病手線ゲーム | ナノ
敗者の泥にまみれて、死を美しく感じたとしても、生きなければならない。病手のペナルティはあれから何年も経った今でも俺を生に縛り付けていた。
淹れたての珈琲が開いた窓から高層ビル群の合間へ流れていく。
例えば俺が少しでもこの柵の向こうへ行ったなら、そこには薔薇色に見えた死の世界が待っているのだろう。
しかし、今は行けない。その可能性は全て、あのヤマダとか言う男が持っていってしまった。
「馬鹿な男だ」
そう声に出しても、震えていてはしょうがない。だが、あの場所でまだ彼が他人の死を食い荒らしているのならば、憎むより哀れむべきなんだろう。
本当に死にたいと思ってるのは誰なのか、未だに答えが出ていないならば。これが生者の歩き方だと、教えてくれた彼に俺はもう会えないけれど、いつか来る最期の時に身を震わせながら、それでも終わりは笑ってやろう。
恐怖にひきつった笑顔でいい、八つ当たりばかりで、本心を永遠に知らずにいたあの男に感謝の言葉を!
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さのつきさんから病手完結祝いにいただきました、病手二次SS@です。
本編でまるで書かれていない参加者その後の一つって感じですごく引き込まれます。
病手の話は完結したものではあれど、まだ広げようがあるんだなぁと感じさせていただきました。
さのつきさん、ありがとうございました!