誕生日に監禁 | ナノ

*誕生日に猫を飼い始めた静雄の話

「ちょっと、ちょっとなにしてるの!どう考えてもおかしいだろ、俺はこんな趣味ない!!」
「残念だったな臨也くんよお。こんな日に池袋に顔出した手前が悪い」
「なにが悪いんだよ!これ外せ!!」
「俺はずっと誕生日に猫が欲しかったんだ」

さっきからチリンチリンと鳴り響く鈴の音が耳障りだったけれど、抵抗しようと身を捩る度に鳴るのだからしょうがない。猫が欲しかったという理由で捕まえられなんて屈辱的で、ふざけるなとさっきから睨みつけているが手足は動かない。
気絶させられて目を覚ましたら鎖のついた枷と首輪で繋がれ、自分の力では逃げられなくなっていたのだ。しかもズボンと下着は取られ、両足は大きく開いた状態で太股と脛部分を縛られて体の間にシズちゃんの顔があった。
そして手に持っていたのはグロテスクな玩具で、後孔の入口にローションをたっぷり垂らして中に捻じ込もうとしているところだったのだ。タイミングがいいか悪いかはわからないけれど、眠っているところに入れられるよりはマシかもしれない。
人間はパニックに陥ると別の事を考えて冷静になろうとするというのは本当なんだなとぼんやり思って。

「猫に尻尾は必要だろ?」
「俺は猫じゃないし、大体人間をこんな風に扱うなんておかしいだろ!シズちゃんとうとうおかしくなったの?」
「そんなの手前に会った瞬間から、俺はおかしくなってたぜ」
「なに…それ」

まるでこんなことをしているのは俺のせいだとばかりに睨みつけられて戸惑ってしまう。意味が解らなくてじっと眺めていたが、その途端ごりっとそこに異物感を覚えて真っ青になった。

「ま、待ってよ!こういうことしたことないからそこに入るわけがないんだって!痛いのは嫌だ!!」
「痛くしねえってゆっくりしてやるから。これも一番小さいサイズのバイブなんだぜ?」
「そんなこと聞いてない!とにかく、やめ……」

手に持っていた玩具が一番小さいんだと豪語されても、俺にはそんなのわからない。男とこういう行為をしたことがないのだから当たり前だ。
黙っていたら勝手に入れられてしまうと悟ったので、大声をあげて喚いた。おもいつく限りの暴言を吐いて気を逸らすことしか考えつかなかったのだ。それが煽ったことも知らずに。

「こんだけぬるぬるしてんだから、入るだろ」
「だから待てって…っ、あ、ほんと、やだ、嫌だって…シズちゃ…っ…!!」

ぐりぐりと入口付近を無機質な玩具で弄っていたが、ぐっと力を入れられるのがわかった。慌ててそこを締めつけて拒もうとしたが、丹念に塗りつけられていたらしいローションのせいで先端が少し挿入されてしまう。
しかもすぐにカチッと音がして、バイブが振動を始めたのだ。それは未知の感覚で。

「んあっ…あ、あぁ、あ…!や、やぁ、だ…っ、あ、ふる、えて…る、ぅ、うく」
「ほらみろ入るじゃねえか。尻尾がつけられたらご褒美やるから頑張れ」
「いらな、い…っ、これ、ぬいてぇ…んぁ、あ、う…くる、し、ぃ」
「ちょっと動かしただけでここぐちょぐちょ言ってるぜ。すげえエロいな」

一瞬で快感が背中を駆け抜けていって、気がついた時には喘ぎ声を唇から漏らしていた。そんなつもりはないというのに、こうなってしまえばどうしようもない。一度火がついてしまえば性欲を吐き出してしまわない限り苦しいのだ。
股間に顔を埋めて嬉しそうに口の端を歪めて不敵笑うシズちゃんに、無駄だと知りつつ抜いてくれとお願いする。けれどまるっきり無視をして、入っている玩具の根元をぐいぐいと押して遊んでいた。

