※18禁シーンは無いのですが脱いでます 「なんだ?生きた魚より化け物の俺の方がマシってことか?手前ならマグロぐらい悦んで受け入れると思ったのになあ」 「…っ、それって俺にマグロを選んで欲しかったってこと?お生憎様、俺はシズちゃんの方がいいんだよ。シズちゃんが……」 そこまで言ったところで顔を俯かせた。唇を噛みしめながら、誰がマグロなんかを選ぶかと心の中だけで毒づいた。それを望んでいたことぐらい、今の反応ではっきりしている。 そしてシズちゃんを選んだとしても、マグロを突っこまれることぐらいわかっていた。そういう嫌がらせなのだ。 だいたい好きでもない相手と突然セックスしようだなんて、シズちゃんが考えるわけがない。俺のはじめてをマグロで奪って、最低な記憶を刻みつけようとしているのだ。 でも俺は、そんなのはどっちでもよかった。 嫌がらせだろうと、こうして誕生日を祝われること自体が嬉しいのだから。 「シズちゃん、もう好きにしていいよ」 そう口にしてみたものの、あまりにも小さい声で向こうに届いたかはわからない。こんなことを言う癖に、俺は臆病なのだ。目を見て話すことすらできない。 いつもだったら取り繕えるのに何もできないのは、動揺しているからだ。こんな形でも、長年嫌われていた相手におめでとうと言われたことが。 「なんだ、諦めたのか?もっと暴れて、嫌がったりしねえのか?」 その時シズちゃんの腕が顎の下に伸びてきて、強引に顔を上に向けさせられた。まっすぐな視線が心を貫いてきて、ギシッと痛んだ。背けたいのに、背けられないのが辛い。 どうしようかと困っていると、先に向こうが反応を示してきた。 「本当に俺でいいのか」 「いいって言ってるじゃないか」 「一度じゃねえぞ、これから毎日襲いに来るかもしれねえ。それでもいいのか?」 「なにそれ?ああわかったそっちも怖気づいてるんだ。知ってるよ俺がシズちゃんを選ぼうが、突っこまれるのはマグロなんだろ?さすがに生きた魚を突っこむことに抵抗を感じたかな。どちらにしろ俺は初めてだから、そんなもので遊ばれた時点でトラウマになるぐらい傷つくだろうね。君の作戦通りに、誕生日に俺を人生で一番酷い目に遭わせるっていう仕返しは成功する。よかったね」 ここまできたらヤケクソだった。俺はいつだってシズちゃんの前では強くいたかったから、こんなにも自虐的なことを思っていても口にしたことはなかった。でも、もう今なら許される気がした。 好きすぎてどうしようもないぐらい溺れているのだから、少しぐらい弱音を吐いたっていいのではないかと。 それにこう言えば、躊躇うことなくマグロを突っこんでくると思ったから。俺はそれを、望んでいたから。 「ああ、うるせえな手前はッ!もう知らねえ、絶対に後で喚いても譲らねえ!」 「……っ」 その時突然体にマグロを投げつけられて、それが風呂の中の群れの中に消えた。目で追っていたので、次の瞬間唐突に肩を掴まれてマグロ風呂から体を強引に出された時は驚いた。 そして風呂場の床に寝かされた俺の体の上にシズちゃんが馬乗りになってきた。意味がまるでわからなくて、酷く狼狽した。 「え……?」 「いいかよく聞けよ、俺が手前の誕生日にする嫌がらせはこれだ」 「これ、って何の事?」 呆然としながら言葉を吐き出したところで、ぶちんと何かが切れる音がした。それがシズちゃんののベルトだとわかった途端に、顔が真っ青になった。さすがにここまでされて気づかない鈍感ではない。 目の前で豪快にズボンまでもがビリッと引き裂かれて、真ん中が綺麗に真っ二つになっていた。それぞれの足にズボンが絡みついているだけだったが、今度は下着にまで手をかけてきた。 「ま、待って!まさか……!」 「大嫌いな相手に玩具にされる。しかも今後ずっと嫌がろうがなんだろうが、俺のもんにする。だって好きにしていいって言ったよな臨也」 「え…っ、え、う、嘘だろ…?」 パンツまでもが粉々のただの布切れにされて、そうして告げられたのは信じられないものだった。すぐに耳までかあっと赤くなり、全身からぶわっと汗が噴き出して焦った。 うろたえてはいたが、嬉しいことには変わりはない。はっきりと言われて、聞き間違いようがなかった。 