直後にデジタルカメラから何度か光が発せられて、ぐったりと床に倒れこんでいる俺の姿を写真におさめていたが咎める声は出なかった。 もう一人の男が俺の肉棒を掴んで、ローションをそこに塗っていたからだ。べっとりと塗りたくられた後に、そのペニスの根元に激痛が走ったので慌ててその方向を見た。 「ふぁっ…はぁ、あ…な、に……?」 「今のままだとあっさり射精するからな、そうならないようにしてやったんだよ。苦しいだろうが、そのうち癖になってくる」 「え……?」 そこを凝視すると、多分そういう淫具なのか銀色の指輪みたいなものがそこに嵌められていた。つまりそれは、射精ができないということで一瞬言われている意味がわからなかった。 だがそれはつまり、こんなにも全身は疼いているのにいつまで経っても解放できなくて苦痛を与えられるということで。それに気がついた時には、また手を振り回して暴れた。 「っ、あ、やめろ…はなせ、いやだ…うぁ、あっ…!」 「こりゃさっさと快楽を教えてやらないと、傷がつくだけだ。待ってろよ、すぐに涎垂らしながらよがらせてやるからよ」 慌てた男がカメラの変わりに別の道具を取り出してきて、さすがにそれには見覚えがあった。そういう卑猥な道具の定番で、数秒だけ動きが止まった。その隙をついてもう一人の男が体を抑えつけてきた。 その間にローションをその淫具に垂らすと、迷いなく俺の両足を左右に開いて想像していた場所に押し当ててきた。 「薬使ってるから、指で慣らさなくてもいいってのは楽だな。バイブも結構小さい方だし、しっかり咥えて快感を覚えろよ」 「くそっ、やめ…っ、あ、んぅ、あ、ああああッ!!」 あまりにもあっさりと男根と同じ形をした道具の先端が埋まって、目を見開きながら全身を震わせた。最初は先っぽだけしか入らなかったのに、すぐにぬるりと半分までおさまって驚いてしまう。 こんなにはありえないと叫びたいのに、言葉が口をついて出ることは無い。変わりに暴れていた腕は止まり、目を瞑ってビクビクを下半身を震わせた。 「コックリングつけてなかったら、もうイってたよな。よかったな、無様に射精しなくて」 「あっ、ぐぅ…う、ふぅ、くっ…!」 煽るような言葉をかけてきて、全部耳に届いているのに呻り声しか出ない。悔しくて悔しくて、すべての事を忘れてどうして俺がこんな目に遭っているのかと唇を噛んだ。 でもすぐにシズちゃんの寝顔が浮かんできて、その瞬間全身を甘い痺れのような何かが駆け上がっていった。 「ぁ…っ、あ……!!」 「前立腺にでも当たったか?ほらもう全部入ったぜ、初めてなのに奥まで玩具埋まってすごい食いついてるぜ」 意識せずにしたことなのに、それは俺に大きなダメージを与えてきた。ただシズちゃんの、好きな相手の姿を思い浮かべただけだというのに。 一瞬だけ我に返って、瞳から一筋涙をこぼしていることに気がついた。 この涙がどういう意味を持っているのか、薬で朦朧としていた頭ではわからなかった。でも、むやみに思い出してはいけないのだと悟った。忘れなければ、いけないと。 少しの間一緒に過ごして、膨れあがった恋心を、せめてこいつらの前では忘れないといけないと。そうしないと、多分最後まで、本当に息絶えるその時にも未練が残ってしまうと。 それだけは、避けたかった。だって俺の恋は、死んだ後に成就するのだから。 「じゃあスイッチ入れてやるから、エロい顔して喘いでくれよ」 「ま、って…っ、あ、うぁ、あ、んんうぅう…ッ!!」 スイッチというのが性具のことだと気づいた時には、緩やかな振動が与えられてしまい、そこからはもう何も考えずに性欲に身を任せて喘ぐしかなかった。 ビクンと一度大きく跳ねた時に、ぐちゅと卑猥な水音が聞こえたような気がした。 「あ、ひぁ、うぅ…っ、あ、はぁ、も、やめてっ…うぅ」 「そろそろ、言葉を覚えようか?そういう時は、気持ちいいからもっとしてくれってねだるところなんだよ」 「ひ、あっ…!?あ、やらぁ、あ、ああ…!」 拒絶の意志を示すとすぐに乳首を摘ままれて、甲高い声が室内に虚しく響き渡った。まだ数分しか経っていないのに、既に玩具は二本咥えこまされていて、それなのにまだ一度も達することがなかった。 出せないようにされているからしょうがないのだが、バイブの振動はかなりのもので、断続的に快楽を与えてくる。