FREAK OUT | ナノ


五十年前。第三次世界大戦から復興を遂げ、今度こそ恒久の平和が訪れることを誰もが望んでいたこの国――帝京国に突如、巨大な樹が生えた。

それは形状故に樹と呼ばれたが、その正体は超高密度のエネルギー体であった。

出現と共に地上の建造物を根こそぎ蹴散らし、周囲を焦土に変えたその樹は瞬く間に枝を広げ、無数の実をつけた。その実の中から生まれ落ちたのが、少女達の前にいる異形の獣――フリークスであった。


「ひひ、ヒ。お前らは、巣でゆぅっくり、食ってやるぞ。そのため、ニ、運転手なった。ヒヒ、楽しみ、ダ。ひっひ」


後に、悪徳の樹―クリフォト―と名付けられた樹から生まれたフリークス達は、次々に人間を襲い、その血肉を喰らった。

この脅威に対し、国は二つに割れた国土の内、半分を放棄する事を決定。クリフォトが顕現した北方はフリークスの巣窟・侵略区域となり、残る土地が人類避難区域となった。


国は、フリークスを此方に侵入させまいと様々な手を打っているが、侵攻は止まる事無く、彼等は餌となる人間を求め、侵略区域から海を越えてやって来る。襲った人間の皮を被って擬態し、機を窺い、フリークスは食欲の赴くまま、人間を貪る。

故に、この国に住まう誰もがあの樹を忌み嫌うのだ。

次はお前が食われる番だと語りかけてくるように、何処に居ても眼に映るあの巨木を憎悪しながら、人々は眼を逸らし、自分は大丈夫だと言い聞かせながら生きてきた。そうする事しか出来なかったのだ。警察も自衛隊も歯が立たない相手に、力無き者が出来ることは祈ることだけだ。

フリークスに眼を付けられませんように。明日も生きていられますように。
そんな願いを吹き飛ばすように、フリークスは牙を剥く。


「もう駄目だ……」

「神様……神様……」


これから自分達は、フリークスの巣に運ばれ、其処で無惨に食い荒らされて死ぬのだろう。逃れようのない運命に誰もが絶望し、震える手を合わせて必死に祈っている中、少女だけは上機嫌でハンドルを切るフリークスを睨み付けていた。ふざけるな。ふざけるな。ふざけるな。どうして自分達が死ななければならないのか、と

怒りと殺意が込められたその視線に気が付いたらしい。フリークスは再び頭を後ろに回し、ぎょろぎょろと焦点の定まらない眼で少女を捉えた。


「なん、ダぁお前。なな、ナマイキな顔してるなぁああ」


黄色く濁った眼に見つめられ、少女の頬に冷や汗が伝う。

その目付きが気に入らないと言われただけなら、未だ気丈で居られた。だが、此方を見据えたフリークスが嗜虐の愉悦に顔を歪めるのを目の当たりにして、少女は慄いてしまった。悪寒とは、まさにこの事だろう。指先から体温が抜け落ちるような感覚に少女が身を強張らせると、フリークスは愉しそうにに肩を震わせ嗤った。


「おま、お前、みたいなのは……ヒッヒ、股の間から食うのが、ウマいんだ。歯で削って、触手で掻き出すと、痛くて泣き喚く。オレは、ソレが好きなんだ。ヒヒヒ、ヘッヒヒヒヒヒ!!」


少女を嘗め回すように眺めると、フリークスはアクセルを踏み込み、更にバスを加速させた。

このまま、海まで運ばれていくのを震えて待つしかないのか。抵抗する気力も失くし、乗客達は何時しか祈ることさえ放棄しようとしていたが――彼等にも、希望は残されていた。


「……うぉ?」

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