心がどれほど拒絶しようとしても抗い続けることができない。 「――んぁ…ぁあっ!!」 蠢く指に翻弄される。 快楽の波が嵐になって押し寄せさくらを深く深く呑みこんだ。 「はあ……っ、あぁ、ああぁ……っ!あっ、……ん、あぁんっ……!」 もう声を抑えることもできない。 快楽を知ってしまったさくらは甘い嬌声をあげながらとうとう頂に昇ってしまった。 |