そうしてクスリのせいで倍にされた感覚が、全身を襲っていた。 二人の男達は今は執拗に俺の胸を責めていて、勃起した乳首を捻ったり舐めたりと散々に弄んでいる。でも股間のモノには一切ふれてこようとはしなかった。 それがもどかしくて、もぞもぞと体を捩らせながら困っていた。ちょっとさわられればそれだけで射精ができそうなのに、と歯痒く思ってさえいた。 「いいのか?ちゃんと俺達に従わなければ、ずっとこのままだ。延々と微妙な刺激だけを与えられて、いつまでもイけない。本当にそれでいいのか?」 「それ、は…っ」 ずっとこのまま、という言葉に恐怖を感じてしまった。それは快楽が続くことではなくて、俺が抗ってばかりいていつまでも戻れなかったら、どうなってしまうのかと。 ここで何日も過ごせば、いつかはその日が過ぎてしまいきっと生き延びることができる。でもそうしていつか解放された時には、シズちゃんはいなくなっているのだ。 二度と会えないのは、嫌だった。 だいたい覚悟を決めて来たのに、自分の身がどうなってしまうか怖くて仕方がないからといって拒絶するなんて俺はバカだ。こんなことでは、死ぬことさえできないと思った。 もっと、強くならないといけないと。最後まで本当のことを告げずに、逝ってしまう為にも。 「も、っと…して、っ…くだ、さい……」 「ああ?聞こえねえな?」 「おれ、を…きもちよく、してください…っ、うぁ、は」 視線を彷徨わせて、しっかりと男の顔を見ながらそう告げた。自分の本当の感情すべてを押し殺して、相手の望む言葉を吐いた。その瞬間ズキッと胸が軋んだけれど、すぐに忘れた。 こんなのシズちゃんに嘘をつくよりは、マシだと。 今の俺には、嘘がバレて最後の計画が成されないことのほうが辛くて悲しいことだ。シズちゃんを死なせるなんて、そんなことになれば、悔やんでも悔やみきれないから。 「やっと言いやがったな。それでいいんだよ。じゃあ望み通りにしてやるからな、このまま射精せずにイっちまえ!」 「ふ、あっ、あ、んぁああ…っあ、んぁ、は…!」 直後に二人の男が交互に淫猥な玩具を前後に出し入れし始めて、中がごりごりと抉られた。休む暇も与えられずにバイブの振動と刺激が与えられて、腰から下が勝手に震え始めた。 そんなつもりはないのに、これでは自ら腰を振っているようだった。目をしっかり瞑って耐えながら、あられもない声だけをあげる。 「これだけ?き回されてりゃ、前立腺を刺激されっぱなしだよな。ほらそろそろコックリングしてても、絶頂が見れるぜ」 「やらぁ、あ、ああぁ…ひ、うぅ、っ、あ、おも、ちゃに…される、なんて、やだぁ、あ、ううぅ…」 「わかってるぜ、この後俺らのちんぽも入れてやるからな。さっさと堕ちちまえよ」 玩具を弄っていた男が顔だけまた俺の胸に寄せて、胸の先端をざらついた舌でべろりと舐めてきた。思わぬ責めに、過剰に全身が反応してしまい肩が震えた。 そうして止まらない腰の動きはどんどん早くなっていて、じんじんと疼く何かが奥底から沸きあがってきた。それを解放すると終わりだ、とわかっていたがもう抗う気はなかった。 「ひゃ、ぁ、あ、っ…んあぁ、も、だめっ、あ、きもち、よくれっ…で、るっ、あ、んあぁはああうぅううう……!!」 すぐに頭の中が真っ白になって、直後に背中が仰け反ってビクビクと勝手に麻痺し始めた。でも予想していた射精は訪れず、それとは全く種類の違う悦楽が押し寄せていた。 太股がビクビクと震えて、その振動さえも心地が良くてうっとりと浸った。すぐに終わると思っていた絶頂は長く続いていて、幸福感がいつまでも残っていた。 「ふあっ、あ…なに、これ……?」 「なあ気持ちがいいだろ?女みてえにイけるのがドライオーガズムって言うんだよ。普通に出すより、断然イイだろ。癖になるぐらいな」 呆然としながらそう口にすると男が律儀に答えてくれて、クスリだけだと思っていたのに知らない性癖を引き出されて、酔っていた。なにもかも忘れて、ずっとこうしていたいとさえ思った。 でも男達は容赦がなかった。 「じゃあ気持ちいいことも覚えたなら、奉仕することを覚えようぜ」 「ほう、し…?」 意味がわからなくてそのまま言葉を返すと、眼前に男達の肉棒がつきつけられて息を飲んだ。ああそういうことか、と頭の中で冷めた自分が納得していた。 これから本格的に、されるのだと。 text top |