it's slave of sadness 11 | ナノ

「ん、ぁあ…っ、も、っとだしてぇ?ん、あ、はぁ、ねぇ…っ、まだぁ、たりな……ッ」

もう完全に時間の感覚はなくなっていて、どのぐらいの時間こんな淫猥な行為が続いているのかわからなかった。でも周りの数人の男達が三巡目ぐらいでバテていることだけはわかっていた。
それなのに薬の効果は衰えるどころか、もっともっとと全身で望んでいて、今は太いバイブを咥えて自分で出し入れを繰り返していた。けれども体はこんな玩具ではなく、熱く脈打つペニスを望んでいた。

「一人は疲れ知らずの絶倫状態に近いアンドロイドで、もう一人は薬漬けとか……そりゃあ手に負えねえよな。安心しろ、他の奴らを呼んだからそろそろ着くはずだぜ」

疲れきった顔をした男が、壁にもたれかかってオナニーをしている俺を見ながら話しかけてきたが、ほとんど耳に入っていなかった。
俺は少し離れた所で男二人を相手にしているサイケのことを、じっと見つめていた。

「ほら、また大きく…っ、なった。まだまだ、できるから…ぁ…入れてよ?」

さすがというべきか、精根尽き果てた顔をしている男二人を手だけで復活させて、次をねだっていた。それを眺めながら、あそこを揉んでやれば回復するのかと感心していた。
試してみたいなと、周りをチラリと見回したところで部屋の扉が勢いよく開いて、これまでの倍ぐらいの人数の男達がどかどかと足音を立てて入ってきた。

「おい、こりゃすげえな…あいつ情報屋の折原臨也だぜ」
「しかも二人もいやがるぜ、どうなってんだこりゃ」

そいつらは口々に叫びながら、サイケよりは俺の方ばかりを見ていた。俺に覚えはないが、きっと俺のことを知っているのだろうと思った。
とにかく早く犯して欲しかったので、バイブの抽送を早めながら、艶然と微笑んで甘い声で誘惑した。

「お、れのこと…好きにして、いいから…犯して、もっともっとぉ、せいえきで、どろどろに…してよ?」

口に出した瞬間、その場がしんと静まり返ったがすぐに男達が動いて、俺の周りを取り囲みながらカチャカチャとベルトの音を立ててズボンを下ろしていった。
それが待ちきれなくて、唇にこびりついている精液の残液を舌でぺろぺろと舐めながら手の動きを早めた。ぞくぞくと背筋から寒気がかけあがっていくのが、心地よかった。

「すげえな、こいつ本物なのか?腰振りながら自分で誘惑してきやがって、信じられねえ」
「人間が好きだっていう噂を聞いたことがあるけど、こういうことだったのか?人に犯されるのが好きっていう?ハハハ、バカな話だよな」

そうして、男達が争うようにしながら俺の体に手を伸ばしてきて、それぞれが好き勝手にさわったり性器を擦りつけてきたりしてきた。
一人の男が俺の背後に回って四つん這いの恰好をさせて、眼前の男が口を開かせて、左右の男が俺の手を取り何かを握らせた。

「あっ…ん、う、はあぁ、あっあああああんうぅう、む、ぐうぅぅんん……!」

ほぼ同時に後孔と口にペニスが突っ込まれて、衝動に腰を震わせながら手の中のペニスを擦り男達を昂ぶらせていく。
囲んでいる男達も、俺の頬にペニスを押しつけたり、脇の間に押しつけてそこで擦ったりして楽しんでいる。媚薬で敏感になりすぎている体には、その刺激は魅惑的だった。
快楽で気持ちよくて、気持ちよくて、すぐに正常な意識が飛んだ。

