「…痛いなぁ、まったくシズちゃんったら相変わらず加減って言葉を知らないよね?」 ゆっくりと上半身を起こしながら切れてしまった唇の端を舌でぺろりと舐め取った。もうすっかり馴染みになってしまった血の味がして心の中で密かに舌打ちをした。 「てめぇにだけは言われたくないな」 手に持っていたはずのナイフは殴られた時にどこかに飛ばされてしまったようで、完全に丸腰になっていた。このままだとやられる一方だった。 地面に座ったまま、さてどうしようかと考えを巡らせてすぐに妙案を思いついた。今日は一段と頭が冴えているようだった。 「わかったよ、悪かった。降参だ」 謝罪をしながら大げさに両手を顔の横まであげて、これ以上戦う意志はないことを示した。シズちゃんは表情をピクリとも変えることなくじっとこちらを見つめていた。 どうやら俺の行動を疑っているようだった。こんなことであっさり油断するほど馬鹿ではない。 「シズちゃんが怒るのもわかるよ?けどさぁ、許してもらえないかな。お礼にいいことしてあげるからさ」 「いいことって…どうせまた変なことでも考えてんだろうが」 「ぴんぽーん、さっすが!いやぁ嬉しいよ、なんでもお見通しなぐらい俺のこと理解してくれてるなんて!」 わざと冗談っぽく明るい口調で答えたのだが、そんなことには惑わされずに睨み続けていた。サングラスのせいで目元までははっきり見えないけれど、瞳は鋭く光っているに違いない。 そんなシズちゃんの表情を変えたかった。ただそれだけだった。 両手を地べたにつけて数歩這うようにして進んで、足元にやっと辿りついたところで告げた。 「ねぇ俺がフェラしてあげるから、許してくんない?」 「な…ッ!?なにを言ってやが……」 予想以上にシズちゃんが怯んでいる隙に素早くベルトに手を伸ばして、あっさりとズボンを下ろすことに成功した。下着の上からそれを右手でぎゅっと握りこむと身動きがぴたっと止まった。 自分で言うのもなんだが、おれはこういうことには慣れていた。シズちゃんとも数回程したことがある。 はじめはただの好奇心からだったのだが、今では楽しくて癖になりそうなぐらいのめりこんでいた。 「おい!ここをどこだと…!」 「あれ、気がつかなかった?知っててついてきてたのかと思ってたけど…そこの道から一歩出るとホテル街だよ」 本気で怒鳴り声をあげかけたシズちゃんに、人差し指を口の前につきだして静かにするよう促した後そのまま目の前の道を指差した。 俺たち二人が立っている場所は建物と建物の間の細い路地で、通りからはちょうど影になるかのようにゴミ箱まで立っていてそういうことをするには絶好の場所だった。 「自分達のことしか見えないカップルぐらしか通らないからちょうどいいだろ?もし見られてもこういう場所だから察してくれるよ」 話をしながらいたずらに何度かそこを撫で回して挑発してみせた。もちろん擦りながらポイントの部分は押さえているので徐々に大きくなりかけていた。 「く…ッ…」 悔しそうに顔を歪めながらも抵抗はしなかった。できなかったというほうが正しいかもしれない。 大事な部分をしっかりと押さえられていては、流石のシズちゃんも手出しできないようだった。かわいそうなことをするつもりは俺にはないのに警戒しすぎだよと心の中で思った。 やがて下着にも手を掛けて一気に膝のあたりまで下ろすと、勃ちあがりかけたものが露わになった。 結構大きい部類に入るそれを両手で丁寧に握りこんで、おれは顔を上げた。 「やだなぁシズちゃん、そんなによかったの?…先っぽがちょっと濡れてるよ」 「うるさいっ」 最高の笑みを浮かべながら尋ねると、急に恥ずかしそうにうろたえ始めた。そんなシズちゃんの姿を見ているだけで気分が昂ぶってしょうがなかった。 こんな表情をさせられるのはおれだけなんだと思うと、嬉しくてしょうがなかった。歪んだ行為なのだとわかってはいるけれどやめられない。どんどん深みにはまっていくのだ。 「こんなの気にしなくていいよ、おれが全部舐めてあげるからさ」 口を大きく開けるとシズちゃんのものに思いっきりむしゃぶりついた。サイズがすごくて根元まで咥えることはできなかったけれど、喉奥までめいいっぱい飲みこんだ。 「ん…っ…」 行為に専念する為に瞳を閉じて感覚を研ぎ澄ました。わずかな震えも逃さず感じ取ろうと必死だった。 唇で吸いこみながら舌全体で何度もものを往復し撫であげた。動きは緩やかだったがその分念入りに蠢かせて相手の快楽を引き出すような動きをした。 数分は同じ動きを繰り返していたけれど、やがてそれから口を離すとほっとしたような息遣いが聞こえた。 「まだ終わりなわけないだろ?」 直後根元の部分を横から咥えて唇と唇の間で挟むと、そのまま先端の方向に向かって顔を移動させた。 ハーモニカを吹くように左右を行ったり来たりして棒部分に刺激を与えた。 すると腰をビクッと震わせて前に突き出すような姿勢になって、俺の心はますます満たされた。 シズちゃんは感度がいいのかいつも面白い反応ばかりをしてくれていた。力では絶対に勝てないけれど、こういうところで優位に立てるからいつまでたってもやめられないのだ。 「じゃあラストスパートといこうか…」 「しゃべってないで…は、やくしろッ!」 掠れた声で急かされて、もうおれも堪らなかった。再び唇でそれを覆った後、吸い込むようにすぼめてから前後に動きはじめた。 シズちゃんの両足をがっちりと手で掴んで支えて、懸命に頭だけを振り乱して最高の刺激を与えた。 あまりの動きに歯が立って当たりそうではあったが、逆にそれがいいこともあるので構わずに続けた。 「…っ、く…!」 一瞬だけ下から突き上げるように喉奥をぐっと圧迫され苦しかったけれど、それが合図のようだった。 熱い迸りが起こり液体が注がれてきたので舌で受け止めながら中身を飲みこんだ。 「ん……んく、っ、んぅ…」 濃い味のねばねばしたものが喉を通る度に絡まって残り正直あまり好きではない感触だったが、全部を飲み干すことができた。 後はシズちゃん自身に残留している汁を舌ですくい取り、綺麗にしてから顔を離した。 「は…っ、いっぱい出たじゃん。たまってたんだねぇ」 最後の一滴まで絞り取るように唇をぺろりと舐めると、さっき切れたままだった部分からまだ血が流れていたようで鉄の味が広がっていった。 「て、めぇ…臨也……!」 「じゃあね」 数秒ほど放心していたのでその間にさっと立ちあがり、不敵に笑って見せてすぐにその場を後にした。 叫ぶような声はだんだんと遠ざかっていったが走るのはやめなかった。 息が切れているから心臓がドクンドクンと高鳴っているのか、実はそうではないのかわからなかったから。 text top |