カゾエウタ
ひとめ
ふため
みやこし
よめご
祖母はよく、数え歌を口ずさんでいた。
何か思い入れがあったのかも知れなかったし、只知っているから歌っていただけなのかも知れなかった。
幼い頃は飽きもせずに一緒になって歌い、宙に規則的に上がるお手玉が、時折街で見掛ける曲芸師にも勝っている気がして、祖母の様に軽やかに捌けないかと真似をしたり、食い入る様に見ていた。
休日の午後にも似た、ゆっくりとした時間が数え歌と共に其処には流れていた。
いつやの
むさし
ななやの
やつし
苑と言う名を俺に付けたのも祖母だった。
小さいけれど力持ちで、怒られると半端なく恐ろしく、とても優しい、心身共に強い人だった。
ここのや
とおや
一(ひィ)や
二(ふゥ)
三(みィ)や
四(よォ)
懐かしい数え歌を、口ずさんでみた。
五(いーつ)や
六(むウ)
七八(ななや)
九十(こーことお)
「懐かしい、唄だねぇ……」
擦れ違った老婆が、俺の顔も見ずに言った。
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