「臨也くんばっかり…ズルイよお。ねえ、サイケのことも…犯してよ」

声のする方に目を向けると、サイケが男の肉棒を手でしごきながら、M字開脚してそわそわと腰を振って誘っていた。すぐに俺の周りに居た男達の何人かがそっちに流れた。
移動してきた男にうっとりと微笑みながら、指で入れるべき場所を指さしていた。
俺のしていることとなんら変わらない動きなので、ぼんやりと俺もあんな風にはしたなく誘っているんだと頭の隅で思った。
それが悲しいとか寂しいとかそういうことは思わなかったけれど、なんでこんなにも歪んでしまったのだろうかとは考えた。
津軽とサイケが妬ましくて、少しからかうつもりで始めただけなのに、それが全部自分に返ってきた。
シズちゃんが俺のことを津軽に名前を呼ばせないぐらい嫌っていて、けれどもサイケの誘いには乗って、そしてそれが体目的なのかどうか試す為に今犯されていて。
この宴が終わった時、果たして俺は正常な神経でいられるのか、本当にシズちゃんを誘惑できるのかは予測できなかった。
そんな勇気が、俺に残っているのかと。
ぼんやりとした瞳でそう考えていると、サイケと目があった。

「臨也くん、すごく嬉しそう」
「ん、むぅ…ぐっ、うぅ」

なんでそんなことを言ってきたのかわからなくて、聞き返そうとしたがくぐもったあえぎ声しか漏れなかった。せめてこれさえ抜ければ、と首を引きかけたが遅かった。
サイケの前に立った男が、ひくつかせながら今もなお誘惑しているそこ目がけて塊を押しこもうとしたからだ。

「おれも、うれし……っ、あ、やぁあ…きた、キタ…ッ!!」

当然のように目の前で喘ぎ始めて、こっちも同じように責められているはずなのに、酷く胸が締めつけられた。
俺が嬉しいと本当に思っているはずがないのに、サイケはそうだと言った。ということは、サイケも嬉しいと思っているはずがないのに嬉しいと言ったのだと考えられた。
アンドロイドだって人間と同じように、心が傷つくのだ。それを押しこめたのは俺の言葉で、それがきっかけかはわからないが自分の体を使ってシズちゃんを襲ったり今また男達に犯されている。
彼は津軽が好きなのに。
純粋に一途に津軽だけが好きだったのに、俺が騙して巻き込んで、それなのに怒ることもなく必死で一つのことを伝えようとしてきた。

『津軽は俺のこと全部わかってくれるって信じてる。きっと報われるはずだから、臨也くんも静雄さんのことを信じれば報われるはずだよ』

そう訴えているのを知っていたのに、拒絶してそうして今になってその言葉が身に染みている。

「あぁ、あ、これっ…きもちいぃれすぅ…もっと、もっとサイケのからだっ、つかって…」

彼は唯一ここから逃げることができる。俺の事なんか放っておいて自分だけ逃げることなど簡単にできるのに、もう彼がこうして犯される理由もないのに俺と一緒に犯されている。
いくらマスターに逆らえないからと言っても、ここまでする必要はどこにもなかった。

「は、やく…せ、いえきかけて…っ、サイケそれ、すきだから…っ、あ、ひぁあん」

自分とそっくりの姿のサイケが偽りの微笑みを浮かべて犯されるのが、唐突に嫌になった。自分がこうなっているのも嫌なのに、鏡のように目の前にその姿があるのが無性に腹が立った。
ちょうどその瞬間に、口内に目の前の男の精液が吐き出されて、半分を顔にひっかけられながら、やっと自由になった唇で叫んでいた。

「む、うぐううう…っ、ぷ、あ、はぁっ、はっ…っ、うぅサイケ…ッ!俺の言うことを、よく…聞け…っ」
「は、ひぃ、んあ…っ、な、に?」

俺の切羽詰った声に驚きながら、再び目があった。真剣に睨みつけながら、こんな言葉絶対に口にしたいと決めていたことを、はっきりと言った。

「俺は……シズ、ちゃんが好きだ、愛してる」
「えっ…な、なんで…っ…?」

その言葉に驚いて目を見開きながら、強制的にサイケの動きが止まった。そうして呻き声を漏らしながら、糸が切れた人形そのままに床に倒れこんだ。
周りに居た男達が何事かと慌てていた。無理もない、いきなりこんなことがあれば混乱してしまう。そいつらを誘導するように、俺は言った。

「あ、はははっ…そいつ壊れたみたいだ。しょうがないから、みんな俺が相手してやるよ」

盛大に笑い声をあげながら、心のどこかで最初にシズちゃんと繋がったサイケを憎んでいた感情が、すうっと消えていった。
これで余計なことを考えなくて済む、と清々した気分で口の端を歪め精液をこぼしながら、次の男のペニスを口内に含んだ。

text top