「なあ、振られたって何かあったのか?」 「俺のこと?」 「そうだ」 「相手に彼女ができたんだよ。まあ上手くいってるかは、わかんないけどぉ」 「なんだじゃあ浮気されたってことか」 「違うよ、俺が身を引いてあげようかなってねえ、あははっ」 日本酒の瓶の中身はもうないので、臨也には水を飲ませていた。冷蔵庫を開けたら大量のペットボトルに入っている水があったので、それをコップに注いで渡してやっている。昔バーテンダーの仕事もしていたし、酔っぱらった人間を介抱するのは慣れていた。 世話を焼くのはすべて、臨也の好きな相手とやらの話を聞く為だ。その為に酔わせたのだから。 「手前はそれでいいのか?まあ暴力振るう奴なんて最低だし、さっさと別れろ」 「あれえ、シズひゃん、心配しれくれてる?」 「いいから飲めよ」 酔っぱらっている臨也に対してなら、普段よりも冷静に話ができた。しかし別れろ、と言ってしまったところで言い過ぎたことに気づく。 長年憎んでいる相手がとんでもない男に引っ掛かっているというのなら、喜ぶのが普通だろう。でも俺はそんな考えは浮かばなかったのだ。どうしてか。 「なあ好きって……どう、なんだ?」 自分でもよくわからない質問だとは思ったのだが、好きということ事態に悩んでいたので間違ってはいない。 「誰かを好きになると、手前は何か変わったか?」 「んー……?」 思い出すのは子供の時に憧れた初恋の女性のことだ。だが同時にトラウマでもあったので、詳細に覚えてはいない。好きという気持ちは、どんなものだったのか思い出したかった。 「さあ?」 「そうか」 やっぱり酔っている人間相手に真面目な話なんてするべきではない、と思ったが臨也が続けた。 「俺は普通じゃないから、わかんない」 「普通じゃないって、暴力振るわれて好きになったからか?」 「シズちゃんが考えてるほど、生易しいものじゃないからねえ。あーぐらぐらする」 急に呻りながら大量に水を飲み干した後、さらっと告げられる。生易しいものじゃない、と。どういう意味かは理解できなかったが、知らない方がいいのかもしれない。 臨也は学生時代からヤクザとか怪しい連中と関わっていたし、情報屋として活動している現在はもっと危険なことをしている。裏の世界というものを多少は知っているとはいえ、深く関わりたくはなかった。 「でも手前なら、暴力振るわないように約束させたり脅すぐらいしてそうだけどな。遊ばれてた、っていうのも金とか偉い奴だからとか関係してるのか?」 「脅されてたのは、俺だよ」 「え?」 その時臨也が目を細めて、きっぱりと言った。頬を染めてやけに子供っぽく微笑んでいたが、言っていることとのギャップが激しくて息をのむ。 「でも彼女作ったってことはぁ、もういいんだよね」 「いいって」 「俺なんかいらないんでしょ?ねえそうだよね、シズちゃん」 「手前……」 焦点は合っていなかったが、臨也は真っ直ぐにこっちを見ていた。まるで相手を俺に重ねているかのように。酔っている本人には、別のものが見えているのかもしれない。 どうしてか手のひらにじんわりと汗を掻いていて、口ごもる。なにを言えばいいか思いつかなかった。 「折角好きになったのに。十年かけてたっぷり調教されたのになあ」 「調教って、厭らしい言い方すんな」 「本当のことだしぃー?なんにも知らない癖にさあ」 きっとわざとなのだろうが、調教と言われてふしだらな想像をしてしまう。そんなバカなことなんてないだろうと、頭に浮かびかけたものを打ち消す。 臨也は茶化して言っているだけだ。だが生意気なこいつを十年かけて素直にさせたというのなら、相当根性があるのだろう。俺は顔を合わせただけでキレていたので、真逆だと思う。 