Hollow

あの人の胸に穴が空いていた
見えないけれど感じた

新月の夜より暗く
深海の狭間より暗く
砂漠よりも乾燥した
穴が空いていた

大きくもなければ小さくもない
重くて軽い穴が空いていた

左胸に暗い大口を開けて
闇を覗かせていた

でもあの人はこう云った
「大丈夫だよ」
だからわたしは頷くしかなかった

いつかこの穴があなたを飲み込むまで
あなたはあなたでいられるのかも知れない

だからわたしは
あの穴があなたを呑み込むまで傍にいようと思った




『大丈夫だよ』


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