床の上に仰向けで天井を眺めていると、何も掴めない空しい手が、昔海で溺れた事を思い出した。
　絞り出される空気に邪魔な水。
　下手に空気に満ちた陸よりは、絶望的で幾らかマシなのだろうとぼんやりと思った。
「メリー酷いじゃないか。首に指紋が残っているよ」
　そして此の後、青と紫と赤が境目も付けられない程執拗に絡み合う、彼女の白く細く冷たい手と同じ形をした痣が首に浮かぶのだ。
「嗚呼、メリー。疑心暗鬼に脅えて得るモノは何だい？　独善的な恋は赦されるけど、愛はそうはいかないものだよ」
　ひゅっと、息を潜める音がした。

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