モノツキ | ナノ
自分を含めた世界の全てと、一人の少女。
そのどちらかを選べと問われ、何人が後者を選ぶことが出来るだろう。
<このコミュニティに属する、全ての同志諸君に告ぐ>
この、小さくも確かな箱庭の世界と、此処に生きる二千万人。
その未来と発展と繁栄と、過去と文化と歴史を犠牲にしてまで、少女を救う価値は何処にあるのか。
<時は来た。今こそ、偽りの神を討ち、この世界を再構築するのだ>
如何に少女が無辜であれど、秤に乗せるものがあまりに違い過ぎて、人は正しい眼を瞑り、世界の為にと少女を贄にしてしまうだろう。
それが当たり前、それが普通だと屁理屈を捏ねながら、自分を正当化して、良心の呵責なんか無かったことにして。
皆仲良く手と手を繋ぎ、世界でたった一人の犠牲者となる哀れな少女を、仕方ないからなんて言いながら、送り出してしまうだろう。
嗚呼、全く!なんとみっともないことか!!正論なんてもので醜く着飾ったエゴイスト共が!
<この計画の共謀者には、何も与えられることはない>
<富も名誉も栄光も。何一つとして与えられることはない>
なんて嘆いてみたが、元来、人というのは実に愚かで、みっともない生き物なのだ。
だから奴等のような悪趣味極まれる支配者に飼われ、いいように弄ばれてきたのだと、一体何人が気付いていることか。
騒乱の渦に飲まれた群衆を眺めながら、俺は思う。今こそ、人と世界が変わる時なのだ、と。
<だが、諸君らは救世の証として、確かなものを得るだろう>
<世界と、己と、たった一人の少女の為に、全てを賭すことを決意した崇高なる同志諸君。君達はこの革命戦争を経て、人としての自由、人としての誇り、人としての尊厳を得るだろう>
さぁ、黄昏ている暇はない。
前へ倣えの烏合の衆から駆け出して、高らかに反旗を翻すのだ。
<今一度、告げる>
目指すは、夜明け。世界を呑み込む闇を打ち払い、気高き人の意志を灯せ。
<時は来た。今こそ、偽りの神を討ち、この世界を再構築するのだ>
――ラグナ録 オンライン
――ログアウトしますか?
――――……はい。