「でもさあ、一つだけ問題があってさあ」 「なんだよ」 乱暴にグラスを机の上に置いて、なぜか臨也が顔を寄せてくる。酒の香りがしたが、嫌いな匂いではなかった。 「なんにも、ないんだよねえ」 「……あ?」 「この十年間あいつのことだけ考えてきて、情報屋になったのもいつか復讐してやるとかそういうことばっかりでさあ。まさか捨てられるとは思わなかったんだよねえ。本気で好きになってそれが長く続くなんて信じられないぐらいだったし、最低な奴だったけど好きってことだけははっきり言っててさあ。ほんとむかつくんだけど」 一気に捲し立てられて、唖然とする。十年間も想い続けるなんてどんな気持ちなのか想像できないが、本気なことだけは理解できた。 同時に胸の奥がむかむかした。どうしてか、わからないけれど。 「俺どうしたらいいのか、わかんない。あいつがいなくなって、どう生きていけばいいのかぜーんぜんわかんないんだあ」 「ッ!?」 その瞬間衝撃を受ける。一気にこれまでのことが浮かんで、苛立ってしまう。 俺は臨也に毎日喧嘩を吹っかけられたり、面倒なことに巻き込まれてそのことしか頭になかった。警察に連れて行かれたこともあるし、大怪我をしたり家族にも迷惑をかけてきた。それらは全部臨也のせいだったのに、本人は静雄のことなんて見ていなかったのだ。 こっちはずっと苛立ち、暴力を振るってしまい、悩んでいたというのに。臨也は知らない奴のことばかり考えていた。それが許せなかった。 さすがに殴っていいだろう、と拳を握りしめて睨みつける。しかし驚きで全身が震えた。だって。 「シズちゃん、っ……どうしたら、いいかなあ」 「臨也……」 いつの間にか臨也の目の端に涙が滲みぽろぽろと溢れていた。弱々しい泣き声交じりの声で、助けを求めてきたのだ。 頭を鈍器で殴られたかのような衝撃を受けた。相手が長年の仇敵だと本人も気づいているだろうに、縋ってくるなんて相当切羽詰まっているのだろう。演技だなんて思えなかった。 今の臨也では、暴力を振るった静雄にあっさりと捕まってしまうだろう。ナイフを振りかざす気力も、睨みつけてくる気迫もない。想像もしていなかった弱い部分を見せられて、動揺しないわけがない。 どこかで人間じゃない、と思い込んでいたのかもしれない。 力がコントロールできずに怪我をさせても、次の日には殺意を向けてきたし、人として最低なことを平気でできる奴だった。それが見る影もない。 ただの人だと知って、涙を見せられて、胸の辺りがあたたかくなるのを感じた。これまでは虚勢を張っていたのかと思うと、健気ではないかと考えてしまって。 今度こそ本気で俺のことを真正面から見てくれたら、どんなことになるのだろう。そう思ったら自然に告げていた。 「やることねえなら、俺とつきあわないか?」 「え、っ……?」 「ああ、いやつきあうっつうか……俺もその好きとかそういう感情がよくわかんねえし、あ、あれだ。失恋して弱ってんだから、悲しい気持ちはよくわかるし慰めることぐらいはできるから、その」 自分で言ったことだが、驚いた。すんなりとつきあうという言葉が出たし、下手な言い訳もし始めて必死なんだなと思った。 これが好きという気持ちなのかは、まだよくわからない。でも間違いなく臨也に興味は沸いたし、一緒に過ごしてみたかったのだ。 失恋なんてしていないのに、同じだからと嘘をついて近寄り、気持ちを共有したかった。少しでも、俺のことを見て欲しかった。弱りきっている臨也に。 「本気?」 「おう」 「やめときなよ。きっと大変なことになる」 「んなことぐらい知ってる」 目を見開いてびっくりしていた臨也が、目を細めて諭すようにしゃべる。