「…っ、サイケぇ…な、んか…お、かしくない?」 「ん?どうしたの急に?もっとドラッグ強くした方がいいのかな? 「え……?ふ、んうぅ、あ…はぁ、あ……」 ぼんやりとした状態のまま呟いた言葉を塞ぐようにサイケの顔が近づいてきて、そのまま唇を奪われた。そのまま舌が口内に入りこんできて、どうしてか甘い味がした。 包み込むように頬に両手を添えられたまま舌で蹂躙され、口いっぱいに砂糖のように甘い不思議な味の唾液が広がっていく。そうしてそれを躊躇いも無く、飲み干すとまた体が熱くなる。 そうして優しい口づけが終わる頃には、自然と顔が綻んで笑っていた。 「うん、やっぱり臨也くんには笑顔が似合うね」 「サ、イケ……っ、ふ、ああっ、あっ、んあ、いきなりっ……!?」 「エッチな声で喘ぎまくってるほうが、かわいいけどね。ほら気持ちいいでしょ?おちんぽ欲しかったんだよね?」 褒められたと思った瞬間に、突然律動が始まって体が前後に揺すられ始めた。狭い中でペニスと細いコードが擦れ合って、これまで感じたことのない快感を生みだす。 疼いていた体はそれらを全部受け止めながら、更なる心地よさを与えてきてあっという間にイきそうになってしまう。けれども、欲望を解放することはできなかった。 「んあっ…ひ、もちいぃ、けどぉ…っ、あ、これとってよぉ…っ、はあ、だしたい、っ!」 「だからダメだって言ってるでしょ?我慢しなくていいんだよ、イきたければイけばいい。でも射精はできないけどね。空イき絶頂アクメ気持ちいいよ?」 「や、らぁ…っ、むりっ、あ、くるしぃからぁ…お、ねがいっ、あ、んあっ、は…ふぅ、う」 「しょうがないなあ、ほらこうすればイきたくなるよねえ?」 身を捩り涙をこぼしながら懸命に根元のコードを外してと懇願した。けれども目の前の愛する人物は、意地悪そうに笑うだけで全く取りあってはくれない。 お互いの肌がぶつかり合う音だけが響いていたが、唇を震わして何度もお願いする。もう痛いぐらいにそこは張りつめているのに、すぐに別の感情に変わって繰り返されるだけの永遠の拷問状態だった。 それでも諦めずに、ほとんど意識のないまま呟いていると、やっと向こうが折れた。そう思ったのに、加えられた刺激は別のものだった。 「ひゃ、あ、あああっ…やらっ、あ、あついっ…むりぃ、あん、うぁ、はふっ……!」 「うわっ、すごい締めつけだね。ほらこのままイきなよ、ねえ?」 ただでさえサイケのペニスが暴れていたというのに、急にコードの方まで蠢き始めてもう限界だった。複数の異物感を感じながら、勝手に中は離さないように食いついていく。 すると新たな刺激をまた与えられて、一気に絶頂へと押しあげられる。戒めイけないというのに、どんどんそららは溜まっていき、とうとう爆発しそうだった。 「んはあぁっ、あ、らめぇ、らめ…っ、あ、なんか、れちゃうぅ…ちがうっ、あ、いつもと、これ…!」 「ほらあと少しだよ頑張って。俺も出してあげるから、一緒にイこう?臨也」 「もうっ…あ、あぁあ、は…ひ、くっ、イっひゃう、ぅ…サイケぇ、あ、でる、っ、あ、はぁああああんうぅぅ……!!」 頭の中も体も、なにもかも淫悦に満たされながら果てた。そのはずなのに、コードで繋がれている為に先端から吐き出すものはない。なのに、イってしまっている。 それがどういうことを意味するのか、はじめはわからなかった。 肩で息をしながら、後孔の奥にあたたかい白濁液の感触が注がれるのを受け入れることしかできなかった。その間中ずっと、腰がガクガクと麻痺し続けていた。 「ふふっ、これだよ。この顔が見たかったんだ。どう気持ちよかったでしょ?これでもう君は、射精せずに絶頂することを覚えた。一生の証を、残したんだよ俺が」 「は、あぁっ…あ、んぁ、まだ…あ、あつい…」 信じられない気持ちで下半身をぼんやり眺めていると、二人の結合部から精液が溢れていたが、それ以外に汚れているところはなかった。 イったはずなのに、何も出ていない。萎えてもいない。それなのに、脱力感と強烈な余韻だけが渦巻いていて、気だるさを残していた。 「ねえ、俺はもっともっと淫乱な姿が見たいんだ。これからずっと、見せてくれるよね?