たっぷりとローションを擦りつけながら、指先は硬くなっている下半身にふれる。すると今まで以上に騒ぎ始めて、すすり泣くような悲鳴があがった。 「そこ、っ、やめろ…!さわるな、さわるな、さわるな!やめろって、うぅ、あ、ぁ…やだぁ、あ、うぁっ、ひ、うぅ!」 (さわられるのが嫌なのか、感じてんのか全然わかんねえな。どっちもか?) ゆっくりと性器にローションを塗るように手のひらでさわっていくと、ビクビクと両足を跳ねさせて叫んで訴える。見えない相手にさわられて怯えているだけではない。ふれた箇所は熱かったので間違いなく快楽を感じている。 このまま手で擦ってやればすぐに達してしまいそうだ、と思いついた時には指が勝手に動いていた。 「な、なにやってる…っ、うぁ、あ、は…擦るな、やだ、やだ、ほんと、に…や、め、っ、ふぁ、あ!」 (このままやってれば間違いなく出るな面白え。そういやあ前の時はこいつ出してなかったよな) 俺とセックスをした時のことを思い出して、そういえば臨也自身が達してはいなかったとようやく気づく。自分の事ばかりで全く見えていなかったな、と反省をしながら口元がニヤけてしまう。 こんなみっともない姿だけは誰にも見せたくない、と考えていただろうにこうやってあっさりと晒してしまっている。悔しくてしょうがないだろうが、今まで俺に隠していたのが悪い。 きっと普通にしてくれていれば、暴いてやろうと思わなかった。過剰に隠されると全部剥き出しにしてやりたくなるのは当然だ。 「わかった、から…っ、お前らの欲しい情報を、言う、あ、んぁ…ほんと、だ、から、やめろって…!」 (手前から聞きたいことなんてねえよ。エロい声ならもっと言わせてえけどな) 「いいの、かよ…なんでも、言ってやる、から、はぁ、あ…うぅ、嘘は、つかない、ぅ、あ、ああぁ、ん」 (情報屋がこんなにあっさり吐くなんてダメだろ。やめちまえばいいんだよ) 途切れ途切れに話しながら必死に呼びかけてくる。交渉するにしてもこんなにも乱れていては成立しない。きっと本人もわかっているのだろうが、最後まで粘るのは情報屋としての意地だろう。 でも手の中の性器は完全に大きくなっていて、もうそろそろ限界が近いことを示していた。だから臨也も必死に訴えてくるのだ。だったらさっさと吐き出させてやるべきだった。 「うう、あ、はっ…もう、やめ、ろ、っ…嫌、いやだ、だしたく、な…い!うぅ、っ、ひ、やだ、やあっ!」 (残念だったな臨也。さっさとぶちまけろ) 「いや、いや、やっ…あ、うぁ、ふっ、う…あ、んああああぁっ!」 一層大きな声が室内に響き渡ったところで、先端から白い液体が臨也の腹に飛び散って汚した。限界まで両足を開ききってシーツにしがみつき、数秒経つと脱力し静かになる。呼吸を整える息遣いだけが聞こえた。 ショックを受けて放心状態なのがはっきりとわかる。唇を半開きにして呆然としている姿に胸の奥から沸き立つような熱が全身を駆け巡った。 (絶対に弱みなんて見せなかったのに、こんなにあっさりと泣いて喚いてエロい顔して) 目隠しを取って今の状態を瞳に焼き付けておきたいと思ったけれど、バレるわけにはいかないので堪える。もっともっと俺の知らない臨也が見たかった。 「ふ、ぁ…っ、つめた、あ、なに、を…っ!」 まだ残っていたローションボトルを手に取ると、手で少し腰を浮かせて中身を真下に垂らした。そこは後ろの入口で狭く閉ざしている部分をこじ開ける必要がある。 