「うっ、あ、なんで…こ、んな、嫌がらせ、っ、さいあく」
「嫌がらせじゃねえ。だからこれは俺の誕生日プレゼントみてえなもんだって言ってんだろ」

シズちゃんの誕生日は当然知っていた。だからこれまで一度もその日に会いに行ったことはなかった。だって祝われて幸せそうにしている姿なんて、見たくはない。
特にここ最近は友達も増えたので、誰かがお祝いでもしようかと言うのは当然だろうと思っていた。だから池袋に行かなければいけない仕事は前日までに済ませておくつもりだったのに。
俺が偶然にも会って追いかけられた時は零時を過ぎてはいなかったというのに、もうとっくに日付は変わっていた。

「なにそれ、っ、あ…俺にえっちなこと、したかった…とか?」
「違えよ、俺に懐くかわいいペットが欲しかったんだ」

言っていることは支離滅裂で、さすがに理解しがたい。せめてこの俺にエッチなことをしたかったと頷いてくれればよかったのに、誰でもよかったと言われて悔しくなる。
別に特別なんだと言われたいわけじゃなかったけど、もっと違う言い方であれば少しは素直になってもよかった。だって俺はシズちゃんが好きだから。
会った瞬間に拒まれてから、とことん嫌われようと努力してきた。好きとは対極の感情を独占したかったから。でもずっと好きだった。

「懐くわけ、ない…っ、だろ…だれが、シズちゃ、んなんかに…」
「安心しろ懐くようになるまで面倒みてやるから。手前が悪さしなけりゃかわいがってやるって」
「んっ、かわいがる、って…な、んのことだよ、俺になにを…してくれるの?」
「好きなことしてやるぜ」
「あははっ、嘘つき…じゃあ、キスでもしてくれる、の?」

とっさに冗談だろうと口にした言葉だったけれど、それを聞いたシズちゃんは動揺すらも見せなかった。真剣な表情のまま顔をあげて、玩具から手は離さなかったけれど体の上に覆いかぶさりながら近づいてきたのだ。
さすがに焦ってしまって、慌てて声をあげた。

「な、なにやってるんだよ!冗談に決まって…る、だろ!」
「嘘つきは手前の方じゃねえか。言ったことの責任は自分で取れ」
「はあ?なんでそうなる…っ、あ、ちょっと、ほんとに…嫌だ、って…ぅ、あ!」

てっきり寸前で身を引かれてバカにされると思っていたのに、どんどん二人の距離がなくなって口を開くと息がかかるぐらいに密着する。こんな馬鹿なことをするなと叫ぼうとしたが、はっきりとした拒絶の言葉が出ることはなかった。
代わりに耳まで赤くなり身を捩って逃げようとしてはいたが、最後には観念して目を瞑ってしまう。だって本当は、キスをして貰いたかったから。

「んぁ、あ…っ、は…ふ…」

最初はペロペロと唇を舐めていたけれど、次第に舌を強引に捻じ込んで口内を蹂躙し始めた。卑猥な唾液の音が電気もつけず真っ暗で静かな部屋に響き渡る。
だんだんと体の奥底から熱が生まれてきて、目尻には涙が溜まっていた。さっきまで頑なに拒んでいたのに全身から力が抜けて、ゆっくりと舌で撫でられる度に蕩けて甘い声が漏れてしまう。

「はぁ、っ…んぅ……く、ぁ、あん、う…」

キスをされながらも玩具は容赦なくじわじわと体の奥に押しこまれていき、さっきまでの恐怖はなくなっていた。ただ口づけをされただけなのに、余計な力が抜けたせいか順調にバイブの振動音が内に消える。
代わりに中からうねるような強い振動を与えて、どうにもできなくなっていた。誕生日とか、ペットとか、好きとか嫌いとか、そういうことすべてが馬鹿馬鹿しく感じられて。

