「泣いてんじゃねえよ、クソッ」 「シズ、ちゃ…」 「あーその、門田も悪かった。カッとなって巻き込んじまって、嫌な思いもさせちまった、許してくれ」 「静雄…?」 辛そうな表情をしているのに、俺の頭に手を置いてポンポンと優しく撫でながらドタチンの方を向いて謝った。そのことに俺は驚きつつも、安堵する。だって俺は、二人を揉めさせたいわけではなかったから。 数少ない大事な相手を、どちらも失いたくは無かった。こんなくだらない勘違いで、気まずくなったり揉めて欲しくはなかったのだ。 そこでほっと溜息をついて安堵していたのだが、直後に静かで冷たい声が聞こえてきた。 「だからこれ以上は、俺達のことを放っておいて出て行ってくれねえか」 「あ、あぁそうだな…その方が俺も助かる。まだ完全に吹っ切れたわけじゃねえし、そりゃ目の毒だ」 「え…?」 そこにピリッとした空気が一瞬流れたことに気がついたが、ドタチンが立ちあがって開いていた窓から教室内に入って俺をじっと見つめたところで。ぞくりと背筋が震えた。 まるでシズちゃんが俺に欲情して襲いかかってきた時と同じような、熱の籠った瞳を向けていたから。まさかそれを受けるとは、思っていなかったから正直に驚きを隠せなくて。 けれどもすぐに何事もなく歩き出すと、そのまま開けっ放しにされていた扉から出て行った。数秒のことだったが、俺は目をパチパチと瞬かせるばかりで。 「じゃあ続きすっか」 何事もなくそう言われた時には、さすがにカチンときた。そんな場合ではないだろうと。 「もう、しないよ…っ、俺はまだ、怒ってるんだし、こんなことされて黙ってなんて…!」 「嘘つけよ。まだ欲しいって中震えてんじゃねえか。それに、ダメなんだろ?どんな酷いことされても、逆らえないって言いやがったよな」 「それ、は…っ、ぶり返さなくていいから!」 瞬間的に頬がかあっと熱くなり、とんでもないことを言ってしまった自分を恥じた。ただ必死で言っただけなのに、それを逆手に取られて責められるなんて最悪すぎる。 わなわなと唇を震わせて叫ぼうとして、でもそれを遮るように頬を優しく撫でられた。そのことにはっとした隙を狙って、また律動が開始されてしまう。 「ん、あっ…あ、ぁ、う…ちょ、っと、シズちゃ、あ、ぁ…!」 「あれは相当ヤバかったぜ。最初はすげえ腹立ったけど、あんなの聞いちまったら抑えられねえだろ。やっと邪魔者も居なくなって、これで本気でできるしな」 「やだぁっ、あ…じゃま、ものって…あぁ、んっ…そ、そんなこと、っ、あ、うぅん、く…」 「でも感謝してるぜ。手前の素直な気持ちが聞けたからな。でもこれ以上見せんのは、筋違いだ」 体勢を変えないままガツガツと背後から肉棒を叩きつけてきて、萎えていた性器がむくむくともちあがってくる。若いから回復が早い、というのとは違っていた。 純粋に俺自身も興奮しているのだ。ドタチンと俺に嫉妬して、いつも以上にどす黒い感情をむき出しにしてくるシズちゃんに。さっきから目元を潤ませながら、いつもと違う疼きが襲ってくる。 優しいシズちゃんも嫌いではないけれど、この強引さと力強さに好きだと気づいた時から魅かれているのだからしょうがない。 「いいか、手前は俺のもんだ…もう門田の弁当なんか食べんじゃねえ。あと俺にも弁当作ってくれ」 「な、なにそれ…っ、あ、それ、いまいうなんて…っ、ひどい、あ、ぁ、はぁ…うぅ、ん」 「明日作って来なかったら、またお仕置きしてやるからな…あぁ、そうだな浮気のお仕置きもまだしてねかったな」 「ひきょう、ものっ…あぁ、ばかっ、あんぅ…そこ、やだぁ、あん、こすれ、てるっ…!」 セックスをしている最中なのに弁当を作って来いと強制させられて、そのあまりにもおかしい発言に文句を言いたかったが喘ぎ声しか出ない。きっと嫌だと言えば焦らされることは目に見えてる。 こんなことしなくても、普通に言ってくれれば喜んで作ってきてあげるのに、バカだと罵った。でもすぐにそれも硬い塊が抉る感触に、思考がままならなくなる。 じわじわと快感が内側からせりあがってきていて、爆発寸前だった。 「しょうがねえから出してやるけど、今日は何回もしてやるから覚悟しておけよ」 「ふあっ、あ、そんなの…い、つもじゃないか…っ、あんんぅ、あ、やらぁ、もう…っ」 「いつもしてる癖にこんなに興奮してんのは誰だ?