しかし引くつもりはなかった。とっくに俺は臨也に巻き込まれていたし、脅し文句でやめるほど軽い気持ちではない。 臨也が好き、なのかもしれない。これまでの憎い気持ちがどうでもよくなるぐらいには、魅かれている。 確かめたかった。自分がどう思っているか。それが臨也と過ごしてわかるのなら、知りたかった。 「寂しいんだね、シズちゃん」 「それは手前だろ。ほら涙拭けよ」 「ありがとう」 完全に臨也は勘違いした。振られて俺が寂しがっているから、それを埋める為に言っているのだと。それでもよかった。 ポケットからくしゃくしゃのハンカチを取り出して渡してやる。煙草臭いと文句を言いながら、そっと涙を拭った。そして言った。 「友達ってことでいいのかな?」 「え……」 「それならいいよ。変な気分だけどさあ」 俺は友達になるつもりはなかったのだが、臨也が望むのならしょうがないと思った。いままで憎み合ってきたのに、いきなり友達というのも随分おかしい話だ。 了承してくれるのなら、それでよかった。だから大きく頷く。 「酔ってるからって、忘れんじゃねえぞ」 「これでも記憶力はある方だけど?」 呂律が回らなかったはずなのに、いつのまにかしっかりとしゃべっていた。少し酔いが落ち着いたのかもしれない。 「じゃあ乾杯しよっか?」 「乾杯?」 「失恋したのを祝って」 「バカか……酔っ払いが」 「えー面白いと思ったのになあ」 ケラケラ楽しそうに笑う臨也を見ながら、これからのことを期待した。他の奴じゃなくて、いつか俺の方を見て欲しいと心から願って。 * * * 「折原って、手前のことだったのか」 「……っ、く、おりはら、いざやだよ」 あまりにも間抜けなことを尋ねられて、笑ってしまう。名前も知らずに追いかけてきたなんて、相当だ。ついでに名前を教えてやる。 「助けたわけじゃねえことぐらい、わかるよなあ?俺は手前に恨みがあるんだ。わざとトラックで轢いたんだろうが、ああッ!?」 「はぁ、っ、は……はな、せよ」 こっちの状態なんかお構いなしに手で首元を掴まれて、呻き声が漏れる。この男には、俺を潰すことしか見えていない。そう思ったのだが。 「さっきの奴、言ってたよな?恨みがあるなら、突っこんでいいってよお」 「え、っ……なに……っ、ふぁあっ!?」 突然口にしたのは、とんでもないことだった。驚いていると、バイブをおもいっきり引き抜かれて快感が一時的におさまる。肩で息をしながら、恐る恐る見あげた。 そして息をのむ。さっきまでよりも冷たく、表情が読めない顔をしていたからだ。なぜかぞっとした。 「うら、み……って」 「でも勘違いすんじゃねえぞ。さっきの奴らとは違う。俺は……そうだ」 「っ、あ!?」 「好きだ。好きだから、突っこむ」 「……は、あ?」 あまりにも暴論すぎる主張に、唖然とした。しかも言葉に一切気持ちはこもっていない。 おもいっきり笑ってやるところだが、あまりにも真剣だったのでバカにできなかった。ただの言い訳にすぎないのに、突っこみたいだけなのに、好きと嘘をつくなんて。 どうせ偽るなら、もっとマシな方法がある。どうして好きだなんて言ったのか、理解できなかった。 「すき、って」 「いいか、俺はお前が好きだ。臨也」 人の名前をさっきまで全部知らなかった癖に、一体何を言っているのだろうか。息をつくのが精一杯でまともに返せないでいると、いきなりズボンと下着を目の前で脱ぎ始めた。 残念ながら、まだ全身に力は入らない。どんなに頑張っても無駄なら、耐えることしかできないだろう。さっきみたいに。 ただし今度は誰も助けに来てくれない。だってこの学校に彼を一人で止められるような人間は居ないのだから。 「抵抗しねえのか?」 