「はっ、ん、うぅう…っ!!」
「よし全部入ったぞ。ほら見てみろ尻尾がすげえ揺れてる」
「そ、んな…っ、ぁ、あ、シズ、ちゃ…」

暫くして唇が離れて声を掛けられた時には、抵抗する力は完全に失われていた。そして嬉しそうに黒い尻尾を引っ張り遊ぶシズちゃんを見て、複雑な気持ちになってしまう。
こんなことは嫌だ。でも喜んでくれるのなら、続けるべきではないかと思ってしまって。
それが間違いだったと後悔しても遅かった。


「もう、っ、あ、やらぁ…シズちゃ、あ、尻尾抜いて、よぉ、ねえ」
「なに言ってんだ。尻尾抜いたら猫じゃなくなるだろうが。このままずっと入れてたらそのうち慣れる」
「ずっと、って…いつまで、するの?くるし、ぃ、からぁ…これぬいて、うぅ、っ、ひ、ぁ」

いつの間にか夜が明けていて、部屋の中で寛いでいるシズちゃんの横でずっと苛められ続けていた。何時間経ったかなんて考えたくなくて、残念なことにバイブで弄られて数回射精もしてしまったのだ。黒いコートは白く汚れて惨めな気分のまま落ち込んでいる。
だんだんとこのまま放置され続けるのではないかと不安になってしまって、遂には涙を流しながら訴えてしまう。もうなりふり構っていられなかったのだ。

「そんなに抜いて欲しいのか?」
「これ、ぬいてぇ…もうぬいてくれたら、ぁ、なんでも…する、から」

涙で頬を濡らしながら懸命に縋ると、床に寝転がって本を読んでいたシズちゃんが立ちあがりベッドに乗りあげてきた。どんな酷いことをされるのだろうと身構えたが、伸ばされた手はあっさりと玩具を引き抜く。

「抜いたぜ?これでいいんだろ」
「……あ、ありがとう」

肩で息をしながらお礼をのべたが、意識がはっきりしていたら絶対に言わなかった。快楽に浸りきっていたから自分の言ってしまったこともすっかり忘れて、ほっと溜息をつく。
でも腰に回された手はいつまで経っても離す気配はなかったので、不思議に思い見あげた。それと同時に、こっちに差し出されたものがあって。

「抜いちまったけど、やっぱり栓しとかねえとな」
「え……ま、さか、嘘」

俺のとは比べられないぐらい大きな物体が股間から伸びていて、あまりのことに絶句してしまう。よく考えればこうなることぐらい予想できただろうに、シズちゃんはそんなことはしないと思い込んでいたのだ。
だから反応が遅れて、さっきまでバイブの埋まっていた部分に先走りに濡れた先端を押しつけられて悲鳴をあげた。

「あっ、あ…やめ、てよ!なんで、どうして?終わりじゃあ…!」
「これからが本番に決まってんだろ?俺の誕生日に俺が気持ちよくならなくてどうすんだ。この為にバイブで散々慣らしたのに」
「で、でもなんで!俺のこと…嫌い、なのにセックスなんて…っ」
「嫌いだろうが、できるぜ」
「……っ」

始めからこうする気だったと告白されてショックを受ける。ただ俺を弄んで日頃の鬱憤を晴らしたいのかと思ったのに、違ったのだ。
嫌い合っているのにここまでする必要はないだろうという意味で尋ねたのに、すぐさま嫌いでもできると宣言されて目の前が真っ白になる。喉の奥がカラカラになって掠れた声しか出なくなった。

「おれは…で、きな…い」
「さっきのより大きいけど入るだろ臨也?」
「ひ、あっ、あ、やだ…いや、やっ、やめて、いれない、で…っ、あ、んああぁあ!!」

俺は好きな相手と体だけのセックスなんてできないと言いかけたが、肉棒が捻じ込まれるのが早かった。バイブで充分慣らされてはいたけれど、確かに大きくてビクビク震えているそれを受け入れるのは苦しい。
一番苦しいのは想っている相手に無理矢理された、という事実だけれど。

