FREAK HERO | ナノ


まさに青天の霹靂。突如として姿を現れた災厄に、FREAK OUTは騒然としていた。


「何事だ」


館内に響き渡るサイレンを聴き付け、司令官一同は管轄部モニタールームへと駆け込んだ。

FREAK OUTで使われるサイレンには、幾つかの種類がある。
これらは緊急性、危険性に応じて振り分けられ、今し方鳴り響く音は最大レベル。人類避難区域内に於ける十怪、或いは、未観測にして未曾有のフリークスの出現が確認された場合に使われるパターンだ。


「御田市に超巨大フリークス出現!!間違いなく……観測史上最大サイズです!」

「馬鹿な!それ程のフリークスであれば、防衛システムが感知する筈だ!」


オペレーターの報告に対し、何かの間違いではないかと言い掛けた五日市は、口を半開きにしたまま固まった。モニターに映し出される光景を見て、何も言えなくなったのだ。


「これはこれは……」

「呵々!いや参った!よもやこれ程までとは」

「笑っている場合か、太刀川公!この大きさ……動き出せばどれ程の被害が出るか」


この大きさだ。思わず笑いたくもなるだろうと、太刀川は肩を竦めた。


モニターには、かの忌々しき悪徳の樹にも劣らぬ未知の超巨大生物が映されていた。

その姿を喩えるなら、濁った白い肉の筒だ。余りに巨大な為、その全貌は遠くのカメラからしか観測出来ず、細かな所までは見れないが、手足らしい物は見当たらず、胴体と一体化した頭部には巨大な口が付いているのみだ。

まるで深海生物の如きこの珍妙にして醜悪なフリークスが現れたのは、御田市内。FREAK OUT本部のすぐ近くだった。
もしやと古池が窓のブラインドを退けて見れば、ビルの合間に聳えるかのフリークスが視認出来た。先の地震も、この超巨大フリークスが現れた為だったかと古池が引き攣った笑みを浮かべる中、管轄部のオペレーターは現状分かる範疇の情報を司令官達に告げる。


「今現在、超巨大フリークスに動き無し。しかし……口腔内から大量のフリークスが放たれています」

「分からん!!この巨体に加え、中に大量のフリークスだぞ?!何故今の今まで侵入に気付かない!?」


海岸部の防衛システムや、市街地各地に設置された監視システムには、フリークスを探知する為にサーモグラフィーが搭載されている。

フリークスは人間の皮を被って擬態する為、見た目には区別が付かないが、体温によって識別が可能となっている。体内に蓄積されたエネルギーにより、フリークスは核周辺部分の温度が著しく高い。その為、各地の防衛・監視システムは一定以上の体温を持つ生物が接近すると自動的に攻撃、或いはFREAK OUTにアラートが届くよう設計されている。

また、個体によっては体重でも識別可能だ。巨大な体躯を持つフリークスは、その重量によって人との違いが判別出来る為、市街地各地には歩行者の重量を測定する装置が仕掛けられ、また熟練の能力者は歩き方や足音で擬態を見抜くという。

高度な擬態技術を持つフリークスは、体温を偽装したり、上手くシステムの穴を突いて来る為、百パーセントフリークスを捕捉する事は出来ない。しかし、これだけの巨体に加え、体内にフリークスを大量に隠していたというのに、今の今まで侵入に気付かないというのは到底信じ難い。

一体何処からどのように侵入したのだと頭を掻き毟る五日市の傍らで、神室は別のモニターにさっと目を走らせる。
超巨大フリークスの口から放たれたフリークスは、四方八方へ散っている。まずは其方の討伐と市民達の避難誘導が先決だ。


「配置は」

「本部待機チームが市街地防衛に散開。市街巡回に出ていた能力者達はそのまま各地で避難誘導及び戦闘。超巨大フリークスは最も距離が近い五日市隊が向かったのですが……」

「愚息に何かあったか!?」


五日市隊は、この能力者黄金期を担う世代の中でも評価の高い能力者達で構成された部隊だ。

”英雄”真峰徹雄率いる真峰隊にこそ劣るが、実力は十二分。彼等であれば、かの超巨大フリークスにも引けを取らない――そう思われていたのだが。


「……それが」

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