いつもだったら指で念入りに解してやるけれど、そんなことをしたら苛める意味はないし動作だけで正体を悟られるかもしれない。だから別の玩具をいきなりそこに押し当てた。 「な、なにを、入れようとしてるんだ…っ、あ、や、めろって…あ、んあぁあっ!!」 指二本分ぐらいの大きさの丸く線が伸びた物体を強引に入れると、ローションで濡れていたおかげであっさりと入る。俺のに比べたらかなり小さいから当然だ。 必死に足を閉じようとしていたけれど、俺の体で押さえつけていたので指先でぐいぐいと最奥まで押しこむと腰がビクビク震えた。しかしそれで終わりなわけがない。 「はぁ、あ、まさかまだ…っ、もう無理だ…っ、はぁ、あ…!」 (小せえんだから何個も入るだろ。中いっぱいにしてやるから待ってろよ) 二個目の丸い塊を入れると、立て続けに手元にある物全部を押しこんでいく。強引に捻じ込む度にピンク色のコードだけが中から覗き、最後の一個が入った時にはそこが小刻みに麻痺するように動いていた。 「あ、あっ、はぁ、あ、これ…まさか、全部っ」 さすがにもう何か理解した臨也が体を捩らせてなんとか逃げようと最後のあがきをしていた。でも鎖がジャラジャラと鳴るだけで、手枷のせいで目隠しも外すことができない。 シーツの上に落ちている何個ものリモコンを握ると、まず二つ同時に電源を入れた。 「うあっ、あ、んああ!ぁあ、あ、やぁ、あ、震えて、っ、あ、もうスイッチ入れる、な…っ、はぁあ!」 途端に機械音が響き渡り大袈裟に腰を跳ねさせた。訴えを無視して残りのローターすべての電源を入れると、背中を仰け反らせて苦しそうに喘いだ。 「やだ、やぁ、あ、っ…抜け、よ、っ、んぁあ、は…止めろ、止めて、くれ…っ、あ、うぅ、は」 拘束されて動けない体を懸命に引っ張り鎖を外そうとしているが、解けるわけがない。俺には気持ちよくて悶えているようにしか見えず、いつもよりも高く蠱惑的な声にうっとりした。 この声で俺の名前を切なそうに呼んで欲しいと思う。 弄んで遊ぶのが目的だったけれど、俺は一つのルールを決めていた。もし臨也が――したらすべてを止めて目隠しを取り、やってしまったことを謝ろうと。 逆に望んだことをしてくれるまで、拘束を解く気はない。いくら訴えられても答えることなくいつまでもこの責めは続くのだ。 そうしなければ、ここまでしてしまった意味がないだろう。こんなことはもうしないでくれ、と呆れられて終わるわけにはいかない。ちゃんと臨也にも受け止めて貰わなければ意味がないのだ。 もし願ったようにしてくれれば、気持ちをわざわざ確かめなくても俺のものだという証になる。恋人でつきあっているんだと、納得することができて。 (早く言えよ臨也) 「もう、いいっ…いいから、あ、んぁ、あ、うぁ、くそ、なんか言えよ…うぅ、こんなことしても、意味なんて、ない…」 始めはローターの振動に驚いていたようだったけれど、慣れれば大したことはないのかもしれない。一切口を開かない俺に向かって不敵に笑った。 それが気に入らなくてムッとしながらまだ手に握っていたリモコンのスイッチを、最大まで一気に引きあげる。 「えっ、え、うあ、あ、んあああ!ひぁ、あ、やだ、いや、だ…もう、むり、っ、うぅ、あ、ああ、ぁ、んぁ、あ!」 すると今度こそ我を忘れて喚きながら全身を揺すりすすり泣く声が聞こえた。激しい機械音に負けないぐらいの大音量で叫び、いつまでも止む気配はない。 唇を噛んで耐えようとしていた俺との行為のことが嘘みたいに乱れていた。