「すげえ熱いな、手前の中…っ、気持ちいいじゃねえか。もっと早くこうしてりゃあよかった」
「ふっ、ぁ、あ…んぅ、く…っ、やだ、ぬいて、ぇ…ぁ、あ」
「ああそうか、おいこっち向け」
「んぁ、っ…あ、ふぅ、んっ…く!?」

じわじわと最奥を目指して腰を進めていたが、シズちゃんが急に何かに気づき俺の顎を掴むと強引にキスをした。不意打ち過ぎて驚いたひょうしに中が締まり、熱く滾る欲望が勢いよく突き入れられる。
一瞬で心地よさに翻弄されて、唇の端から唾液が垂れた。何度か射精していたので達することはなかったけれど、すっかり快楽に溺れて感じやすくなっているのだ。

「ぁ、あ、う…は、ぁ、んぅ…っ、ふぅん、ん」
「キスに弱すぎだろ。ほら全部入ったぞ、見えるか?」
「……ぁ」

ようやく解放されたと同時に腰を高く掲げられて、目線を向けると体の中にシズちゃんのが入っている結合部がしっかり見えた。忘れていた羞恥心が蘇って驚きのあまりうまく言葉を吐けなくなる。

「はぁ、あ、うそ…やっ、あ、どし、て…ほんと、に、っ、あ、うぅ、く」
「泣く程嬉しいか?俺も手前と繋がれて嬉しいぜ」

嗚咽を漏らしながら、どうせ体だけの癖にと心の中で愚痴る。一方的に虐げているだけだし、こんなのがセックスだとは認めたくなかった。
なにが嬉しいのか俺にはちっともわからない。そんなに誕生日にいい思いをしたいなら、風俗にでも行けばよかったのに俺とこうした意味が理解できなかった。

「うれしく、ないって…うぅ、あ、やだ、やあぁ!うごか、ないで…っ、ひぅ、あ!」
「素直じゃねえな。まあなかなか懐かねえ猫を躾けるのが飼い主の役目だろ。そのうち本当に俺のもんになれよ」
「あっ、あ、んぁ…いやぁ、あう、っ…はげし、っ、あ、は…もう、やあぁ!!」

いきなり前後に揺さぶられ始めて、首輪につけられた鈴がひっきりなしに鳴りだす。チリンチリン、という音と喘ぎ声が交互に聞こえてシズちゃんの声が聞こえなくなる。
どうせ俺の言う事を聞いてくれないのだから、こっちも真剣に聞く必要はなかった。強制的に引き出された強い快感にぼろぼろと涙が溢れて、ぐちゃぐちゃだ。

「我慢できねえ、もう出すぞ臨也」
「そ、んなぁ…あ、なかだし、しないで!やだ、いや、おねがい…っ!」
「気にすんな、綺麗にしてやるからよお」
「シズちゃ、あ、ぁあ…だめ、やっ、あ、んぁ、あ、ふぁあああっ!あ、あつい、あつ、うぁ、あ、ひ…っ」

宣言されたけれど中に出されるなんて許せなくて、手枷から伸びた鎖をジャラジャラ鳴らしながら訴えた。けれど完全に勘違いをして、そのまま精液をおもいっきり吐き出される。
体の内でビクビク震える先端から次々に注ぎ込まれて呆然としてしまう。互いの体は熱く、俺自身も興奮しきっていたけれど達することはなかった。

「ぁ、あ…だ、されて…っ」
「あー…悪いな次は手前も気持ちよくさせてやるから、な?」
「え…!?」

申し訳なさそうに謝られた後に、腰を掴まれていきなり体勢を変えられる。顔はシーツに押し付けられて、固定された足で不安定に支えながら腰を掴まれていた。

「俺好みの猫に育ててやるぜ」

耳元で囁かれて背筋がぞくりと震えた。繋がったままの隙間から白い体液がこぼれ、もしかしてこれからのことに期待しているのではないかと錯覚して。

※続きは臨也の誕生日に続くと思います
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