「だって、はぁ……ちから、はいんない、し」 「じゃあ合意ってことだよな?俺はちゃんと手前のことが好きだし、レイプじゃねえ」 「ちがう、って、それは……っ、あ!ぁっ、やっぱ、りま……っ」 顕わになったシズちゃんの性器は、しっかりと勃起していた。そのことに驚いたが、すぐさまローションまみれの入口に押し当てられて緊張する。 今度は玩具ではなく、本物なのだ。 懸命に息を吐きだしていると、腰を掴まれてぐっと押されてしまう。そしてじわじわと性器が侵入してくる。 「んぁ、っ……く、ぅ、んっ、いや、だぁッ!」 「狭いな。おい力抜けよ」 「はっ、はぁ、むり……むり、だからぁ、っ、出て行けよ!!」 思っていた以上にペニスは太く硬くて、強引に捻じ込まれてもすんなりと入ることはなかった。少しだけ入れられたが、それ以上はローションの滑りも効かず奥へと進みそうにない。 無理だ、無理なんだと瞳で訴える。しかし通じるわけがなかった。そもそも、おかしかったのだ。 平和島静雄は。 「しょうがねえな」 「はぁ……っ」 従ってくれるとは思っていなかったが、突然性器が引き抜かれて出て行く。中を擦る異物が取り除かれて、ほっと息をついた。 これでようやく解放される、と本気で思っていると。次の瞬間信じられないことが起こった。 「んなわけねえだろうが」 「ッ、え、あっ!?んぁ、ふっ、ぁ、あぁ……!!」 確かに一度ペニスは体から出て行った。しかしなぜか、またあっさりと入れられてしまったのだ。まるで弄ばれたみたいに。 終わったことに安堵していたので、余計な力も多分かかっていなかったようだ。勢いもついていたのかもしれない。ぐちゅ、と音をさせながら最奥まで入ってきたのだ。 頭を振り乱して叫び、懸命に逃れようとする。でも中途半端な吐息しか室内に響き渡らず、何もできなかった。 「びっくりしたか?ちんこ引きちぎられるかと思ったじゃねえか」 「ぁ、っあー……んぁ、はっ、うぅ、く、ひど、い」 「酷い?そんなことねえだろう。トラックで轢き殺そうとしたことに比べたら、マシだ。それに俺はお前のことが好きで、セックスしてるんだぞ」 話は通じていなかった。意味もわからない。本気で怖いと思った。 不敵な笑みを浮かべながら腰を揺らし始める。まだ半分ぐらいしか受け入れていなかったのに、前後に揺すぶられると勢いで捻じ込まれていく。 「やめろ、っ、もうやめ……っ、はぁ、んぅ、く」 「すげえ顔だな。殺気と色気が混ざってるみたいで、興奮する」 「だ、からぁ……やめろ、って、シズちゃ、っ……ん!」 「ん?シズちゃん?」 その時不意に口走ってしまったことに、自分で動揺してしまう。しまった、失言だったと唇を噛んだ。意識が朦朧としていたので、おもわず言ってしまった。 俺は以前から知っていた。平和島静雄という男の事を。 事前に調べていて、愛称までつけていたぐらいだ。それがシズちゃん、という呼び方だった。本当は言うつもりなんてなかったのに、今更後には引けない。 「俺のことか、そりゃあ」 「はぁ、っ……そう、だよ。君は、シズちゃん、だ」 「面白えな、手前」 行為の手が止まったので、息を吐き出して精一杯睨みつける。ここまでくると、意地だった。負けられない。 こんなとこでいきなり負けてしまうわけにはいかなかった。高校生活二日目にして、すべてを壊されてしまうなんて。 俺には俺の目指す場所があったし、楽しみたい。その為にはどうしたらいいか、と必死に思考を巡らそうとして。 「腹立つが、俺はその呼び方嫌いじゃねえな」 「ッ、あ!?ふぁ、っ、あ……やめ、ろって!っ、うぅ、あ……へた、くそ!!」 「下手で悪かったな。俺だってはじめてなんだよ。