森の中の話し合いの

「やあやあ、皆の衆。話をしようじゃないか」
 鳩が言った。
「やや、それはいい考えだ」
 猫が言った。
「それじゃあ何の話をするんだい」
 魚が言った。
「これなんかどうだい? 先日の北の森で鼠が熊を殺した話だよ」
 犬が言った。
「それは駄目だ。その日のうちに話したじゃないか」
 猫が言った。
「そうか、すっかり忘れていたよ」
 犬が言った。
「これはどうだい? 真ん中の沼で鴨が馬を突き落として死なせた話だよ」
 魚が言った。
「それも駄目だ。一昨日話したじゃないか」
 鳩が言った。
「うむ、他に何かあったかい?」
 魚が言った。
「終りの草原で猿が狂った話なんかはどうだい?」
 猫が言った。
「それは後日、蛙殿とするんだ」
 犬が言った。
「それでは仕方ないな」
 猫が言った。
「他にないかね?」
 魚が言った。
「これはどうだい? 刺の樹に兎が登って血塗れになった話さ」
 鳩が言った。
「おいおい鳩さん、それは来年の話だよ」
 犬が言った。
「やや、そうだったかな? これは失敬失敬」
 鳩が言った。
「さて困ったな」
 鳩と猫と魚と犬が言った。
「やあ、皆さんお揃いで。一体全体何の話だい?」
 丁度その時鹿が来て言った。
「これはこれは、鹿さん。丁度いいところにやって来た」
 魚が言った。
「今から何を話すのかと、皆で話し合っていたところなのですよ」
 犬が言った。
「何か良い話はないものかい?」
 猫が言った。
「ふむ。話によると、皆さんは十分話し合っているではないか」
 鹿が言った。
 しかし、鳩と猫と魚と犬は首を傾げて考えた。
「さっぱりわからないよ」
 鳩が言った。
「勿体ぶらないで言いたまえ」
 猫が言った。
「やれやれ、皆さんは何を話すかを話し合っていたじゃないか」
 鹿が言った。
 鳩と猫と魚と犬は一斉に手を叩き喜んだ。
「いやぁ、お恥ずかしいですな」
 犬が言った。
「それじゃあ皆の衆、何を話すのかを話し合うということでよろしいですかな?」
 鳩が言った。
「うむ」
 猫が言った。
「勿論だとも」
 魚が言った。
「それがよろしいかと」
 犬が言った。
「それでは私は急ぎがあるので」
 鹿がそう言い立ち去った。
 鳩と猫と魚と犬は日が暮れるまで話し合い、それは三日三晩続いたそうな。


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