it's slave of sadness 9 | ナノ

床に手をついて動けない体を強張らせながら、唇を噛みしめた。二人きりのようで、周りは何人もの男達が取り囲んでいる状態でまるで見世物状態だ。
サイケだけならまだいいが、こいつらを躱すのは無理だ。しかも変な誤解をしていて俺の言うことを聞かないアンドロイドは、何の役にも立たない。

「大丈夫だから、もうすぐ薬も効いてくるしきっとここを弄られたらすぐに気持ちよくなるから」
「く……っ、めた…」

向こうが言い終わらないうちに後孔の周辺に冷たいローションのようなものがかけられて、その感触に背筋がぞっとした。
しかもすぐに生あたたかい指がふれてきて、丹念に塗り広げていこうとしている。
性行為に関するプログラムをインストールしたのは、俺自身だ。だから当然説明書も読んでいるし、これからどういうことになるかはわかっていた。
人間を悦ばす為に経験も実践も積んでしまったサイケに、なにも知らない俺が抗えるはずがなかったのだ。

「臨也くんの、ここすごく綺麗だよ。かわいいピンク色してるし、ちょっと震えてて…なんだか俺までイケナイ気分になっちゃいそうだな」
「……っ、う……!」

なめらかな指使いでぴちゃぴちゃと粘液の音を立てながら、入り口周辺をほぐすように広げてくる。たったそれだけだというのに、媚薬を打たれた体はあっという間に反応し始めた。
気持ちいい場所を百戦錬磨の相手に集中的に弄られれば、しかもこんなのがはじめてだとしたら、これからどうなるのだろうとぞっとした。
一瞬だけ、さっきのサイケと男達の映像が頭をよぎって、ため息を密かに吐き出した。

「たっぷりしてあげるから、ね?」
「な、ッ……あ、う……ッ!!」

少しだけ緊張をゆるませた瞬間におとずれた刺激に、はしたない声が唇からこぼれかけて慌てて止めた。
いきなり体の中にサイケの指が、しかもなぜか二本も同時に侵入してきたのだ。そのまま中の壁に擦りつけられるように、ゆっくりゆっくりと蠢いていって、目を見張った。

(いくら催淫効果があるとはいえ、薬だけですごい気持ちよくなるなんて、ちょっと擦られただけでこんなに……感じるなんて)

未知の感触に驚いている場合などなくて、自分の体の反応に正直びっくりしていた。痛みもない、緊張や怖さもなくなっているし、なによりどうしようもないぐらい疼き始めたのだ。
まだ数秒も経っていないうちに、下を完全に勃起させて与えられる刺激に腰が勝手に震えてしまっていた。
なんとかギリギリのところで声だけは抑えられているが、それも時間の問題のように思えた。

「や、めろ…こ、んなのいやだ……は、なせッ!!」
「あ、暴れちゃだめだって!臨也くんッ!」

変化していく自分の体に耐えきれなくて、恥も外聞も捨ててわめき散らしながら力の限り抵抗を試みた。もうそうするしか残されていなかったからだ。
けれどただ何の考えもなしに精一杯暴れたのが裏目に出た。慌てたサイケが、素早くもう一本注射を腕に打ってきたのだ。

「……ッ、ぅ」
「はぁっ、効きが悪かったのかな…ごめんね?でもほらこれでもう落ち着いたでしょ?感度もかなりあがったから、声いっぱい出していいんだよ」

今度こそ完全に全身がぐったりと重たくなって、拳さえ作れないぐらい力も入らず疼きも最高潮に達した。そうしてすぐに後ろをほぐすことを再開された時には、これまでにはない反応を示した。

「は……っ、あ、あー…っ、あ」

色気などなにもなくただおかしいぐらいに感情のない声が漏れた。急激に全身が寒くなったり、熱くなったりを繰り返して額から嫌な汗が噴き出し始めた。
人体に危険はないとわかってはいても、かなりの恐怖を感じていた。人の人格を壊すギリギリのところまできているだろうということだけは、鈍った頭でも理解ができた。

