FREAK OUT | ナノ


能力者第一世代。後にそう呼ばれることとなった青少年数十名。セフィロト顕現後、帝都各地で覚醒を確認された彼等は、対フリークスへの対抗手段として徴兵され、防衛省庁舎へと集められた。

未だ第三次世界大戦の狂熱冷め遣らぬ防衛大臣の演説、先人として戦線に立っていた自衛隊員らからの激励。
それら他人事の言葉を聞きながら、日々の暮らしを穏やかに過ごし、まだ見ぬ将来を夢想していた子ども達の大多数は、死に絶えた眼で虚を眺めていた。


しかし、中には心の底から御国の為に尽くさんと眼を輝かせる者もいた。眼の前で食い殺された家族の復讐を果たさんと、フリークスへの殺意に身を焦がす者もいた。殺す相手が人間から化け物になっただけだと、とうに慣れきった生殺与奪の行為に何の感慨も抱かず、全てを享受する者もいた。

そして――自分は此処で成り上がっていくのだと野心に燃える者もいた。


「立て、軍生(グンショウ)!お前達が地べたを這っていいのは、犬の糞を喰う時だけだ!!」

「イエス・サー!!」


曾祖父に陸軍中将を持ち、その功により男爵位を授爵した勲功華族、軍生家。
彼はその軍生家現当主の庶子――妾の子だった。

正妻の子たる兄が病弱だったが為に引き取られたが、兄の病状回復に伴い鼻摘まみにされ、離れの隅に追い遣られた。


――未だ戦時中であれば、何処へなりとくれてやったものを。


実父も義母も腹違いの兄も、此方へ聴こえるように、そうぼやいていた。自分の面倒を押しつけられた侍女達も、名前も知らない使用人達も、きっと同じことを口にしていたのだろう。

だから、彼が能力者として覚醒した時は誰もが心から喜んだ。だが、誰よりもそれを喜んだのは他ならぬ彼自身だった。


能力に目覚めたことで、彼はただ自分を腐らせるだけの家からの脱却と、戦争が終わった世界で武勲を立て、成り上がる術を得たのだ。

千載一遇の好機。またとない僥倖。この機を逃してなるものかと、彼は誰よりも真摯に、必死に、懸命に、己を鍛え上げた。


「軍生くんは良く頑張るよねぇ」

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