FREAK OUT | ナノ
人に火を与えた神が、鷲に肝臓を啄まれ続ける罰を受ける話がある。
餓えや寒さを凌ぐ為に齎された火を、人が争いに用いたが為に、慈悲深き神は罰せられることになったそうだが、それも致し方ないと頷ける光景が其処にあった。
(なんだァ、もう終わりか)
再生限度を超え、骨まで焼け崩れたフリークスを眺めていた少年が、酷くつまらなそうに腰を上げる。
曰く、少し前に能力に目覚めたので試しに一匹フリークスを焼いてみようと試みたらしい。近所を歩き回り、ちょうど路地裏で食事に勤しんでいたそれを見付けた少年は、人喰いの化け物を戯れに焼いたと言う。
思っていたより簡単に死んでしまったので、こんなものかと拍子抜けしたらしいが、フリークスというのもピンキリであるらしいので、探せばもっと強い個体がいるだろうと彼は期待を込めた眼差しで此方を見遣った。
(ちょうどいい。あんたらFREAK OUTだろ。俺、見ての通り能力者だからよ、あんたらのとこに連れてってくれよ)
近隣住民からの通報を受けて駆け付けた当時の第三支部所員達は、この少年を引き入れていいものかと惑った。
少年が玩具のように焼き殺したのは≪蕾≫だ。それを彼は、積まれた廃材の上に座って、延々と焼き続け、絶命させた。その強さを以てしても拭いきれない脅威と狂気が、所員達を惑わせた。
人の為、国の為という高潔な理由で戦う者など多くはない。大半の人間は、致し方なくフリークスと戦っている。戦いを好む者、闘争を己のアイデンティティーとする者もいない訳ではないが、フリークスを焼く為にFREAK OUTを志す者など前代未聞だ。
果たして、この少年を戦場に引き入れることは正しいことなのか。世界の悉くが焼き尽くされる予感に脅かされながらも、人々は彼の力を求めた。
それが後に”放火狂”と呼ばれる男――唐丸忍の始まりだった。