「やっぱり出るじゃねえか。じゃあ今から気持ちよくしてやるから、ぜってえ我慢すんなよ。したらやめてくれって言われても、やめねえからな」 「どうせ、やめるつもりなんて、ない癖…に、っ…ぁ!?」 さっきから動揺しているのをなんとか落ち着かせようと息を吸いこんでしゃべっている途中に、また指がぐりぐりと抉られる。股間が反応するぐらい感じてきていて、しかもさっきの声で決定的に快感を思い出した体が勝手に火照り始める。 ぐちゅぐちゅと卑猥で粘着質な音を室内に響かせながら中で蠢いて、それを堪えるのは相当苦しかった。 「あ、ぅ…ぁ…く…」 「なかなか強情じゃねえか。でもこうしたらどうだ?」 目を瞑って口を噤んでいたところに、突然掴まれていた腕が外され予想外のところに刺激を受けた。見えないのが仇になって、淫らな喘ぎがあがる。 「ふ、ああっ…!?な、そこ、やめ…!」 「知ってるぜ、ここ結構弄られてて弱いだろ?男なのに乳首で感じるなんてすげえな」 「うぅ、そんなの、いいだろ…!しょうが、な…っ」 「そうだよな?新宿の情報屋サンはザーメン狂いのちんぽ奴隷だったよな?」 まさか胸を弄られるなんて思っていなくて、それだけでも相当ショックだったのに言葉でなじられて信じられない気持ちになる。 でも嫌だったわけじゃなくて、罵られて勝手に感じてしまった体が、ありえないと思った。 「うあっ、あ…!!」 「なんだやっぱり酷い言葉で追いつめられるの、嫌いじゃねえんだな?」 「や、やめて…やめてよ、こんな…!」 「愛してるぜ、臨也」 乳首の先を摘ままれて引っ張られながら嫌々と首を左右に振って抵抗していたが、それが弱いこともわかっていた。多分シズちゃんもわかっていたのか、止めを刺すように囁いてきたのだ。 それはいつか幻覚で見せられて、嬉しいと感じたのと同じように心に染み込んできてあっさりと喜んだ。全身が何度かビクビクと跳ねた。 「あっ、あ、あ…んっ…!!」 「調子出てきたじゃねえか。じゃあ後は、さっさと出しちまえ」 「んあっ…あ…ぅ、く…はぁ、あ、あ…」 これでもかなり喘ぎ声を堪えているつもりなのに、だんだんとそれができなくなる。目の端にじんわりと生理的な涙が浮かんで、いつの間にか口を押さえるのをやめてシーツに縋りついていた。 頭の中で今までのいろんな行為がフラッシュバックするかのように何度も思い出されたが、しっかりとこっちを射抜く瞳からは逃れられない。 さっき泣いた跡なんかもうすっかり消えていて、まるで極限状態で餌を待つ飢えた獣のように無言の圧力を感じる。本能的に、食い殺されると思ってしまった。 「お、ねが…っ、やめ…あ、はぁ、ふ」 「止めねえって言っただろ?ちゃんと聞こえてただろ?」 「…っ、ごめんなさ…!!」 一層強い口調で言われて、おもわず謝罪の言葉が口をついて出た。でもすぐにハッとして唇を噛もうとしたのだが、突然別のあたたかい感触で塞がれてしまう。 それはぬるりと口内に入りこんできて、ちゅうちゅうと舌で吸いついてそれから互いの間に透明な糸を引かせた。すると余計に受け入れている二本の指を締めつけて、そのままぼんやりと熱に浮かされながら短い悲鳴をあげて。 「んっ、ふ…あ、あああっ…っ、ひ、ぁ、なんで…!」 「簡単にイかせねえよ、俺の指で気持ちいいとこ弄られて射精せずにイくまでな」 「…あ、ぁ…」 それはきっとドライオーガズムのことを言っているに違いない。ここまで言われてしまえば、もう信じるしかなかった。 淫らな体の隅々まで、シズちゃんに知られているということを。初めてなのに、まるでそんな気はしないのは当然だ。薬なんかなくても、好きな相手の前ではどうしようもなく乱れるものなんだとようやく理解した。 「ねえ、も…や、めてよぉ、っ、う…ひ、ぅ」 「まだイってねえだろうが。こんなに感じやすい体なのによくもってるじゃねえか」 「うぅ…ぁ、ぐ…ふぅ…っ」 「なんだ?言いたいことあるなら、言ってみろよ」 偉そうにと瞳だけで睨みつけながら、言い返すことはできなかった。だって息をするのが精一杯で、何かをしゃべってしまえば途端に淫猥なことを口走ってしまいそうだったから。 喉の奥まで既に出かかっている。 欲しい、欲しいねえシズちゃんのでっかいおちんぽ、俺の中にぶちこんでザーメンまみれのどろどろのぐちゃぐちゃにしてよ。 そう言ってしまうまであと少しだろうと自分でもわかる。それぐらいに体は満たされないものを欲していて、乾いて乾いてどうしようもなかった。