FREAK OUT | ナノ


<緊急事態発生!緊急事態発生!!>


鳴り響くサイレン。点滅する赤いライト。その捲し立てるような音と光。加えて、管轄部から流される緊急警報が、FREAK OUT本部内に蜂の巣を突いたような騒ぎを齎す。


陽も沈み、今日という日をどうにか無事に食い繋ぐことが出来たと、人々が安堵し始めたこの時間に、狙い澄ましたかのようなこの騒ぎ。
あれは本当に、悪質な生き物だと神室が眉を顰める中。警報を聞いて執務室を飛び出してきたらしい、江ノ内と青柳が管轄部モニタールームに駆け込んできた。


「何事だ?!」

「フリークスです!!それも複数体……≪種≫から≪蕾≫が群れを成して出現!!」

「群れだと!?」


御田市内各地に設置された監視カメラの映像が無数に映し出される大型モニターを見遣り、江ノ内と青柳は一瞬、言葉を失った。


普段、フリークスの姿が確認出来るのは、複数のモニターの内、何れか。同時に映り込むことなど珍しく、多くても二つか三つ程度。

だのに、今は殆どのモニターにフリークスが映り込んでいて。しかも、中には一つの画面に十体以上視認出来るものもあって。御田市内はまさに地獄絵図。音声が無くとも人々が阿鼻叫喚する声が聴こえてくるような有り様と化していた。


「い……一度にこれだけのフリークスが押し寄せるなど」

「ラジネス来襲以来の規模の侵攻ではないか……」

「海を越えてくるフリークスの数があまりに多く、対岸防衛班では対処しきれません!大至急、応援を!!」

「既に十数体のフリークスが市街地に侵攻!!更に、奴等の進軍に便乗し、潜伏中のフリークス達も動き始めています!!」

「御田市内各地でフリークス出現!!付近の能力者達が討伐に向かっていますが、数が足りません!!」


対岸に構えられた防衛基地は、怒濤の勢いで押し寄せるフリークスを捌き切れず、既に半壊状態。取り零したフリークスは御田市内の各地に散開し、現場付近の能力者達が対応しているが、討伐が間に合っていない状況で。市民の避難誘導さえ侭ならず、ひっきりなしにフリークスを相手取っているのが現状だ。

このままでは、崩れた対岸防衛線を越え、フリークスが市街に雪崩れ込み、瞬く間に御田は侵略される。そうなれば、守りの薄い人類避難区域の中心にまで魔の手が及ぶことになるだろう。

それだけは、それだけは避けねばなるまいと、江ノ内達は未だ混迷した頭を必死に回転させ、狼狽する職員一同に指示を飛ばした。


「対岸防衛所にはジーニアスを向かわせろ!!あそこが崩されれば、更なる侵攻を許すことになる!!」

「市街地には、支部から応援を呼べ!!此処からなら、嘉賀崎が近いだろう!!至急、慈島支部長に連絡を……」

「それが……嘉賀崎にも現在、フリークスが複数体出現し、第四支部所員総動員で討伐に向っているとのことで……」

「チッ!二手に分かれての同時侵攻か……。ならば如月から――」

「如月市にもフリークス出現!!現在、唐丸第三支部長率いる討伐隊が、対岸線防衛戦に突入!!」

「馬鹿な!如月までもが侵攻されているだと!?」


あろうことか、侵攻を受けているのは御田のみでは無かった。

海に隣している嘉賀崎、如月も、御田とほぼ同時刻に大量のフリークスが出現し、御田に応援を寄越せる状態では無い。寧ろ、此方に人手を寄越してくれとの要請まで来ている始末だ。

あちらも任せておける状態ではない。しかし、本部の人員を割くことも出来そうにない。となれば、残った支部に期待するしかない。


「他の支部は!!」

「第一支部、第二支部は出動可能との連絡が入りました!!」

「そうか!」

「第一支部は嘉賀崎!第二支部は此方のサポートに回るよう伝達!!瞬間移動能力を持つ職員を迎えに行かせろ!!」

「はっ!」


第一・第二支部のある伊稲と上野雀は、フリークスの侵攻を受けていないらしい。
万が一に備え、一定の戦力は残しておきたいので、少数精鋭を向かわせるとのことだが、猫の手も借りたい現状だ。一人でも二人でも戦力が増えるのは有り難い。

唐丸率いる第三支部は対岸で侵攻を食い止められているようなので、人手は嘉賀崎と御田に回し、民間救助とフリークス討伐を行ってもらうとして。
まだ使える駒があるのなら、それも出しておかなければ、より可及的な事態の収束へと至らないであろう。

となれば、残る最後の一つにも声を掛けて然るべきであろうと江ノ内はオペレーターに問いかけた。


「第五支部はどうした?!あそこは対岸から離れている!!未だ侵攻を受けていないんじゃないのか!?」


急かされるまでもなく、既に第五支部にも連絡は入れている。

だが、普段恐ろしく早く繋がる電話が、何故か今日に限ってまるで繋がらず。一向にあちらが応答してくれないのだ。


まさか、という予感が喉の奥からせり上がる。

同時に、今の騒ぎでさえ序曲に過ぎないというような得体の知れない不安が圧し掛かってきて。オペレーター達は祈るように、第五支部からの応答を待った。だが――。


「だ、第五支部、栄枝所長より連絡……」


祈りは天に届くことなく手折られる。

どれだけ乞えど願えど、決定付けられた運命を覆すことは出来ないのだと言うように。現実は非情の刃を突き立てる。


「吾丹場市内に、フリークスの大群及び、十怪の出現を確認……。大至急、吾丹場へ応援をとの要請です…………」


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