四月馬鹿3 | ナノ

「おい…なんだこりゃあ……?」
「ふ……ぇ?」

聞き覚えのある声がすぐ傍から聞こえてきたので、反射的にそちらを向いた。俺はすっかり触手に攻められることに没頭していた為に気がつかなかったみたいだが、そこにはシズちゃんがなぜか立っていた。
数秒ほど目を見開いたまま固まっていたが、一気に頬がかあっと高揚していくのがわかった。慌てて手で隠そうとするが、全身拘束されているので身動きすら取れない。
わかっていても、なんとかできないかと力をこめてみる。とにかくもうさっきまでの情事なんか忘れて、すっかり我に返っていた。

「臨也か…?その格好、っつーかその茎みてえなの動いてんのか?」
「ちょ、っと…見るな、ばか!あっち行けよ!なんでここに入ってきた…っていうか新羅は……!」

なんでこんなところにシズちゃんが居るのか、とか自分が今どんな状況になっているのかをすっかり頭から忘れて、いつもの調子で話し掛けていた。
とにかく恥ずかしいから見るなと殺意を篭めて睨みつけながらペラペラとしゃべっていたら、膣の中に群がっていた触手が嫉妬するかのごとく激しくうねった。

「あ、ひゃっ…!ふ、うぅぅんっ……!?」

おもわず快楽に溺れきった甘いあえぎを叫びかけて、慌てて口をつぐんだ。
さっきまでは俺自身しかここに居ないこともあって何も気遣うことはなく陶酔していたが、今はあのシズちゃんが目の前に居るのだ。
本当は姿すら見られたくないというのに、こんな淫らなところなんか晒したくなかった。
しかし自我を持たない生物は一切の遠慮も無く、体の中を動き回っては心地よさを与えてきていた。

「く、うぅ…っ、あ……ぅう……ッ!」

触手の責めや媚薬のおかげで全身どこもかしこも鋭敏になっている上に、お腹が膨れあがるぐらいに中に詰めこまれているのに気持ちがいい。
けれどもそれを全部堪えなければいけないとは、相当の覚悟が必要だった。一度は完全に堕ちてしまった体がどこまで耐えられるかなんて、わかりきっていた。

「手前、それ…大丈夫なのか?」
「う、ぅう…ッ、見るなって、言ってるだろ…っ、はぁ…心配される、ほど、じゃない…ふ、ぁ」

確かにいつもは犬猿の仲である俺とシズちゃんでも、体を女に変えられてこんな謎生物に犯されまくっているのを見たら普通に驚くに決まっている。
けれど、何も言われたくなかった。
心配されるなんてもってのほかである。それなのに。

「助けて、やろうか?」
「ふ、ざけんなッ!…っ、おれのことどれだけ、バカにすればいいんだよ!こ、んな屈辱…ゆる、さない、っあ」

サングラスの中の瞳が戸惑いながら、声を掛けてきた。一番言われたくない言葉をあっさりと告げてきたので、やっぱり大嫌いだと思い唇を噛み締めた。
これまでいつでも、どんな時でもシズちゃんが俺に対して優しく労わるようなことを言ってきたことなどない。お互いに本気で殺し合うというのが暗黙の了解になっていた。
どれだけボロボロになろうとも、容赦なくされて、こっちも殺す気で向かっていた。それなのにあまりにみっともない姿に同情してくるなどと、憎くて憎くてしょうがなかった。

「うぅ、っ…んくぅ……っ、あ、クソッ、この…死ね、ぜったい…ころ、す…うぅぅんあっ」

普段だったら俺に対して殺す殺すと呪いのように呟くのはシズちゃんの方なのに、完全に逆転していた。
しかしそう呪いの言葉を口にしただけでいつものように殺気を飛ばしてきて、少しだけほっとした。これ以上寒気がするようなことを言われたくないと思った。

「は、やく出てい…け…ん、あぁっ、あ、だめ、だめッ!今はやらっ、むね、やらってえぇ、んうぅああ…」

とにかく目の前から消えて欲しくて厳しい口調で言いかけたところで、いきなり乳房を激しく揉み潰された。もうその時点で嫌な予感しかなくて必死に拒絶した。
けれど触手はやめろ、という言葉には全く反応しない。一層動きは悪化していって、乳首の先端など何重にも塊が絡まってボンレスハムのように肉が搾られた。

「やら、っあ…らめっ、もおおっぱい、やぁだ…ひ、あっ、んうぅ……で、るうぅっ、はひ、ああぁんうぅっ…!」

そして遂に乳首の先っぽからもう何度も飛び散らせてるミルクが盛大に噴出して、シズちゃんが立っている足元の床へ零れた。
さっきまでの恥ずかしいとか、殺したい程憎いとかそれらの一切の感情がそこから流れ出していっているようだった。