中に出された精液でぐちゃぐちゃだったけれど、これじゃないんだと。 俺の知っているシズちゃんの、精子が欲しい。 「あ、ぅ…も、っ、やぁ…だ、めぇ…」 「どうしようもねえぐらい強情だよな手前は。じゃあ本当に知らねえからな、みっともねえ顔見せてくれよ」 「…っ!まっ…!!」 それまでこっちをじっと見つめていた瞳が細くなり、一層鋭さが増したと思った時にはぐちゃぐちゃに掻き混ぜられていた指の動きが早くなった。前後に規則正しく素早く抜き差しされて、しかもそれぞれが違う動きで壁を擦ってきたのだ。 ただでさえ刺激に飢えていた体はあっさりと受け入れて、とうとう涙が一筋頬を伝った。でもそれで終わりではなく、あろうことか三本目の指が突き入れられようとしたので叫んだ。 「んあっ、あ…ぅ、はぁ、ゆび、もういれないれぇ、っ…!」 「ああやっぱりそうやって喘ぎながら泣いてるのもかわいいじゃねえか」 かわいいとかそういうことを言っている場合じゃない、と訴えたいのに唇が震えるだけで甲高い声しか口にできない。結構ギリギリなところで踏ん張っていた限界が、たった一本の指で打ち崩されようとしているのが解せない。 こんなに丁寧に指だけで弄られるのも、実は初めてだった。だっていつもはバイブとかローターとか、あとはもう薬が効いてきてとろとろだったから。 そんなものがなくても簡単に蕩けて足を開く体が恨めしいけれど、シズちゃんが真剣な表情で夢中になっているのを見るのも悪くは無い。もっともっと、俺の事だけを見てくれたらいいのにと思っていた現実がここにあるのだから。 「ほら臨也、出しちまえ」 「ひっ、あ、や…やめれぇ、あ、んあっ、ふああぁ…!!」 耳元で低く囁かれて思わず腰を引いたところで三本目が強引に捻じ込まれ、そのまま勢いよく前立腺を擦るとものすごい勢いで達していた。しかもタイミングよく押さえつけられていた根元が解放されて、でも先端から白濁液が飛び散ることはない。 全身を駆け抜けた覚えのある心地よさに、完全に唇はだらしなく開かれて何もかも忘れて叫んでいた。教え込まれたように。 「あっ、あ、あぁ、きもひいっ…!イってる、しゅごいっ、でてないのに、いいよぉ、っ…もっとつよく、こすってぇ!」 「ああこうか?」 「はっ、ひいんっ!?それ、それ、いいよぉ、まら、れんぞくれ、おしりれ、イっひゃう、ぅ、ぁ…あんああぁ!!」 一度決壊すると止まることなく次々と言葉がこぼれ、涙もおさまる気配は無い。滲んだ視界の端で金色の髪が蠢いているのはわかるのに、自分を抑えられなかった。 こんなこと言ってはいけない、恥ずかしいところを見せてはいけないと頭のどこかで警告しているのに体が鉛のようで思い通りにならない。そうして連続して二度目の射精なしの大きな絶頂を迎えると、すぐに全身をふわふわと快感が包む。 普通のとは違う、ズキズキと疼いてずっと続く余韻にいつのまにかふわりと微笑んでいた。でもそれは、作られたものだ。そうしろと言われたからだ。 癖のようなもので、自分ではどう笑っているのか認識できてはいない。でもそれを見たらしいシズちゃんが、満足そうに口の端を歪めて笑ったのでそこで少し冷静になる。こんなのでも喜んでくれたのだと。 「はぁ、は…っ、んぅ」 「すげえエロくイきまくる手前見れてよかったぜ。本当はもっと続けてもよかったんだけどよお」 「ぅ、あ…シズちゃ、ん…?」 「こんなの見せられちまったら、もう我慢できねえ」 中から指が引き抜かれて、目の前でシズちゃんがズボンと下着を脱ぎ始める。こっちはとっくに全身の力は入らない状態だったから、ただ放心して見ているだけだった。でも胸は期待感でバクバクと煩く鳴り響いている。 何度これを夢見たかわからない。 幻覚を見せられたことだってあった。電話で声を聞きながら犯されたこともあった。声を聞きながら自慰をしたこともあった。匂いを嗅ぎながら、犯されるのを勝手に想像しながら、何度でも、ずっとシズちゃんばかりを追い続けてきた。 それがようやく叶うなんて、夢のようだとまた涙が溢れる。 「じゃあ入れるぜ、嫌だったら言えよ」 「うん、シズちゃ…っ」 さっきまで嫌がっても止めないと言っていた男の言葉とは思えなかった。でもこうやって思い出したかのように優しく扱ってくれるのは嬉しい。大事にされているのだと、実感する。 あまりにも感極まってしまい震える唇を噛みしめながら、首を縦に振ると次の瞬間望んだ硬さのモノが突き入れられる。慣らさなくても入ることに呆れたけれど、そんな場合ではなかった。 