見られながらするのに感じてたのは誰だ?後でそこのバルコニーでするか?」 「はずかしい、からっ…やだ、あ、んぁあ、ん…やめっ、てよぉ…!」 やだやだと言いながら、いつ誰に見られるかわからない場所で犯されることに悦びを感じている自分を知った。当然それはシズちゃんにも伝わっていて、もどかしくてしょうがない。 でも最初がもう、いきなり知らない男達に見られながら犯されかかっていたので、そういうことを嫌がらない変態なんだと自分でも思う。 そうして意地悪されたり、無理矢理される度に否定しつつ流されてぐずぐずになってしまうのだ。当然それはシズちゃん限定なのだけれど。 「別に変態な手前でも、俺はいいぜ。エロくて淫乱なところも、好きだぜ」 「やだぁっ…もう、あん、っ…は、ずかしぃ、こと…あぁ、もう…へんたいっ…あ、んぁあ…!」 タイミングよくそう告げられて全身がかあっと熱くなる。そうして早まった律動のせいで、腰から下がガクガクと揺れて涙がとめどなく溢れる。 自分自身でも尻をくねらせながら、一気に気持ちよさを得ようと動いていると、向こうがそこを掴んで素早くピストンを繰り返す。そうしてもう感極まってダメだと思った時には、勝手に口走っていた。 「ひゃ、あ、あぁ…も、らめっ、あ、だひれ、しずちゃ、んの…なか、だひれ、いっぱい、っ、あ、んぁはああぅううんん……!!」 すぐにその望みは叶えられ、熱い白濁液が遠慮なく後ろにたっぷり注がれた。何度しても、いつもその瞬間だけは幸福感に包まれて胸が熱くなる。 自身も今日二度目の解放をしたが、もう窓に飛び散るほどの量はなかった。荒い息をつきながら、窓にしっかりともたれ掛かる。その時になってようやく、まだ窓も全開だったことを思い出す。 最中はすぐに我を忘れてしまうけれど、すぐに意識を取り戻すと恥ずかしすぎて自己嫌悪に陥る。そうして頬を赤くさせていると、背後から耳元に囁かれた。 「じゃあそこで、またしようぜ」 「……っ、う」 指差されたのは当然さっきまでドタチンが座っていた場所で、顔を顰めながらも無言で頷いている自分がいた。 「昨日はごめんね?ほんとシズちゃんが無神経すぎてびっくりしたよ」 「まああんなところで待ってろと言われて待ってたらお前らが現れて、あんなことし始めて相当びっくりしたけどな…って、今日はいいのか?その…」 「大丈夫だよ、朝から他校の生徒に追い回されてたし。きっと喧嘩をまた買ったんじゃないかな?」 「そうか、まあほどほどにしておけよ」 朝一番でドタチンに昨日の事を謝れば、何事もなく返されて少しだけ安堵した。嫌われる、とは思っていなかったけれど気まずいのだけは勘弁して欲しかったからだ。 そんな心配は全く無くて安心したけれど、これ以上話をしていたらまたシズちゃんからお仕置きと称してセックスされるだけなのは目に見えていたのですぐに離れた。 散々酷いことをされた報復にまた何人かをけしかけてやったけれど、あの人数では昼頃には全部終わっているだろうと読んでいた。だから今日は、少しだけ鞄の重みがいつもと違う。 「はあ、ほんと俺って健気だよねえ」 机の端に掛けながら一人そう呟く。本当は辛くてだるいのに、わざわざ朝早く起きて二人分の弁当を作るなんてとため息をついた。 でも弁当を渡した瞬間に見られるであろう照れた顔とか、おいしそうに全部たいらげてくれる姿を想像すると、やる気が沸いてきたのだ。つい多めに作ってしまうぐらいには。 俺と違ってシズちゃんの方が食べるだろうから、と弁当箱も一つ多めに用意していてちゃんとおかずとご飯とで分けている。それを二人で屋上の隅で食べるのを想像するだけで口元がニヤけた。 そんな俺の姿を密かに見ていた視線があって、また勝手にドタチンと話をしていたと怒られてお仕置きされて、弁当を食べる前に一悶着あるなんて思っていなかった。 ------------------------------------------------------------------------- 零子 様 静雄と臨也は付き合っていて門田は臨也が好き。 それを知った静雄が門田を呼び出し自分たちの情事を見せ付ける。 牽制として見せ付ける感じで、見られてることでいつも以上に感じる臨也。 リクエスト頂きありがとうございました! text top |