「じゃあ昨日のは、好きな奴としたのとは違うの?」 「あー…ここでその話すんのかよ。まあ先に手え出しちまった俺が悪いのはわかってんだけどよお……もう待てなかったんだ」 シズちゃんは俺の足の間に体を割り込ませて、落ちていたバイブを掴んでローションだけ絡め取るとそれを自身に塗りつけながら話し始める。やっていることはすごいのに、表情は真面目でそのギャップに微かに笑う。 「時間が戻った後、俺は待ってたんだよ。手前がまた告白してくれんのを、何もせずにぼんやり待ってた。その数日間ずっと魘されて苦しんでるなんて知らずにな。だからそれを知ってショックだった。なにやってんだって自分にも腹立って、だから…」 ぐちゃぐちゃと卑猥な音をさせながら、昨晩は複雑な気持ちで受け入れたそれをじっと眺める。透明な粘液が全体にキラキラと光り、胸を高鳴らせながら待つ。 悲痛な告白とあまりにも合っていなくて、けれども逆に一言一言を噛みしめながら聞いた。これがいつもの状態だったら、聞きたくないと拒絶したかもしれない。 「どうしても早く自分のものにしたかった。そうしないとまた、俺の前から居なくなっちまう気がして…な」 「そうだったんだ、ごめん…」 一瞬だけ気まずい沈黙が流れたが、すぐに目の前のシズちゃんが笑って言った。 「まあでも時間が戻ったつうことは、前の死んだ時のことの記憶はあるかもしれねえが、俺以外には抱かれてねえんだろ?だからやっぱり、手前は元からエロかったってことだよな」 「…えっ、なにそれ」 「それとも俺だから始めからあんな乱れてたのか?好きな奴とできて、実は嬉しかったんだろ?」 言っている意味がすぐにはわからなくて、ぽかんと口を開ける。ぼんやりとしていた頭で必死に考える。 俺の体は時間が戻ったことで、シズちゃん以外の相手にはふれられていない。前は複数の相手に輪姦されたけれど、あれは記憶の中だけに残っていて体はなかったことになっている。 言われていることはわかるし、多分そうだろうなとは思うのだけれど、確証はない。俺自身だってよくわからない。だけど一つだけ確かなことがあった。 「う、れしかったよ…本当は、シズちゃんとできて」 「じゃあもう面倒なことはいいよな。しっかり捕まって、俺に抱かれろ」 「え、っう、ま、待ってよ…!まだ、心の準備、とかっ、あ、もう…!!」 「そんなの必要ねえだろ」 本音を言う時はまだはっきりと瞳を見ることはできなかったけれど、チラチラと窺うように見つめながら小声で言う。するとこっちのちっぽけな勇気を台無しにするかのように、あそこを擦りつけてきて慌ててしまう。 もしかして今ので了承したと勝手に勘違いされているのかもしれない。まだそこまで許してはいないと言おうとして、シズちゃんの顔がゆっくりと近づいてきて。 仕方なく目を閉じた。 「んっ、う、ふぅ…あ、んああっ…!うぅ、あ、は…っ、く、…はぁ、あ、おっきぃ」 「はは、この間よりすげえ締めつけてんじゃねえか。こんなに、簡単に変わるもんなんだな」 「はぁ…っ、うるさい…!!」 軽く唇にリップキスをされたと同時にペニスがゆっくりと挿入されて、もうぬるついていたそこは滑りも借りて一気に奥まで入っていく。それがまるで俺自身が迎え入れているみたいで嫌だったけれど、今更どうにもできない。 さっきの玩具とは比べ物にならない質量のそれで貫かれて、苦しいと思いつつほっとする。だけど体の反応をすぐに見破られて、すかさず指摘された。 すごく気持ちいいと口で言うみたいに、中が小刻みに震えて入口が収縮していたのだ。一瞬で耳まで赤くなり、これ以上悟られないように息を吐きながらどなったが突然左耳の辺りを撫でられる。 「なあ、手前の体で俺のことが好きだって言ってねえとこなんかないだろ?」 「な、なにそれ…っ、勝手なことを」 「耳真っ赤にして、しっかりちんこも擦りつけ、ここも離さねえように食いついて腰だって震えてる。全身で、俺が好きって言ってんだろ?じゃあ、言葉なんていらねえよな」 「あ…っ、ぁ、ちが、っ…やぁ、あ、ばかっ…そんなこと、言うな!」 冷静に体の変化を言い当てられて、表情に焦りが浮かぶ。ここまでうろたえていたら、図星だと言っているのと同じだ。だけどセックスしている最中に話し掛けてくるシズちゃんが悪い、ことにする。 とにかく反抗の意思表示だけでもしたくて睨みつけようとしたのに、突然激しい律動が始まってしまう。 「い、きなりっ…あ、んぁ、あ、う…っ、く、うぅ、あは…っ」 「確かここが好きだったんだよな?」 「ふ、えっ…?ま、まってよっ、あ、そこ、敏感に、なって、る…あ、やだぁ、うぅ、あんっ!」 