「は、うっ、あ、あああ!あっ、あ、こ、れ…っ、なんで、ぇ?」 「どうした?痛いか?」 「ちが、うっ…これ、ぇ、おぼえてる…っ、おっきぃの、すごい、どうして?」 まだ半分おさまったところだったが、驚いたのはこんな大きさでも痛みも辛さも無くすんなり入ったことだ。記憶している中では、太さも長さも一番だったのに自然と体が受け入れた。 つまりそれは、つい最近同じものを挿入されたことを意味している。同じ相手とばかりセックスをしていたら大きさも形もその相手に合わせて変化するらしいと聞いたことがあるが、多分それと同じだ。 今の俺は、そこがシズちゃんとセックスをする為だけにその形に開かれていると。理屈ではなく、感覚的にそう悟った。 「覚えてるって、ついさっき俺とした時のが?結構疑ってたっつうか、その前にバイブ突っ込まれてたからわかんねえかもって俺は…」 「っ、はぁ、は…わ、かる!わかる、おれ、しずちゃんと、した…っ、あ、は、これきもちいい」 「そうか、そりゃあよかったぜ」 繋がったまま顔が近づいてくると、そのまま頬にキスをされた。するとその時に全部最奥までシズちゃんのペニスを受け入れて、ようやくこれで全部満たされたことになる。 長かったようで、挿入までは一瞬だった。だからこれまでのことは長く感じられたけれど、きっとそれよりももっともっと二人で居る時間が長く増えていくだろうと確信する。 「今度は二人で気持ちよくなろうぜ」 「ふ、あっ、あ、ああ!あっ、やぁ、あ…は、げしっ、うぅ、あ、おちんぽ、そこ、やらぁ、あ!」 互いの瞳を眺め合った瞬間に律動が始まって、すべてを曝け出した甲高い声が響く。あまりに突然の事に意識が飛んで、絶対に言いたくはなかった淫猥なことをまた口走ってしまったけれどすぐに考えるのを止めた。 だってこんなにも、セックスができたのが嬉しかったから。その気持ちを壊したくなくて、興奮して昂ぶった気持ちもそのままに喘ぐ。 「あつ、い…っ、あ、シズちゃ、んの、すごいっ、あ、おっきくて、もっと、つよく…っ」 「俺の熱いだろ?ずっと入れたくて入れたくて我慢してきたからな。手前も早く欲しかったんだろ?」 「んあっ、あ、ほしかった、これ、ぇ…いっぱい、きもちよく、なりたかった、ぁ」 「やっぱり、入れられたら素直になりやがって、ほんとどうしようもねえな」 穏やかに笑いながら腰の動きは相当早く、シズちゃんも焦らされて切羽詰まっているということがわかった。このままだと互いにあっさり達してしまいそうだったけれど、それでもいいと思う。 だってきっと今夜は、今までの溝を深めるかのように何度も何度も愛し合うはずだから。 「あ、ぁ、もうっ…だ、してぇ、シズちゃんの、ほしいっ、おれに、こんどこそ、おれにだしてぇ、もう、わすれないからぁ」 「そうだな、もう忘れんじゃねえぞ?一生覚えとけ」 「うん、うんっ、あ、しずちゃ、んも、おれのこと、わすれないで…?」 俺の腰を掴んでいる腕にしがみつきながらそう告げると、胸の辺りに汗がぽたぽたと落ちてきた。でもそれが、本当に汗なのか、涙なのかはわからない。 でもどっちでもよかった。だって最初から俺は、シズちゃんの為ならなんでもするし、シズちゃんならなにをされてもいいと覚悟していたから。 絶対に二度と俺の事を忘れないでと心の奥で願いながら、動きに合わせて腰を振った。そうして中をおもいっきり締めつけると同時に熱い迸りがそこに注がれて、自身もその熱につられるように三度目のオーガニズムを迎えていた。 「臨也…!」 「ふああっ、あ、あ、ぁ、すき、すき…っ、しずちゃん、しうちゃ、しゅき…おなか、いっぱい、でて、るっ…!!」 派手に叫び声をあげながら白濁液をしっかりと受け止めて、ビクビクと足が麻痺するように震えた。射精は思ったよりも長い時間続き、絶頂した後のぼんやりとした全身に疼く快感に身を委ねながら息を吐いて顔をあげる。 すると一瞬だけ視界がぶれて何も見えなかったけれど、すぐに唇に軽く押し当てられた感触がくすぐったくて笑った。 「ん、っふぅ…あ、ぁ…シズちゃ?」 「腹膨れるぐらい俺のもん出してやるから、こぼすんじゃねえぞ」 「それは、むり…かなあ。だってこんなに、濃くてどろどろだし…もうこぼれてるよ?」 互いに顔を見合わせて笑い声をあげながら、しっかりと手を握り合って掴む。大きな手にしっかりと握りこまれて、けれども力は優しくそっとすり寄せるようにもぞもぞと動かした。 text top |