月ナシ実ナシ、嗚呼、彼の人の瞳は何色だったのかしら。

貴方の匂いに満たされていた筈の此の部屋は。
何時しか、いつの間にか、只の埃臭いモノになって終った。
青白い咆哮。
暗雲を凪ぎ裂く白熱の雷鳴。
嗚呼。私は其を認めない。
そう認めて等やるものですか。
忘れた現実を、思い出した未來すらも。成し得はしない。
愚かよ。
愚かさよ。
彼のヒトを私に返して下さい。
爾、須く異を唱えようとも。
さぁ、飛んで終いなさいよ。
何処迄も。何時迄も。
さぁ。
飛んで終いなさいよ。
遺憾、竦む脚は木偶の坊。
今日も昨日と同じ事の繰り返し。
帰り道を見失っても、私は存じ上げませんの。
玲瓏の流し目は深く深く。
零落の嘲笑。
遥か彼方の彼のヒトを包み隠して居る黎明。









愛惜は妄想アイロニー。











哀歓は剃刀の疾走と共に。
舌の感触も囁きも延髄深く染み込んで居るわ。
なのに何故なの何故なの如何したら良いのか知らね。
貴方の匂いが思い出せない。
鼻につくのは土臭い感触と舌触り。
何処なの何故なの。





貴方が思い出せないの。


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