「初めてってのが本当かどうか知らねえが、ローションぐらい用意してやったから安心しろ。誕生日プレゼントが俺ってベタかもしれねえけど、嬉しいだろ?」 「そ、それはその…っ、う、うれ…」 ここで自分の気持ちをはっきり言うべきかどうか迷った。だから目線だけを逸らして考えようとしたのだが、直後に下着とズボンが下ろされてその股間のモノが露わになった。 まさか俺を襲う為に自分のズボンと下着を破って見せつけてくるなんて、少しかっこいいかもと思った俺は混乱していた。冷静に考えたら、力の加減ができないぐらい緊張していたのかもしれないが。 「じゃあすぐに入れてやるからよ」 言いながらポケットに入れていたらしいローションをそそり勃つそれにぼたぼたと塗り、着々と準備を進めていた。正直俺は男同士の性行為の知識は皆無で、ただ見ているだけだった。 でもこれだけははっきりと理解していた。 この大きさは、普通に無理だと。 「あ、あのさ…ちょ、ちょっと待って。いや、俺別に嫌じゃないんだけど…それ、はないと思うんだ。うんシズちゃんそれでかすぎる」 「なんだ?手前でも怖がることがあんのか?」 「怖いっていうか…その、い、痛いのは嫌だよ。痛くなければ、その…何回してもいい、し…」 自分でも恥ずかしいことを言っている自覚はあった。だから口ごもりながらそう告げた。喉の奥で詰まっていた言葉を必死に絞り出して、なるべく選んでから告げた。 さすがに顔は見れなかったが、多分今ので充分伝わったと思った。 「シズちゃんの、そのプレゼント…嫌じゃないから、ちゃんと受け取るよ」 「……おい、嘘言ってんじゃねえ」 「嘘じゃないよ?」 最終的には体をもぞもぞと動かして、恥ずかしさに悶えていた。剥きだしの下半身が少し震えていて、堂々と気持ちを告げている癖に不安がっている自分が滑稽に思えた。 でもシズちゃんにそんな意図がなくても、俺は嬉しかった。嬉しいと思える幸せで胸がドキドキと高鳴っていた。それだけで充分プレゼントになっていた。 玩具だろうがなんだろうが、シズちゃんのものだと言われるだけで心が弾んだ。 「自分の言ってることがわかってるのか?俺に今後も襲われていいって了承してんだぞ」 「だから、そのつもりなんだけど…」 何度もこんな恥ずかしいことを言わせるな、と内心思いながら体を身じろぎさせた。するとシズちゃんの腕が急に背中に伸びてきてそのまま上半身だけ起こされた。 目の前に顔が近寄ってきて、余計に羞恥心がこみあげてきたが、その時ぶちっと音がした。そうして腕の拘束が外されたのだと気がついて、目を瞬かせた。 「襲われていいってことは、手前俺のことが好きなのか?」 「な…ッ!?」 あまりにも直球的な言葉に、唇がわなわなと震えた。バカ野郎かっこよすぎる、その聞き方は反則だと心の中で唱えながらうろたえた。 シズちゃんに聞こえるのではないかと思えるぐらい心臓が高鳴って、呼吸が早くなっていく。そうだその通りだ、という一言がどうしても口に出せなかった。 「…っ、は」 「なんだもう一人で喘いでんのか」 「ち、違うっ…!」 冷めたような瞳で見られてしまって、いかに今の俺がおかしいかやっと気がついた。慌てて自由になった手で自分からしがみついた。ここまで言われて、傷つくのが怖いと考えるのは止めた。 「……好き、だよ!!」 でもやっぱり顔を見て言えるわけがなくて、頭ごとシズちゃんの体に埋めて消え入りそうになる声で告げた。それが少しだけ涙声で、どれだけ本気なのか示しているようだった。 ああ、もう今死んでもいい、と思いながら瞳からこぼれそうになる涙を拭おうとして。肩を掴まれて顔をあげさせられた。 「そうか俺も……好きだ」 「…っ、あ…うそっ……うぅ、ん!?」 互いの距離が近すぎて顔のパーツがぶれて見えたが、言われたことを頭の中で反芻して気がついた時には唇を塞がれていた。拒むことなく受け入れて目を瞑ると、涙がぽたぽたと滴った。 そうしてふれるだけのキスが離れていって、ぼんやりとしている俺に向かってシズちゃんは言った。 「生臭え手前でも好きになってやれんのは、俺だけだろ」 ※これで終わりです!誕生日おめでとうございました!! text top |