まさか男で童貞捨てちまうなんてよお」 「は、ははっ、それは可哀そうだねえ。男で、っ……うぁ、あ!はげし、っ、や、めろ!」 急に律動が再会して、体の内がジンと痺れた。懸命に歯を食いしばって、自分を保とうとする。平和島静雄に、シズちゃんなんかに負けられない。 こんなにも自分勝手で、凶暴な男なんかのせいで、狂わされたくなかった。 童貞だと聞いて、不敵笑みを浮かべてバカにしてやったけど、途中で遮られる。ガンガンと真下から突きあげられて、涙が滲む。 「手前だって男とするのはじめてなんだろう?」 「そう、っ……だよ、さいて、ぇ、ッ、あ、く」 「根性あるじゃねえか。気に入った」 「んぁ、あ、く……うぅ、っ、あ、なに、が」 声を絞り出して話していたが、意外にも俺はもつかもしれないと思う。複数の男達にレイプされそうになり、バイブで弄られ無様な所を晒してしまった。 だが一度は折れかけた心が、シズちゃんを前にして戻ってきたのだ。こいつにだけは負けられない。屈してたまるか、という強さだ。 薬で朦朧としていた意識も、本当はあられもない声をあげてしまいそうな快感も。すべてはねのけて抗おうとする自分に、驚いた。やはりこの男は普通じゃない。 俺にとって平和島静雄は、これまで会った人間の中でも少しだけ他と意味が違う。 笑顔を浮かべて顔色を窺い取り入る必要も無い。苛立ちや腹立たしさをすべてぶつけてもいい、唯一の相手だ。 一方的にレイプされているにも関わらず、歓喜した。こんな相手に出会えたことに感謝すると。 何があってもこいつだけは、どんな手段を使ってでも殺す。 だがそんな俺の決意なんて一切知らない男は、平然と言った。 「そのうち、俺なしじゃいられないぐらいセックスしてエロい体にしてやりてえな」 「な……っ、なにを、いって」 「気に入った、好きだ、恋っていうのはこういう気持ちのことを言うのか」 口を半開きにして息を吐き出しながら、呆然とする。眩暈がした。 己の欲望だけを宣言し、それをあろうことか恋心などと間違えている。目の前の化け物の考えていることが、俺には理解できない。 動揺していると、目の前に黒い影が落ちた。驚いてビクンと肩が震えたが遅い。 「っ、んぅ!?ん、ふ……く」 おもわず瞳を閉じたが、柔らかいものが押し当てられて強引に唇を開かされた。どうしてこんなことをするんだ、と叫びたいのに声は出せない。しっかりと塞がれて鼻で息をしている。 すぐにやたら熱い舌が絡められて、体の奥が鈍く疼いた。薬のせいだろうが、こんなわけのわからない男相手に、と悔しくなる。 「あっ、んぁ、ぐっ……や、めろ!」 「舌噛んだのかよ。やってくれるじゃねえか手前」 これ以上口内を蹂躙されるのが嫌で、舌をおもいっきり噛んでやった。口内に鉄の味が広がったが、離れたシズちゃんは平然と笑っている。 トラックに轢かれても歩ける男だ。痛覚が無いのではないか、と思う。 「ったく、痛えな。どうしてくれんだ?」 「ぃ、っ、ぁ、ああぁッ!?ふぁ、あ……っ、んぁ、やめ、ろ、んぅ、ぐ!!」 ただキスをされたというだけならまだ許せたかもしれないが、好きだと言われてされたのだ。そういう意味というのなら、はっきりと拒絶しなければならない。 例えそれが、自分の身を滅ぼすとしても。身体的苦痛を強いられるとしても、だ。 パンパン、と肌が激しくぶつかり合う音がし、全身が揺さぶられた。さっきまでの動くは手加減していたものだと、はっきりわかるぐらい衝撃は強い。それだけ怒っているということだ。 「こんなに泣きじゃくって喘いでんのに、強気だよな。落としてえ」 「あ、んぅ、ぁ、っ……く、ぅ、っ、なに……を」 「俺のもんにしてえ」 「……ッ!?」 top |