「あ、ははっ…やら、これぇ…きもちひぃってえ…と、まんなっい…んあはぁあッ…」

すぐ傍に立っていた人物の面影が一切消えて、再び媚薬に浮かされはじめた。もう一旦こうなってしまえばどうにも止められなかった。
俺がこれ以上なにも考えられないように、何本もの束が肉壷を容赦なく蠢きはじめて追い立ててきた。
まだ胸からの噴出は止まっていなくて、ガクガクと腰が仰け反る度に、ぼたぼたっとミルクが飛び散る。

「だ、からぁ…っ、なか…そ、んなにしちゃ、らめだってぇ…あぁん、ひっ…うごか、ないでえって」

触手の塊の束が一気に爆発したようにそれぞれがピストン運動を開始し、ぐちゃぐちゃと水音を立てていた。
通常では考えられない形に膨張していたお腹がゆらゆらと揺れて、同時に腰もくねらせた。
このまま快楽漬けになることを悦んでいたのに、突然状況が変わった。

「ふ…ぇ…?」

いきなり拘束されていた触手全体が動き、空中に高く抱えあげられていた体が下に移動していった。そうして俺の顔が、ちょうどシズちゃんの顔の真上にあたるぐらいの所で止まった。
すぐには思考が追いつかなくて、いつも対峙する位置より高い目線から見下ろすことができることに、少しだけ心が躍った。

「ん、ひっ…うぅ、あ…!はぁあ、う、ひっ…シズ、ちゃ…ん…あ、うぅっく……」

もう拒絶の言葉も、罵る言葉さえも口にする事ができなくて、たった数分の間に淫らにされてしまった肉体を晒してしまうしかなかった。
絶対に見られたくない相手に、雌として浅ましい姿を見られてしまっている。

(うぅ…シズちゃんに…見られてる…こんな恥ずかしい本当の姿を…)

そう考えるだけでぞくぞくと背筋が震えるように麻痺して、寒気がかけあがっていった。逃げずに真っ直ぐに見つめてくる視線が、気になってしょうがないようだった。
どんなことを思っているのだろう、と意識しただけで官能が体中を敏感にさせた。

(こんな…触手におっぱいいじられて、ミルク出し続けてきもちいい姿も…アソコを濡れ濡れにしながら…悦んでいる姿も…)

たったそれだけのことなのに、胸が抉られるくらい強い衝撃が襲ってきた。
他人に見られながら犯されてるというのにこんなに感じるなんて、ただのマゾだ。しかも憎い相手だろうが構わない、なんて相当おかしくなっている。

「あ、あぁ…や、だ…ちがう…これ…あ、ひうぅっ…ふ、ああぁっ、もぅ…犯さないれよお…ひ、っぐうぅん」

口では嫌々と唱え続けていたのに、瞼を閉じることはなかった。ぼんやりと焦点の合わない瞳で見続けて、どうしてか口元が笑っていた。
もう笑うしかなかったのかもしれない。
やがてそれぞれの塊が一斉に同じように律動をし始めて、本格的に俺をイかせてさっき口の中に出されたような粘液を吐き出されるのだと感じた。

「そ、んなの…や、ぁあ…ッ、シズちゃ、ん見てるから…やだ、ねぇっ、うぅ…出さないで…ッ!イかさないでええぇ…!!」

もうなりふり構わず叫び散らした。無駄な行為をするのは俺の主義に反するが、それでも頭を左右に振って嫌だと主張しながら必死に叫び続けた。
けれどその願いは虚しく、あっさりと、大量の淫悦の渦に流されていった。

「あ…やぁあああっ…あ、あぁ、出され、てる…あつ、あつい…あ、ははっ…なか、でだされて……ッ!」

細い茎の先端から白い粘液が放出されたようだが、明らかに量が規定値を超えている。しかもその束だけでお腹が膨らんでいるというのに、どこに受け入れるべき場所があるというのか。
ものすごい勢いでビュクビュクと吐き出されながら、その衝撃にこっちも限界が訪れた。

「ひ、あぁ…だ、されながら…あぁ、ん…イっくううぅうん…あ、あ、やらぁ、ひもちひぃいいッ…!!」

秘所から大量の液体がプシュと音を立てながら飛び散ったが、それが中に入りきらない液体のせいなのか、それとも俺の愛液のせいなのかはわからなかった。
長々とぶちまけられている間にも、何度も何度も絶頂を迎えた。腰から下がひくひくと震えて、びちゃびちゃと床に零れていく感覚がまるで自分がおしっこでも漏らしたかのようで恥ずかしかった。
うっとりと陶酔しながら微笑む表情とは対照的に、心の中は冷たくなっていった。
好きかどうかまでははっきりしていなかったが、淡いなにかを抱いていた相手の目の前で、手酷く犯されてあえぐなんて直視し難い事実だからだ。

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