互いに気持ちを認め合ってするのは初めてだけれど、行為としては二度目だ。俺なんかこれまでのセックスの経験が残っているのだから、いくら我慢してもすべてを曝け出すまであっという間だった。 それなのに前の時に見つけたらしい気持ちいい箇所をあっさりとまた見つけ、いきなりそこを執拗に責められる。さっき一度イかされているのだから、再び同じところを突かれて感じないわけがない。 「なあそういやあ、さっきのあれ…よかったのか?」 「…えっ?」 「もしかして、ここ縛られてんの好きなのか」 「いや…その、違う!ねえ、それだけは…違うって!!」 急にすごく冷静に言われたされたことに、全身が硬直して緊張する。気づかれていない、と思っていた。それだけはダメだけど多分大丈夫と思っていた。 だからあまりのことに全部の事を忘れて、首を振りながら必死に叫んでいた。こうなっているのはすべて媚薬のせいで、さっき玩具でされた時もどうしようもなかったんだと説明しようとして。 「このままでも、イけたりするのか?」 「…っ、待って、やだ…俺は普通にしたい!シズちゃんと、一緒に…!!」 「へえ、そういうことか、よくわかったぜ。なあそういやあまだ手前に大事なこと聞きそびれてたな」 バレてしまったと確信すると、喉がカラカラに乾いてけれどもどんどん熱はあがっていく。一旦動きは止められて問い詰められていたけれど、震える手で背中をぎゅっと掴めばすぐに突きは再開した。 だけどそこに新たな刺激が加えられる。紐の上からシズちゃんがそこを少しだけ強く握っていて、いつも以上にそこがズクンと痛んで目の端に涙が浮かぶ。 しかもこっちは酷い状態なのに、すっかり言うのを先延ばしにしていたことを告げられる。その瞬間唇の端から唾液が垂れて、縛られて動けなかった手首の戒めがなぜか解かれる。 求められていることがどういうことか、わからないほどバカではない。 「っ、あ、うぅ…言わないと、やっぱりダメ?」 「別にそれでもいいぜ、ただしそん時は一人でイって貰うけどな」 「酷い!いじわる、最低、横暴、バカ……っ」 念の為に聞き返すと、はっきりと告げられて驚いてしまう。もうダメなんだなと悟ると、なんとかはぐらかせないかと暴言を並べてみる。でもそんなの、無駄で。 「臨也」 「…ズルイ」 子供をあやすかのように優しく名前を呼ばれて、溜まっていた涙が一筋こぼれ落ちた。 ここまで本当に長くて、長すぎて、苦しかったけれどもういいんだと言い聞かせてようやく告白する。 「好きだよ」 「誰が?」 「君が」 「それじゃあわかんねえ」 そこで一度ぐっと言葉を詰まらせたが、唇を噛んで目をぎゅっと瞑り叫ぶ。 「シズちゃんが、っ…好きだよ…!!」 「やればできるじゃねえか」 随分と長い年月をかけて隠していた気持ちを吐露したと同時に、腰を打ちつけてくる動きも早くなる。きっと今ので満足してくれたんだと信じて、俺も腰をくねらせて受け入れた。 すると急に中のそれが大きく膨れて射精しそうになっているのだと自覚すると、目を開けて訴える。 「あっ、ふぁ、ひ…っ、おねがい、これ、はずしてぇ…!」 「じゃあ一緒にイけよ」 「うんっ、あ、あぁ、シズちゃ、んと…っ、いっしょ、に…っ、あ、ひやあぁっううぅううんん!!」 必死の訴えはあっさりと受け入れてくれたので、すぐにペニスの根元の紐もあっさりと外れた。するとそれまで苦しみながら止められていた快感が、一気に全身を駆け抜けてそこからは止まらなくなる。 さっき気持ちを吐き出したのと同じように、精液を吐き出すと後ろからも流れ込んでくる。もう何度も夢の中では熱い塊から出るそれを出されていたけれど、これまでとは違う。 とても大切なものなんだと感じながら、最後まで自身もたっぷり射精してほぼ同時に互いの力が抜ける。俺の腹どころかシズちゃんのシャツにもべっとりと飛び散っていたけれど、そんなことを気にしている余裕はない。 「はぁ、あ…っ、ごめ…」 「別にこれぐらいじゃ怒らねえぜ。拭けば汚れもとれるしな」 「…よ、かった」 謝罪の言葉をすぐに口にするとあっさりと許され、涙が薄らと残る頬に軽く口づけをされて安堵した。なんだかやけに優しいかも、と思っているとその考えが間違っていたことを知る。 「俺が怒ってんのは、ここまで絶対に言わなかった手前の頑固なとこだな」 「え?」 「一応これで二度目だからな。もう手加減はぜってえしねえよ」 鋭く射抜くような瞳を感じた途端に、ぐちゃぐちゃのそこが強引に掻き混ぜられて甲高い声があがって。 結局気を失うまで、こんな辛気臭い場所でのセックスは続いた。 text top |