本当はこんなものを隠し持っていたのかと気づくと、余計に愛おしく思えて。 「うぁ、あ、やだ、このまま…いや、ぁ、あ、うぅ、んぁ、ひ…やぁ、あんぅ、は、はぁ、あ」 (やべえな、我慢できねえ。このまま体にぶっかけるのもいいかもな) さすがに耐える限界も超えようとしていたので、セックスはしなくても臨也の体を汚せばそれなりにショックを与えられるかもしれないと思ったのだ。いい考えかもしれないとズボンに手を掛ける。 「うぅ、ぜったい、に…ゆるさ、ないっ…はぁ、あ、おぼえ、てろ…っ、あんぁ、う、く」 (こんなにしてんのに、まだ諦めねえのかよ) 静かな怒りが体の奥から沸きあがって、気づいた時には再び瓶を手にして錠剤を乗せるとおもむろに臨也の口を開けた。そしてさっきと同じように突っこんで息が出来ないように塞いで飲ませる。 「んぐぅ、うっ、あ、が…っ、ごほっ、は、は、あ、はっ!」 (動けねえのに口答えするからだろうが。さっさと許してくれって言えばいいのに) 暫くは耐えていたけれど結局飲み干すことしかできなくて、喉が動くのを確認したところで手を離してやる。こんなに短時間に薬を服用させれば危険なことぐらいわかっていた。 でも新羅は体に害はないと言っていたし、俺とやりあって怪我をしても平気な顔をしていたぐらいだ。もっと乱れて感情を剥き出しにすればいい、と思っていると顕著な変化が現れた。 「はぁ、あ……っ、あ、あ、あああ!あ、あつい、あつ…うぁ、あ、はっ、あ、あぁ!!」 (そりゃあ強い薬だからな。でも気持ちいいだろ?) 「やぁ、あ、やっ…あぁ、あー…あん、ぁ、は、ふぁ、あ、あぅ、あ」 明らかに全身が激しく震え始め、涙を流しながら口をだらしなく開けたまま喘ぐ。懸命に自分を保とうとしていた姿はもう全く無くて、鎖をジャラジャラと鳴らしながらもがいていた。 いくら抵抗してもどうにもならないことぐらいわかっている筈なのに何度も同じ行動を繰り返し、次第に玩具の入った部分をシーツに擦りつけるように腰を揺らし始める。 「んぁ、あ、っは、あ…やぁ、んっ、あ、ひぅ、あ、すご、っ、あつ…んぅ」 (これ自分でしてんのか?すげえエロいっつうか、意識ねえんだろうな) 色っぽさも増して自分から快楽を得ようとする姿に胸が熱くなる。試しにローターの振動を弱めるとすかさず喚いた。 「えっ、あ、やだぁ!やぁ、あ、さっきの…して、え、あ、あつ、い…くるし、っ、あ、うぁ、はやく、んぅうう!」 (今のぜってえ俺に強請ったんだよな?あの臨也が?) 「んぁ、あ、これ、がいい…っ、ぁ、あ、もう、だめ、っ、で、る」 「あ…?」 「ふぁ、あ、んあああっ!やらぁ、あ、でちゃ、あ、んぁ、あ、うぁ…こし、っとまんな、いっ、うぅ、あ、あ」 信じられないことに目の前で二度目の射精をして、嬉しそうに微笑んだ。あまりのことに驚いてしゃべってしまったけれど、こっちのことなんてまるで聞いていない。少量しか出なかったが、まだそこは勃起していてまた同じように全身を揺らし始める。 休むことなくまた声をあげて喘ぎだしたので、背筋が寒くなった。熱い、熱いとうわ言のように呟きながらローターの振動に悦んでいるよううにしか見えない。 やり過ぎた、と思った時には遅かった。 「でもガキみてえで、かわいいな」 「んぁ…っ、う?」 目隠しされた先にある瞳を指先でなぞりながら口を開いたが、薬で朦朧としている臨也には正体が俺だということはわからなかった。 text top |