テニス馬鹿に囲まれて 1




「この間はどうたったんだ?」

「いきなりだな」


部室で着替えをしている時だった
この間とは跡部と飯を食ったことだろう
思考の過程を表現しないし、何を言いたかったのかすらわからないことが多々あるので国光にはもう少しコミュ力と表情筋が必要だと思う


「別に。普通に飯食って駄弁った」

「そうか…跡部に目をつけられると面倒だぞ」


テニスに関して跡部が手塚厨なのはよく知っている
試合中に名前叫んでるのも見た、若干引いた
国光が言うのだから相当だろう


「…たまには休め」

「すまんな。来週も予定ぎっしりだわ。部活来れそうにない」

「竜崎先生には?」

「断ってある」

「…そうか、授業はちゃんと出るんだぞ」

「おう、もうすぐテストだっけ?」

「二週間後だ」

「またノート借りてもいい?」

「ああ」


そんな、一等悲しそうな顔をしないでくれ
お前は何も悪くない、
オレ達は結局何もできない無力な餓鬼なんだよ
気づかないふりをして会話を続けるのにももう慣れたが。


「テスト面倒だなあ」

「お前の学力なら問題ないだろう」

「気分の問題だよ、真面目だな」

「?」

「あーなんでもねーよ」

「今度勉強会をすることになっている、来るか?」


部活にあまり出ていないし、平部員の俺は三年生の奴らでさえなんとなくでしか面識がない
国光なりの優しさを嬉しく思う


「日程が合えば。桃城と越前?なんか勉強苦手そうだよな、超オレの主観だけど」


扉を開けて不二と大石が入ってくる


「二人とも早いな」

「おー」

「芝浦、今日はレギュラーの方のメニューに出なよ。練習試合だって」

「いや、筋トレでいいって」

「君と試合したいんだけどな」


そんなにこにことした笑みを浮かべて見つめるな、
逆に怖いから
…あまり親しくはないはずなのだが、テニスで未知の存在かつ国光の友人のオレはレギュラー達の脳内で勝手に物凄いプレーヤーに昇格している


「国光とやったらいいんじゃね?」

「残念だな。」

「先に出ている」


国光は黙々と着替えて出ていってしまった
入れ替わる用に海堂や桃城、菊丸、河村と次々に入ってくる


「ちわーす!」

「大石! 待ってて言ったのにー」

「先に行ってると思ったんだ、ごめんな」


カップルか。
人が増えてだいぶ騒がしくなってきた、あ、越前だ


「今日は新開発の乾ドリンクを試してみようと思っている」

「どっから出たんだ乾 」

「芝浦先輩、いい加減試合してよ」

「断る」

「ちっ」

「ほら、もうすぐ部活始まる時間だぞ」


面倒見の良い大石に言われて、皆が部室から出ていく
相変わらず桃城と海堂は訳のわからんことで喧嘩しているし、河村は平和だしでカオスだがこんなに心地の良い空間はそうないだろう
もっと仲が良かったらなぁとは常々思う




「これから本日の部活動を開始する」


さて、隅の方にいようかな。


 

戻る

×