裏切ったりしないよね?」 「みてほしい…もっと、エッチなことしたい…うらぎらない、ひとりに、しないで…サイケ…」 「わかった、わかったよ。ありがとう、やっとサイケだけのものになってくれて、嬉しい。この時をずっと待ってたんだ」 耳元で囁かれたので、呼吸を繰り返しながらぼんやりと顔をあげた。すると赤く光り続ける瞳と目が合って、その時言葉には現せない感情が舞いこんできた。 寂しい、一人にしないでという切実な想いだ。 それは過去に、サイケに出会った頃に俺自身が抱いていたものだった。 誰かに恋焦がれていて、でも実ることがなくて、不安で苦しかった頃に俺の元にきたアンドロイド。性格や感情そのままに、成長することなくいつまでも寂しい想いをしていたもう一人の自分。 その後サイケのアドバイスのおかげで俺は一人ではなくなったけれど、彼はずっと一人だった。俺だけが幸せになって、彼だけが取り残されていた。 (一緒にいるけれど、不安なんだ) (どうして?もう一人じゃないのに、なんで?俺だったら絶対にそんなことさせないのに。寂しい想いなんて、させないよ?) きっとその一言が彼に変化を与えたのではないのかと気がついたけれど、遅かった。 「サイケ…す、き」 唇から紡がれた言葉には、何の意志もこもってはいなかった。 「臨也くん?起きてる…?今日のクスリだよ?」 「ん……っ、あ、うぅ…サ、イケぇ?」 俺が声を掛けるとそれまでぴくりとも反応を示さなかった相手から、返事があった。その声には何の感情もこもっていないように聞こえたが、綺麗な声だと思った。 怒ったり、泣いたり、悲しんだり、喜んだりすることはなく一定の音で響き続ける音色はとても心地よかった。この音色で歌わせたら、きっと素敵な声を響かせてくれるだろう。 今はまだ無理だけれど、きっとそのうち一緒に歌うことができるようになる、と信じていた。 「ずっとこんなの繋いでてごめんね。でもあと少しなんだ。あと少しで、一緒になれるんだ。同じ存在になれる。だってもう、半分は俺と同じなんだから」 最愛の人の体には、何本ものコードが絡みつき、先端が肌に突き刺さっていた。そこから常に流し込まれている情報は、既に俺の中にあるものだった。 人間の脳を支配して操り、最終的にはアンドロイドと同じようにコントロールできるようにするのが、この計画の目的だった。誰がこれを仕組んだかはとうの昔に忘れてしまった。 送りこまれてきたプログラムを取りこんで、その相手に倍返しにして返し存在を消したのは俺だから。誰かの計画は、いつしか俺が大事な人を手に入れる為のものにすり替わってしまったのだ。 焦点の合わない瞳でひたすらにこっちを眺めながら辛そうにしている相手に微笑み、頬に手を伸ばして撫でてあげながら尋ねた。 「ねえ、気持ちいいことするのと、クスリとどっちがいい?」 「ふ、うぅ…ん、あ、おちんぽ…ほしい…」 「もう本当にエッチが大好きになっちゃったね。ちょっとやりすぎちゃったかな、ごめんね」 口癖のように卑猥な言葉を繰り返す相手の姿に満足しながら、必死に抵抗していた時のことを思い出す。反応が乏しいのはそれはそれで、つまらないものがある。 でもこの計画が成功したら、全部が取り戻せるのだ。頭の中の記憶をスイッチ一つでコントロールして、好きに操ることができる。いつでも、思い通りにすることができるのだ。 「はやくっ…あぁ、あつい…きもちよく、してよぉ」 「そういえば、シズちゃんのことまだ覚えてる?何か気がついたみたいでさ、君の事探してるみたいなんだ。もう今更遅いのにね。でも、どうかな?気がついてくれるかな?」 「シズ、ちゃん……?」 「臨也くんと、俺。アンドロイドと人間。その違いに化け物は気がつくことができるのかな?興味深いよね、あと楽しそうだし」 クスクスと笑いながら顔を近づけると、相手は瞳を閉じて唇がふれあった。離れる寸前に、熱い吐息がかかって発情していることを示してきた。 「しら、ないっ…サイケしか、わかんない…サイケがほしい」 瞳の色が赤から電子的なピンク色へと変化して、完全な人間から逸脱しようとしているのを現していた。 text top |