「指気持ちいいでしょ?この辺りを引っかかれると、すごいんだよ」
「ん、ひっ!……っ、う」

二本の指同時にとある場所を突かれて、全身が雷に打たれたかのようにビクッと反応した。中がひくついたのが、自分自身でもわかるぐらい収縮を繰り返した。
こんなのを耐えるなんて無理な話だと、諦めるしかなかった。もう半開きになった唇からは、艶っぽい声しか出ない。
そうして硬くなったペニスは、もう既に限界を訴えていていつ出してもおかしくない状態だった。

「やっぱり臨也くんも、素質あるみたいだよ。だって俺がはじめてした時より反応してるんだもん」
「ふ、ぅ……っ、は、はっぁ、はぁ……」

無邪気にそう言ってくるサイケに恨み言を言いたかったけれど、それすらもできないぐらい余裕がない。
とにかく今は勝手に果ててしまわないように、集中するしかなかった。そんなことをしても無駄かもしれないけれど、最後に残された意地のようなものが快楽に溺れそうになるのを阻んでいた。
しかしまるで自分のことのように的確に、サイケが指摘してきた。

「みんなの前でイくの恥ずかしい?きっと見られながらするのもすぐに慣れるから、これ出してもいいんだよ?」

反対側の手で俺の股間のあたりをまさぐって、勃ちあがって先走り汁を垂らしているそれをぎゅっと軽く握ってくる。たったそれだけなのに、どうしようもないぐらい気持ちがよかった。
そこをふれられるのが、心地よかった。

「ぅ、あ……あ、はぁ……」
「それともどうしようかなあ、やっぱりお尻だけでイけるようになるほうがいいよね。じゃあすぐに俺の入れてあげるよ」

サイケは勝手に納得したようにうなずいた後、手を離して後ろからも指を引き抜いた。俺は自分の力で足を支えることもできずに、完全に体を預けていた。
しかし休む暇もなくさっきまで指が出し入れされていた場所に、ぬるつくなにかが当たった。

「もう既に精液でドロドロになってるけど、ごめんね。でも臨也くんがすごくエッチだから、俺まで大きくなってきたなあ。中に入れるの楽しみだよ」
「……っ、サ…イケ…」

本当に心から楽しんでいる様子を呆然としながら眺めて、小声で名前を読んだけれど向こうには届かなかったようだった。
確かにサイケに酷いことをしたのは俺で、それを考えると全く同じ状況で仕返しされているだけだった。だから自業自得でもあるし、怒る気力もない。
やっと同じような目にあってはじめて、こういうことをされる側が怖いとか辛いとかそういうのがわかっただけだった。
ただいちゃつく津軽とサイケのことに嫉妬して、悪戯をした結果がこれだった。あんなことさえしなければ、こいう状況はなかったはずなのだ。
どうせアンドロイドだし、とか舐めていた自分を叱咤したいぐらいだった。

「い、くよ……ッ!」
「あ、あぁっ、は、はあああああんうぅっ……!?」

充分にほぐされたそこを割り入るようにあたたかい塊が侵入してきて、今度こそ切れて痛いと覚悟していた部分から、甘く痺れるような感触が伝わってきた。
予想以上の淫悦に翻弄されてしまって、下半身はどう考えても耐えられないと判断した。

「…ッ、出したい?いいよ、いっぱい精液吐き出してイって!」
「んは、あ、ああぁ、やぁあんうぅ……ッ、だめ、もぉ…っ、はああんううぅんやぁああ……!!」

無意識のうちに口から叫び声をあげながら、腰から下をガクガクと振動させて派手に射精をした。凄まじい解放感にいつの間にか涙を流しながら、笑っていた。
自慰だけでは得られない悦楽に本格的に目覚めた瞬間なのかもしれないと、思った。

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